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アイアムバグゲープレイヤー!!  作者: 海蛇
三章.ロゼッタルート

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#3.結婚式、前準備完了!


 ボスから獲得した大量の戦利品。

道中のモンスターが落とした収集品や料理。

更には鉱脈から採掘した様々な鉱石類。

これら大量の戦果を獲得した僕は、疲労も忘れてほくほく顔で帰宅する。

「――エリクっ」

「おわっ……ロゼッタ、ただいま」

僕の顔を見るなり、突然抱き着いてくるロゼッタ。

これは、いや、かなり恥ずかしいと思ったが、それだけロゼッタは切迫していたのかもしれない。

ずっとずっと、不安な気持ちを抱えたまま僕を待っていたのだろうから。

「ごめん。でも、僕は無事だから」

抱きしめる力が強くなるのを感じ、ぽんぽん、と、その背中を優しく叩き、肩を掴んでゆっくりと離す。

「――うん。おかえりなさい、エリク」

落ち着いたのか、不安そうな顔はもう消え去り、にっこりと出迎えてくれた。

これでいいのだ。これがいいのだ。

疲れて帰ってきた後は、笑顔で出迎えてほしいのだから。

その笑顔の為に、僕は頑張ったのだから。


 その後、空腹なことを伝えると、ロゼッタは「待ってて」と、用意してあったらしい鍋に火をかけ始める。

中身は何だろう、と、気になるが、今はまず、成果の話をするべきだと思った。

「ブルーストーン、沢山手に入ったよ」

「本当? じゃあ、シスターに持って行かないとね。ご飯、食べ終わったら……ううん。エリクが疲れているなら、明日でもいいの」

急く気持ちだってあるだろうに、ロゼッタは控えめに僕を気遣ってくれる。

その気遣いが、疲れた身に染みてほかほかと心が温かくなるのだ。

だから、頑張れる。

「大丈夫。ご飯を食べたら教会に行こう。疲れは、きっと眠れば取れるから」

最近の僕は、戦闘にも農作業にも慣れてきたからか、あるいはかつての勘を取り戻しつつあるのか、一晩眠れば疲れの大半が回復している事が多い。

おかげで少しくらいハードな日程で動いていても問題なく翌日にはまたフルで動けて、とても効率が良かった。

今日もきっと、一晩眠れば回復することだろうし。

今は、やれることをしっかりやっておきたかったのだ。

「うーん……エリクがそう言うなら。私も、エリクと……早く、一緒になりたい、し」

背を向けて、鍋の中身をかき混ぜている所為で、どんな表情かまでは解らないけれど、きっと、恥じらってもじもじしているのだろう。

後ろ姿だけでもそんなのが解るくらいには、ロゼッタの声は上ずっていて熱がこもっているように感じられたのだ。

「そうだね」

だから、僕も肯定する。

結婚は、早い方がいいに決まってる。

だって、そうすれば早くロゼッタを幸せにできるんだから。

ロゼッタをお嫁さんにして、僕は、ロゼッタの事を幸せにしてあげるんだから。

「結婚式……楽しみだね」

「うん♪ 私、頑張るから……」

「花嫁衣裳とかも、ロゼッタが縫うの?」

お祭りの時のドレスもそんな感じだったし、手先の器用なロゼッタなら、さぞ立派なものが仕上がるのだろうと思っていたけれど。

振り向いたロゼッタは「ううん」と、首を横に振っていた。

「他の町とかは解らないけれど……この辺りの村ではね、花嫁衣装は、花嫁と親しい女の人が縫う習わしなのよ。だから、私の分はステラとミースが縫ってくれてるの♪」

「……大丈夫かな」

ものすごく不安になる二人だった。

縫物一つでも大ゲンカをしかねない。

「き、きっと大丈夫よ。ミースも縫物はできるし、ステラは……ステラのお母さんができる人だから……」

ステラ本人が頑張る、とは言い切れない辺り、ロゼッタもステラがそういうのに向いていないのは理解しているのだろう。

友達であるが故に、友達の性能は把握しているのだ。

「……素敵なものになるといいね」

「うん……私、二人とステラのお母さんを信じているわ」

それは信じていることになるのだろうかと思わずにはいられなかったが、ロゼッタの幸せな未来の為にもなんとか頑張ってほしいと願う。



「まあまあ、こんなに早く期待していた以上に質のいいブルーストーンを集めてこられるだなんて……流石エリクさん、頑張りましたね♪」

食事の後、ロゼッタと二人でシスターのところにブルーストーンを届けに来たのだけれど、シスターは思いのほか機嫌よくこれを受け取ってくれた。

「あの、これで結婚式は……」

「はい♪ もちろん、これで結婚式はできますわ。浄化の奇跡――これだけあれば、きっと成功できるはず」

荷車いっぱいのブルーストーンである。

だけれど、これを見るシスターの目は、とても真剣で……怖さすら感じるほど、強く見つめていた。

「もしかして、浄化の奇跡って、失敗しやすいんですか?」

「ええ。元々は父が得意としていた奇跡なのですが、私自身は実際に活用したことがなくて……何せ、練習していた段階で師でもあった父が連れていかれてしまいまして……」

戦争という奴は、ほんとにろくなことをしないなあと、つくづくため息が出た。

「以降は、村で結婚をしようという方もいなくなってしまい、結局試す機会もないまま今の状態になってしまいました」

事情を聴くに、「本当にそれで奇跡を使えるのか」という疑問を感じてしまったが、シスターは力強く歩み、ブルーストーンを手に取る。

「これだけあれば、練習するに事欠くことはありません。式までの間に錬度を高め、必ずや成功できるようにしておきましょう」

感謝いたしますわ、と、僕に向け会釈し、また空に十字を切って神にも感謝を示す。

「式に必要な費用も事前に払っていただきましたし……料理の手配も済んでいます。後は式の準備だけですが、これは村の方にも手伝っていただきますので、お二人は式までの間、仲良く心穏やかにお待ちいただければと思いますわ」

「解りました」

「お願いしますね、シスター」

後、僕たちにできるのは待つことだけらしい。

二人、顔を見合わせにっこりと笑い。

そして、シスターに大きく会釈した。

女神像にも特大の感謝を示し。

そうして、僕たちは軽い足取りで家に帰ったのだ。



 待つだけでいい、と言われたけれど、僕はそれだけでいいとは思わない。

できることがあるなら、やっておくに越したことはない。

ならば、と、ロゼッタに「ちょっとだけ待っててね」と、用事を思い出したことを告げて再び家から出て、ミライドさんの工房へ足を伸ばす。

ここでするのは、鉱区で手に入った鉄鉱石や銀鉱石をプレゼントすること。

それから……それとは別に、宝石の原石が手に入ったので、これを使って宝飾品を作ってもらう事を依頼することだった。

期限は結婚式当日まで。

意味を理解したのか、ミライドさんは「お任せください!!」といつも以上に気合の入った様子だったので、期待して任せることにした。


 こうして、やれることは全部やって、僕たちは結婚式当日を待ったのだ。

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