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アイアムバグゲープレイヤー!!  作者: 海蛇
四章.手に入れた自由と失った人生

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#3.農民人生再び?

 前回もそうだったけれど、ご飯を食べたからとすぐに立ち上がれるようになる訳でもなく、歩けるわけでもなく。

結局は二日目も、ベッドの上ですることもなく横になっているだけで終わりそうだった。

「そういえばエリク君。農夫にでもなるつもりだったのかしらね? 農業の指南書なんて持ってたし」

「そうなのかもね」

昼下がり。

ミースにモデルにされながらも、今後の事について考える。

「私、畑で倒れてたエリク君を見て、とても本なんて読みそうな人に見えなかったから……ちょっと意外だったかも」

「どんな人に見えたの?」

「うーん、そうねえ」

描く手を止めずにさらさらとペンを動かし。

けれど視線はやがて上向きになり、しばし沈黙。

視線を戻した時には「そうそう」と、何かに納得したように勝気な笑みを浮かべていた。

「なんだか、戦場で活躍してそうな感じだったわ。擦り切れた服もぼろぼろの靴も、歴戦って感じで」

「そっか……戦場の事はよく思い出せないけど、うん。そうなのかもね」

確かに、僕は何者で、何をしていたのかまでは思い出せたけれど。

それでもまだ、完全に思い出せないことも多い。

歴戦の僕は、果たして戦場でどんな人生を送っていたのか。

……死んだ人たちの為にも、完全に思い出したいところだった。

「でも、農業をやるというのは正しいわよね、多分。戦争が終わったのかまだ続いてるのか解らないけれど、食料は何より大事だし、一番早く不足するでしょうから」

腕を組みながらも、感心したようにうんうん頷いてくれるミースを見て安堵する。

ちゃんと納得されたのがうれしいというか、受け入れてもらえるのってこんなにほっとするんだなと、今更のように気付いた。

「そうだね。確かにそうだ」

在庫が不足すれば高騰する。

だから前の僕は、不足がないように沢山作って大量に売った。

おかげで様々な作物の在庫が潤沢になり、価格で苦しんでいた人たちは大分解放されていた……はずだ。

もし、この辺りも最初のままだったなら、今回も同じように変えていけたらと思う。

だって、世話になった、これからも世話になる村なのだから。

「まあ、あれだけお金を持ってれば畑を買ったり借りたりするくらいできるだろうけど……でもエリク君、農業の経験はあるの?」

「うーん、どうなんだろうね。やれそうな気はするんだけど……」

やれます、なんて言ったら僕の過去がどうなってるのか統合性が取れなくなりそうだし、ここはあやふやにしておくのが無難と判断。

幸いミースも「そうなの」と、それほど気にした様子もなくまた、スケッチへと戻ってしまう。

「ま、解らなくても聞いてくれればある程度は教えられるわ。まずは無難に……簡単なものから作ればいいんじゃない? 個人的にはポテトとかキューカンがお勧めだけど」

簡単に作れるのよねえ、と、今度は作業を止めずにそのまま語り掛けてくる。

「とりあえずは……グリーンストーンも確保しなきゃだしね」

「何だか随分焦ってるように見えるわねえ。気が逸るのも無理はないけれど、無茶はしないでよ?」

「うん。ありがとうミース」

そういえば、と、胸元にぶら下がっている小さなグリーンストーンを手に取る。

「小さいけれど、やっぱりそれ、グリーンストーンだったのね」

「畑にはこれが必要らしいからね……手元にあるのはこれだけだけれど」

これに関しては前の時の記憶がそのまま生きているので、最初から使う前提で考える。

「でも、作物を育てるために使うなら、収穫後も畑を回復させるために必要だから――」

「なんだ、解ってるんじゃない」

最初にミースに指摘されたことだ。よく覚えていた。

ミース的にも、言う前に解っているのがはっきりと解って安心してくれてるんだと思う。

もう意識はスケッチブックに向いているようだけれど、僕にはそれだけでも十分だった。

「それなら、まずは回復に専念しなさいな。畑づくりは体力勝負なんだから、病み上がりの人がいきなりできるものではないわ」

「そうだね……うん。そうするよ」

今日一日は動けないのは解っていた。

だから、やれることをやるしかない。

「今日はとりあえず、本でも読んでることにするよ」

「あらそう、良い心掛けね。畑の事は……私から、友達とか村の人にも聞いておいてあげるわ。だから今日のところは大人しくしていなさいね」

お姉さんのように優しく諭すように言いながら、スケッチブックのページをめくる。

どうやら一枚分は描けたらしい。

「まだ描くの?」

「貴重なモデルだからね」

そういえば前の時も言っていた気がする。

同い年くらいの男の子がいないから、僕をモデルにしていたのだと。

なら、心行くまで描かせてあげるべきだろう。

少しでもミースには機嫌よくしていてほしいし。

「エリク君は別に好きにしてていいわよ? 本を読みたいなら読めばいいし」

「うん、そうするよ」

ちょっと恥ずかしいかな、と思いながらも、本を読むと決めたのだから読むのだ。


『ターニット農家のススメ2 ミリアルド=スレイン=トーパー』


 ターニット――それは万物に勝る奇跡の至宝です。

世界中を探してもこれほど温かで、美しく、幻想的な作物は存在しません。私は大好きです。

何故ターニ


「相変わらず長いな前置き」

相変わらず無意味な文字の羅列に見えて目が辛い。

何故この筆者の前置きは無駄な装飾に満ちているのか。

まあ元々本を読むのが好きではない僕にとっては、それそのものが結構きついのだ。

端的に読ませてほしいものである。


「なになに……『この本を開いた貴方は、きっと前巻を読んでいただけたものと信じて』か。確かに、読んだけどね」

まるで今の僕の状況を見透かしたかのように、前の人生からの延長線上にこの本はあるかのようだった。

ちょっと腹立たしくも感じるが、だが、必要な情報もあるのだろう。

仕方なく、この装飾だらけの本を頑張って読むことにした。


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