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アイアムバグゲープレイヤー!!  作者: 海蛇
五章.夏の再来・秋の奇祭

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#2.僕は水着が欲しい


 夏に入ると思いだす。

僕にとって割と屈辱的だった、あの出来事を。

「ミース、お願いがあるんだけど」

「お願い? 何よ、急に改まって」

畑仕事をしている時の事だった。

いつものようにスケッチをしていたミースに、思い切って頼みごとをしてみることにしたのだ。

「水着を作ってくれないかな、僕の」

「エリク君の? まあ、作れなくはないけど……でも、私は自分の作るので忙しいのよねえ」

ちょっと待ってね、と、ページをめくってさらさらと描いてゆく。

三角形の布地と、丸みを帯びた二つの布地。

女性向けの水着だ。

「女の子が着るのってこういうのじゃない? 後は、上下が繋がってるの」

「うん」

「男の子って、どういうの着るの? 例えば、女の子の水着の下部分だけ、とかだと違うのよね?」

下部分に丸をくれているミースに、「違うね」と、首を振って答える。

「基本的には短パンみたいなものでいいんだと思うんだ」

「じゃあ短パンそのままでいいんじゃないの?」

「それでもいいんだけど……泳いだりするのに向いてなくて」

僕が懸念しているのは、前回あった水浴びを乗り切る方法。

今のままだとろくな水着もないまま迎えてしまう。

かといって前回のようにロゼッタにお願いすると、クマさん水着をつけることになる。

あるいは……あるいは最悪はまた……いや、考えないようにしよう。

「ていうか、エリク君って泳げたの?」

そうだった、僕は記憶を失っている体で生きてたんだった。

危うく「泳げる」という事を思い出す前に知ってる変な奴になってしまうところだった。

ミースの突っ込みが素直にありがたい。

「泳げるかは解らないけど、泳がないといけない状況ってありそうだから、ほら、洞窟とかでも水場があったし」

「ふーん……まあ、そこまで言うなら考えてあげるわ。でも、あんまり期待しないでよ? ロゼッタの方がよっぽどこういうのは得意なんだから」

任せるならそっちの方がいいのよ? と、ちょっといじわるなことを言いながら。

でも、まんざらでもなさそうに受けてくれるミースだった。

勿論、受けるなりにお礼は必要で、「代わりに水着を着た時にスケッチさせてよね」と条件を出されたので、これは快諾したけれど。

でも、水着の男の子が出る小説って、どんなのなんだろうとちょっと気になってしまう。

後でプラウドさんに聞いてみようか。



「エリクさん、ミース、湖に水浴びに行きましょう♪」

ほどなくしてアーシーさんが現れ、水浴びのお誘いが始まった。

案の定というか、やはり来たのだ、今回も。

「別にいいけど、食事時に来るのはどうかと思うわよ? アーシーさん」

昼食を食べている最中だったので、ミースはご機嫌斜めだ。

「あらあらごめんなさいね、でも、この時間帯が一番二人が家にいる可能性が高いんですもの。ねえ、プラウドさん」

「そうだね。確かに二人を狙ってなら、この時間帯が一番かな?」

「まあ、狙うだなんて人聞きの悪い」

いやですわ、と、眼を瞑っていやいやするように頬に手を当てる。

大人びたアーシーさんにはちょっと似合わない、少女のような仕草で、ちょっと面白く思えてしまった。

「誘うのは僕達だけなんですか? プラウドさんは……」

「ああいや、私は毎年遠慮しているんだ。運動は苦手でね……」

「パパは身体が弱いから、村から出るのは向いてないのよ」

親子揃って否定されてしまう。

そういえば前回も着てなかったなあと今更のように思い出した。

「でも、プラウドさんは私が村にいない間、代役をしてもらっているのです」

「そうなんですか?」

「ええ。身体が弱いとは言っても、それでも数少ない大人の男性ですから」

後をお願いできる方なのです、と、ニコニコ顔でフォローする。

でも、プラウドさんがアーシーさんの代役をしていたのは意外だった。

なんというか、あんまり家から出てるところも見ないし。

前回も含めてだと、結婚式の時くらいだろうか?

あれがすごいレアケースなんだなあと、一緒に暮らすようになって理解した。

「まあ、水浴びの時はほとんどの人が村から出てしまうからね。留守番しているだけだよ。仕事もあるしね」

プラウドさん的にはいつもと変わらないらしい。

「それでですねエリクさん、この水浴びというのは、北の湖で行うのですが、エリクさんには是非参加していただきたいですわ」

「ええ、もちろんです」

――どうせ強制参加だし。

村長権限で参加が決まっているのは解っていたので、敢えて拒否する意味はない。

「どうせアーシーさんの事だし、強制参加させる気だったんでしょ?」

「うふふ、ミースったら、エリクさんが絡むと急に口が悪くなるわね?」

「別に……エリク君が絡むからではないわ。変なタイミングで来たからよ」

ご飯中に来るのはノーマナーよ、と、露骨に非難する。

まあ、確かに楽しい雑談中だったので、ミースがイラつくのもわかる気がするけれど。

アーシーさんも「ごめんなさいね」と謝りながら「でも、貴方も参加するのよね?」と笑いかける。

「まあ、出るけど……」

「良かったわ。それじゃあ二人とも、ロゼッタを説得してくださいませんか? 私から誘うと、あの娘いつも嫌がるから……」

ここからはいつもの流れなのだろう。

二人で顔を見合わせ、ミースは不承不承な感じだけれど、「解りました」と、話がまとまった。

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