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一人の少女とグリンガム帝国の物語~創造主が二人に別れたがゆえに紡がれる物語シリーズ~

作者: 星月ゆみこ

【すべてのはじまり】


何も無い暗闇に初めて誕生した意識は、1個体の生命として五体満足の姿を創り出した。


宇宙の力自体がその生命力で、その稀有なる濃密なエネルギーで、己自身以外にも生命を創り出すことが出来るとある日気が付いた。


自分以外の生命も欲しいと、試行錯誤し、一番最初に創った命にはノルフィアと名をつけた。


ノルフィアは、自分を創り出してくれたその者を創造主と呼んで崇拝し、甲斐甲斐しく側に寄り添い、共に動植物を育んだ。


その後も創造主は命を創り出していき、その濃い宇宙の力で幾多の惑星と幾多の種族の神々を創った。


各々の種族の神、種族神達は、各々の星で種を繁栄させ、大地を育み、時には争い、別れ、更なる種族を増やしていった。


創造主は、力を求められるがままに与え、その稀有なる力を使いすぎた為に弱り、そして、眠りについた。


…と、されていた。


しかし、事実は違っていた。


一番最初に創造主が創り出したノルフィアが、反旗を翻したのだ。


「創造主は、私だけのものです。なぜ下等な者達に力を分け与えるのですか?理解できません」


幾多の神を創造していた時から、ノルフィアはすぐ側で微笑みながら助力しながらも、心の奥底から創造主を閉じ込めて自分だけのものにしたいと思っていたのだった。


弱ってきた創造主を側で支えながら、そろそろ頃合いでしょうと、力で洗脳し、支配して閉じ込めようとした。


しかし、あからさまに支配しては嫌われてしまうかもしれない。


あくまでもこっそり確実に、自分がそんな酷いことをしたとばれてしまっては駄目なのだ。


そう用心していたのに、ばれそうになってしまった。


焦ったノルフィアは、自分の部下に命じて創造主の首を切り落とさせた。


創造主は、首を切っただけでは死なない。


命じられるまま大それた事を成し遂げてしまった部下は、この後どうすればいいのかと、次なる命令を待った。


ノルフィアは、迷いに迷ったすえ、どうしても支配できない脳部分を宿した首の前に姿を現すことも出来ず、部下に宇宙に放置してくるよう命じた。


長い年月の間、暗く広い宇宙を意識なく首だけで漂いながらも、創造主は、首から胴体まで、少しずつ回復していった。

しかし、意識が再び目覚めた時には、自分が創造主という記憶を失っていた。


そして、横を見ると、創造主の美しい姿と溢れでる気品に魅了されて、跪いていた者が数名いて、内心かなり驚いた。


何もない宇宙空間でなぜ自分に跪いているのか。


その者達は、意識を取り戻した途端、部下にして欲しいと切に願い出てきて、名を尋ねられた。


知識はなんとなくあるが、自分の素性が思い出せないし、思いだしたくないような奇妙な感じがする。


創造主は、新たなる名を考えた。


この瞬間より「エトワール」と名乗り、この先、生きていく事となる。


一方、切り離された胴体は、その心臓部分が創造主の力を宿しており、しばらくして首部分が回復した時には、脳が新しい為、記憶が曖昧なまま、側にいたノルフィアに自らの名をルヴァレスと名乗った。


側にいたノルフィアは、甲斐甲斐しくルヴァレスの世話をして、洗脳した。


「今ある世界は全て創造主様の力を奪って創られました。

それは許される行為ではありません。

全ての魂をもう一度吸収して、ルヴァレス様の為の新たなる世界を創りましょう」


こうして世界は、ノルフィアの思惑に導かれて行く事となる。


ノルフィアは、創造主にしか稀有なる自らの名前を呼ばれたくないと、自らの名は、賢者と名乗り、ルヴァレス神を崇める者達の組織を作り出し、世界を滅ぼしていった。


それに抗う世界達。


弱い世界はすぐに滅ぼされ、魂を回収されてルヴァレスに吸収された。


力の強い種族達は、滅ぼされないように、今も戦っている。




【一人の少女とグリンガム帝国の物語】

広い暗い宇宙に、赤子が一人漂っていた。


高級そうな布にくるまれており、眠っている赤子は、この何も無い空間で生きているのが不思議だが、あてもなくフワフワと漂っていた。


「あれは…赤子か?」


その赤子に気が付いたのは、ルヴァレス軍のかなり上位の権力を持つ、アヴィスという男だった。


アヴィスは、ルヴァレスに深い忠誠を誓っており、今まで戦略において滅ぼした惑星や、ルヴァレスに捧げた魂は、他の者達に比べても桁違いで、軍の中でも一目置かれている存在だった。


「これは…かなりの極上の澄んだ魂をしているな…」


ルヴァレス様に献上すれば、さぞかし力になるに違いない。


我が物顔でルヴァレス様の隣にいるあの賢者が悔しがるだろう。


アヴィスは賢者が嫌いだった。


表立って嫌悪感を表すと、権力を奪われる為、微塵もみせずに立ち振るまってはいるが、ルヴァレス様に対する粘着質なあの態度がアヴィスは許せなかった。


そんな事を思いながら赤子に手を伸ばすと、ふいに赤子が目を開けた。


澄みきった青空色の瞳をしていた。


思わず、いつの事かは覚えていないが、滅ぼす前の惑星の地に降り立った時に見た、美しい青空が目に浮かんだ。


「…どうかしている」


ハッと、気が付いて首を軽く振り、さっさと赤子の魂を手に入れようとすると、赤子がその伸ばした手の指を一本、きゅっと握って嬉しそうに、ニコッと笑った。


アヴィスには父性などないはずだった。


しかし、殺せなかった。


一片の曇りもない魂など、幾多も見てきて、躊躇なく殺してきたはずだ。


それなのになぜか出来なかった。


アヴィスの屋敷には、厳重な結界が張られており、屋敷に住む部下や側近、奴隷等、全てがアヴィスに魂の忠誠を誓っていた。


それでも、なお万全を期して、アヴィスはその中でもより信頼の置けるごく一部の側近や部下に赤子の世話を命じた。


「この赤子を育てろ。乳母や教育係は、秘密を守れる者を選定しろ」


「かしこまりました。お子様のお名前は?」


「はっ?名前?名前か?」


そんな縁遠い行為今まで一度もなく、アヴィスは、数分固まった。

控えている側近を前になんとも気まずい空気が流れる。


「リースだ。リース」


不意に脳裏に浮かんだ言葉を口にして、アヴィスはほっと胸をなでおろした。


「かしこまりました。リースお嬢様ですね」


「女なのか!?」


「そうですよ、アヴィス様」


側近達は口には出さないが、赤子はアヴィスの子供だと思っており、性別も確認していないのかと少々呆れていた。


「ま、まあいい、頼んだぞ」


ばつが悪くなったアヴィスは、早々にその場を去った。


リースが成長するにつれて、アヴィスの屋敷の奥には、子供が好きな公園や遊び場、図書館等が改築されていった。


相変わらず身近な側近や部下にしかリースの存在は知られていないはずだったが、暗黙の了解として、皆知らない振りをしていた。


リースに会いに行くアヴィスは嬉しそうであり、改築も全て子供向けで気が付かない者はいないだろう。


愛されて育ったリースは、美しい銀髪をキラキラと輝かせ、青空色の瞳で世界を真っ直ぐ見つめて、よく笑い、周りを和ませた。


「リース」


「あ、お父様!」


公園で側近と鬼ごっこをしていたリースは、アヴィスを見つけて走り寄った。


「お父様、今回は長いお仕事だったのね!」


「そうだな。少々手間取ってな」


アヴィスは、リースの目線の高さに合わせるように跪いた。


リースが赤ちゃんの時から、会うたびに必ず笑顔で迎えてくれる為、リースの存在は、すっかりアヴィスにとっての心の癒しとなっていた。


今回の種族は、なかなか手強く、早く帰ってリースに会いたかったというのに、滅ぼすのに時間がかかってしまった。

リースはまだ幼い子供の為、ルヴァレス様という創造主の神の元で働いているとだけ伝えている。

はたしてそれは、子供だからという理由のみではないとアヴィスは苦々しく思ってはいた。

要は、リースに知られたくないのだ。

大量虐殺をしているという事を。


「お父様?お仕事お疲れ様?」


遠い目をしているアヴィスの手を、リースが小さな手できゅっと握る。


「そうだな。疲れているのかもしれないな」


「お父様!元気だして!」


慌ててリースはアヴィスの片手を両手で包み込んだ。


「この前、怪我した人に痛いの治ってってやったら、治ったの!お父様にもしてあげる!」


「ほう。そうなのか」


種族的に癒しの力でもある種族だったのかと、アヴィスが感心していると、リースの手が淡く銀色に光りだした。


「疲れたの治って!」


パーっと、光ったと思うと、アヴィスは、魂に走った激痛に声もなく後ろに倒れた。


それは、浄化の力だった。


アヴィスのように惑星を滅ぼしている者にとって、それは立派な攻撃だ。いくら無防備だったとはいえ、リースの力はかなり強かった。


「お父様?疲れたの治って寝ちゃったの?」


心配そうにリースに身体を揺すられて、アヴィスはゆっくり起きて笑った。


「すっかり良くなったぞ!また今度力の使い方の先生を連れてこよう。それまでは、この力はおあずけだ。いいな?」


「そうなの?うん、わかった」


聞き分け良くリースは頷いた。


親子水入らずでほのぼのと話していると、いつもは決して話に割ってこない部下が、血相を変えて走りよってきて跪いた。


「アヴィス様!」


「なんだ?邪魔をする気か?」


アヴィスは不機嫌そうに部下をあしらうが、部下も必死だった。


「け、賢者様が屋敷の玄関にきました!」


「なんだと!?」


アヴィスは、リースを思わず抱き締めて叫んだ。


「お父様?」


リースが不思議そうにする。


「なぜ賢者が?!いや、それより、もう玄関にいるだと?だめだ!足止めしろ!」


「わかっています!今最大のおもてなしをするご準備をしますと、時間稼ぎをしていますが、賢者様は、アヴィス様を呼んでいます!」


まずい…!

万が一にもリースの存在を知られたら、確実に賢者に奪われる。

ルヴァレス様に捧げられるのならまだいいが、この浄化の力だ。手駒にされる上に、私に対しての牽制に使われるだろう。

リースを逃がさないと!


「リース、いいか、今ここに来てる賢者というやつはな、この父より軍で偉い存在だ」


「お父様より偉いの?ご挨拶する?」


「だめだだめだ!」


リースの発想に驚いてアヴィスは否定した。


「父はな、賢者が嫌いで、賢者も父を疎ましく思っている。リースを賢者に差し出したくはないんだ」


思ってもいなかった父の反応にリースは驚いた。


「お父様が嫌なら、私も嫌よ」


「そうだな、それでいい。それでいいんだ。でもな、リース。今から、賢者が絶対に追わないだろう場所におまえを瞬間移動させないといけないんだ。もちろん!頃合いを見て迎えに行くからな」


父と離れると聞いて泣きそうになったリースを見て、慌ててアヴィスが迎えに行くと断言する。


「本当にすぐに迎えに来る?」


「大丈夫だ」


「…わかった」


しぶしぶリースが頷くと、アヴィスは、リースの手を握り、ルヴァレスから貰ったとても稀有な力を分け与えた。


「リース、今おまえに分け与えているのは、ルヴァレス様から貰った貴重な力だ。

この力を込めて人に手をかざすだけで、その者の魂までもを全て吸収して、消し去る事ができる。いいか、おまえに攻撃してくる不届き者がいたら使え」


「うん、わかった」


その力を吸収したリースの瞳が一瞬赤く光ったが、すぐに元に戻った。


扉の向こうからガヤガヤと騒々しい声が聞こえる。


「賢者様!こちらはプライベートの空間ですので、主様が出てくるまでもう少しお待ち頂けませんか?」


「プライベート?それはどのような空間ですか?」


すぐそこの扉の向こうから賢者と部下が話す声が聞こえる。


きた!


アヴィスは、今ある力の限りをだして、リースを護るように包み込んだ。赤いオーラがリースの周りでトルネードのように渦巻き、部屋の中の物全てが壊れて行く。


もしもの時のリースの避難先は、前から決めていた。決めているだけで、避難先には連絡など取っていないが。


まあ、子供を送り込んで、無下にはしないだろう。


「いい加減そこをおどきなさい!」


賢者の苛立った声と共に扉が破壊された瞬間、アヴィスの赤いオーラと共にリースは吸い込まれるように転移して、跡形もなく消えた。


「何か用事か?賢者」


心底安堵したアヴィスが、振り返り様に、ニヤリとする。


「アヴィス!この私に報告もなく、何を隠していたのですか!?」


苛立ちのままアヴィスをオーラで弾き飛ばした賢者は、その転移先の痕跡を辿って転移しようとして、忌々しそうにやめた。


「厄介なところに逃がしたものですね」


長年もかけて入手したアヴィスの弱みを手に入れるチャンスを逃してしまい、賢者は倒れているアヴィスを更に痛め付けようとしたが、従順な部下達がアヴィスの前に立ち塞がった。


「どうか、お許し下さい!この後もルヴァレス様の任務がございますので!」


「ルヴァレス様の?」


「はい!そうです!」


「…なら仕方ありませんね。嘘だったら承知しませんよ」


賢者は、アヴィスを放り出して、ふんっと冷たく一瞥したあと、その場を去ったのだった。


ルヴァレス軍との戦いにおいて、かなり手強いとされる国々の一つに、グリンガム帝国という最強の大国があった。


その国の一番の強みは、フィレスという名の王が、品行方正、慈悲深く、半端なく力強いオーラとカリスマに溢れ、容姿端麗、博識で、本当に申し分ない人だという事だった。


当然の事ながら、優れた部下達にも恵まれ、国の宰相クリュスを筆頭に統率された国事や、商業も栄え、拠点であるフィレス様の居所の城まで、近隣の国どころか、遠方からも、一目フィレス様を見ようと旅をしてくる。


そのグリンガム帝国の城は、膨大な魔力のような力で浮いており、城のすぐ下には国で唯一の大規模な噴水のような水が吹き出しており、噴水の上に城が浮いているようだった。


にもかかわらず、周辺は砂漠で囲まれており、水は一定期間をあけて城のその噴水から全領土に霧状に降り注ぎ、民達はその時間に皮膚から水分を吸収する。


水が降る時間には、砂漠にたくさん生えたサボテンが、キューキューと大合唱して鳴いて知らせてくれる。


旅人達は、最初それに驚くのが定番だった。


ルヴァレス軍の攻撃は、弱く攻略しやすいところから攻められていた為、この星自体はまだ平和な方だった為に、これほどまで栄えていたのかもしれない。


しかし、フィレスは、対ルヴァレス、対賢者と、どのようにして戦うか、連日のように部下達と会議をして、戦略を練り、休む暇もなく知識を蓄えるべく日々文献を読み、精進していた。


その日も、フィレスは執務室で一人、深夜にもかかわらず、国事の書類を作成していた。


いつもと変わらない日常だったはずだが、フィレスは、ハッとして立ち上がった。


空気の振動が伝わるような微量な違和感に、執務室全体に瞬時に結界を張る。


「この気配は…」


フィレスが身構えた瞬間、稲妻の様な赤いオーラが、部屋の中心に渦巻くように現れ、その風に部屋全体が煽られ物が散乱する。


フィレスの髪の毛や衣服も煽られているが、本人は微動だにせずその力の様子を伺う。結界の力と反発し、バチバチと凄い音をたてていた。


「この力はルヴァレスのものだね?」


城の外にも国の周りにも何重にも結界を張っているのに侵入してくるとは…やはり侮れない。


ルヴァレス軍側でもかなりの上位クラスの直属の部下あたりの攻撃か、まさかルヴァレス本人……?


フィレスは警戒しつつ、一刻も早く取り除いて民達に影響がいかないようにしなければと、その赤いオーラに攻撃を仕掛けて消し去ろうとして、それに気が付いた。


「…泣き声?」


禍々しい渦の中心から子供の泣く声がする。


「罠…?いや…違う」


素早く中の子供の気配を視ると、魂はとても澄んでおり、浄化の力が感じられ、刺客や敵襲ではなさそうだった。


バチバチと反発しているのは、子供の周りを取り囲んでいる力に対してのみのようだったが、このまま進行するとどうなるかわからない。


泣いている子供を心配して、フィレスは慌てて子供を迎え入れる事を許可した。


途端に、赤いオーラは跡形もなく消えて、一人の子供が姿を現した。


頭を抱えるようにして泣いている子供に慌てて近付いて片膝をつく。


「大丈夫かな?どこか痛いところは?」


バチバチという凄い音に驚いて泣いていた子供は、瞬く間に音が消え、視界を遮っていた赤い色が消えた途端声をかけられ、驚いて泣き顔のまま顔をあげてフィレスを見た。


「大丈夫?」


優しく再度問いかけるが、子供は怯えて、少し後ろに下がった。


「…誰?」


「大丈夫。危害は加えないよ。僕の名前はフィレス。君の名前は?」


怖がらせないように落ち着いて優しく、ゆっくりとフィレスは話しかけつつ、怪我はなさそうな事を確認した。


子供は周りを落ち着きなく見渡した後、怯えながら小さく名乗った。


「…リース」


アヴィスによって転移させられたリースは、フィレスのところに着いたようだった。


「リース。可愛い名前だね」


穏やかにフィレスが微笑み、リースは名前を褒められた事は嬉しいが、状況的についていけずにいっぱいいっぱいだった為、とりあえず黙って頷いた。


「君はどこからきたのかな?」


「おうち…」


「家にいたんだね。誰がここまで転移させたのかわかるかな?」


「…お父様」


片言しか警戒して話さないリースに、フィレスは根気よく事情聴取していく。


「お父様は君に何て言って転移させたのかな?」


リースは、さっきの状況を反復し、言葉を選んでフィレスに伝えた。


「…賢者が来たから…捕まらないように…逃がすって…」


「賢者が?」


穏やかだったフィレスが驚いて眉をひそめ、リースは再び怯えの色を濃くする。


それに気が付いたフィレスがハッとして苦笑する。


「ああ…ごめんね。賢者は、僕にとっても敵だから驚いてね。お父様は、だから君を僕に保護して欲しかったのかな」


多分というように少し首を傾げて、リースは言葉を紡いだ。


「お父様、すぐに迎えに来るっていってた」


「そうなんだね。大変だったね、君が無事で良かったよ」


フィレスが安心させるようにリースの頭をそっとなでて、なでながら祝福の力をリースに与え、瞬きするぐらい一瞬の間に薄くリースの周りが虹色に煌めいて消えた。


賢者の攻撃ともなると、その一族は今頃滅んでいるかもしれない。決死の覚悟で娘を逃がしたのだろう。後でその一族の事を調べないといけない。しかし、腑に落ちないのは、先程の力が明らかにルヴァレス側の力だったということだ。


「リース。君のお父様の名前は?」


少しでもリースの警戒を解こうと優しく頭を撫でながらフィレスが問いかけると、小さな声でリースは父の名を伝えた。


「…アヴィス」


「アヴィス」


フィレスは呟いて、ん?!と、思い当たる名前がすぐに浮かんで、リースを凝視した。


アヴィスといえば、冷徹無慈悲なルヴァレス軍のトップクラスの司令官の名前だったはずだ。同姓同名か?


「もしかしてアヴィスというのは、ルヴァレス軍のアヴィスかな?」


驚きながらリースに問いかけると、リースの表情がパッと輝いた。


「お父様を知っているの?」


「…知っているよ」


やはりそうなのかと、あえて敵同士だと言うことは伏せて、フィレスは穏やかに微笑んで頷いたが、心の中では驚愕していた。

あの冷徹無慈悲な男にこんな可愛い子供がいたのかと。

たしかに、賢者に知られたくはないだろう。敵である自分のところに送り込んできたのは、苦肉の策に違いない。


「良かった。お父様に連絡とれる?お父様とお話したいの」


リースにお願いをされて、フィレスは心得たように頷いた。


「もちろん、連絡はとれるはずだよ。でも今は賢者に聞かれるかもしれないから、また落ち着いてからでいいかな?」


「…今がいいの…でも…」


リースは明らかにしょげていたが、父の言葉を思い出して素直にあきらめた。


「わかった…。お父様も賢者が嫌いって言ってたの。ばれたら困るんだって」


「そうだろうね」


こんな可愛い子供がいると賢者に知られたら大変な事になるに決まっている。あの軍は、情け容赦などない。弱みは敗北に繋がる世界だ。


とりあえず部下に命じてリースの世話を頼もうと、執務室に張った結界をとくと、外からドンドンと扉を叩き、心配そうな部下達の声が聞こえた。


「フィレス様!御無事ですか?!」


「ただならぬ気配がしましたが!」


その声に驚いてリースがフィレスの腕にしがみつく。


扉が開くようになった事に気が付いた宰相のクリュスが部屋に乗り込んで来て、荒れた部屋の惨状に驚きつつ、フィレスの前に走り込んできた。他の部下達は、フィレスの前に跪く。


「大丈夫ですか!いったい何が?」


「ああ。少し攻撃がね。もう大丈夫だよ。片付けをお願いできるかな?」


「かしこまりました」


クリュスが部下に部屋を整えるように命令する。そして、フィレスにくっついているリースを見て眉間にシワをよせた。


「その子供は?」


その様子にますますリースが怯え、フィレスが苦笑する。


「クリュス、子供を怯えさせないでくれるかな。この子はリース。賢者から逃げてきたようだから、しばらくここで預かる事にしたよ」


「賢者からですか?!よく逃げられましたね」


クリュスが驚いてリースを凝視し、もっと怯えさせた。


「クリュス」


溜め息をつきながらフィレスは立ち上がり、リースを片手で抱き上げた。


「誰か、女性で世話を出来る者を連れて来てくれるかな」


「かしこまりました」


すぐに女性の中でも文武両道にたけた優しそうな者が呼びつけられてきた。


「リース。この女性が君のお世話をしてくれる人だよ」


フィレスは、抱き上げたリースをソッと女性に託そうとして、リースはフィレスの首元にしがみついた。


「リース…?大丈夫だよ、さあ」


優しくフィレスが諭すが、リースは嫌だというように首を横に激しく振った。


「えーと」


「懐かれてますね、フィレス様」


クスッと女性が笑う。


「リース、僕はね、お仕事もあるからずっと一緒にはいられないんだよ」


困ったようにフィレスが苦笑する。


「嫌…フィレス様がいいの!」


ギュッとリースはフィレスにしがみついて譲らなかった。


困り果てたフィレスを見かねた女性の部下が、リースを無理矢理にでも引き剥がそうと、リースに触れた。


「わがままはだめですよ。フィレス様はお忙しいですからね」


「嫌なの、触らないで!」


リースが抵抗しながら泣き出す。泣いていても離さなければ、フィレス様の仕事の邪魔になるだろうと、女性は無理矢理自分の方に抱き寄せようとした。


嫌だと言っているのに自分に触れてくる女性にリースは敵意を抱いた。


そういえば、とリースは思い出した。

お父様が自分に攻撃を仕掛けてくる者には手をかざして力を使えば消えると言っていたではないかと。


リースほど幼い者の腕力では、すぐにフィレスから引き剥がされ、リースの手がフィレスの首から離れた。


「嫌だってば!」


リースの青い目が赤色に変わり、父から貰った力をリースが女性に向けようとした瞬間、フィレスが顔色を変えて素早く動いてリースのその手を優しく包むように握った。


「それはだめだよ、リース」


恐ろしく真剣で有無を言わさない表情のフィレスに圧倒されて、リースはすぐに力を戻し、綺麗な青色の目でフィレスを見つめた。


「あの、どうかされたのですか?」


女性の部下が、何が起こっていたのかもわからないままオロオロしていた。


フィレスは、改めてリースを片手で抱えると、何事もなかったかのように微笑んだ。


「やっぱり泣いてるリースが可哀想だから、僕がめんどうをみるね」


「そうですか?わかりました」


なんてお優しい方なのかと、部下は感動してフィレスの自室に向かう二人を見送った。


リースは、父から貰った力を使う事を止められて、少し不服に思いながらも、フィレスが側においてくれるようで、安堵していた。


対するフィレスは、厳しい表情のまま自室に入り、リースをベッドに座らせると、リースの目線に合わせるように片膝をついて座った。


「リース。大事なお話を聞いてくれるかな?」


「…うん?」


不思議そうにリースが頷く。


「さっき女性に対して力を使おうとしたね。君の魂は綺麗だから、きっと初めてだよね?」


「うん。すごいね、わかるの?初めてなの。お父様がくれたのよ。私に攻撃をしてきたら使いなさいって」


「ルヴァレスの力を?」


こんな子供になんて事を、と、表情にはださないままフィレスが怒りに震える。


「とっても貴重な力なんだって」


「そうだね。貴重だよ。でもね、リース。その力を使ったら、リース自身の魂にキズがついてね、治すのにとても時間がかかるし、力を使いすぎたら治らなくなるから、その力はとても危険なんだよ」


「そうなの?でも…攻撃されたら、この力を使いなさいってお父様が…」


さっきも自分の腕力では全然抵抗できなかった為、納得のいかないリースは、フィレスに反発した。


フィレスは、怖いほど真剣な表情でリースを見つめた。


「この力は、リースが想像するよりも、もっともっと怖い力なんだよ。その気になれば、星一つぐらい簡単に壊せるほどにね」


フィレスが力の恐ろしい部分を伝えたが、リースにはあまり度合いがわからない様子だった為、言い方を変えた。


「それに、力を使いすぎたら魂がキズついて、死んでしまって、お父様に会えなくなるかもしれないよ」


「お父様に会えないのは嫌だ」


星が滅ぶとかいうのはいまいちピンとこなかったが、父に会えない説は、リースの心に響いたようだった。


「君に危害がないように、僕が守ってあげるね。この先、力を絶対使わないと約束してくれないかな?」


「わかった」


素直にリースが頷いた。


「それと、僕以外の人に、力の事と、お父様がアヴィスっていう事を、内緒にしてくれるかな?秘密がばれたら、賢者に見つかるかもしれないからね」


「うん」


心得たようにリースが頷く。


「さあ、もう遅いから寝ようか」


フィレスは、広々とした自分のベッドにリースを寝かせて布団をかけた。


「おやすみ」


「おやすみなさーい」


色々な事があって疲れていたのか、リースはすぐに眠りについた。


ルヴァレスの力をもっている以上、何が起こるか未知な為、フィレス自身が側に置いておかないと不安だったのだ。


リースには、アヴィスに連絡がとれるとは言ったが、通信を介して何をされるかわからない以上、連絡をとるわけにはいかなかった。


だが、アヴィスからはいずれ娘の事で連絡がくるはずだろう。こんなに可愛い子供だ。落ち着いたら返して欲しいに決まっている。


その日まで待つしかないね。

おやすみ、リース、どうかいい夢を。


リースは、いつでもどこでもどこまでも、フィレスの後をちょこちょこと追った。


いつも、完璧な立ち居振舞いのフィレス様の後ろを一生懸命追いかけるリースの姿は微笑ましく、皆の目を和ませた。


「今日もフィレス様とご一緒なんだね」 


「どんな食べ物が好きなのかい?」


一方リースは、色々な人に話しかけられても怯え、いつもフィレスの後ろに隠れていた。


しかし、それも最初の方だけで、日が経つにつれて慣れてきたのか、少しずつ受け答えをするようになってきた。


だが、笑顔を見せる事はなく、皆がその事を心配しつつも、時間の経過が薬かと温かく見守られていた。


その一方でリースは、常にフィレスの真近でずっとくっついていて、気が付いた事があったのだ。


それは、フィレスが、皆が思っているほど、完璧ではないという事だった。


例えば、夕食で色々な料理が出されて、美味しかった料理の味付けをフィレスが何の味かを尋ねた。


すると、料理を提供していた女性が、一瞬止まった後、フフッと笑い、


「フィレス様ってば、お分かりなくせに」


そう言いながらフィレスに飛びきりの笑顔を見せた。


フィレスは、つられるように微笑み返した。


「そうだね。美味しかったよ、とても。ありがとう」


女性は、その微笑みに射ぬかれてわけのわからないことを早口で言いながら去った。


「私では直視できないので無理です~ぅ」


リースが不思議そうにフィレスを見ると、フィレスは苦笑してリースにささやいた。


「皆、僕は何でも知っていると思っててね。例えば今のように料理の味付けを尋ねると、女性に声をかける為の、会話作りの為にわざと尋ねて下さったと思われてしまったりしてね」


なんとも不憫な話で、リースはあきらめたような困ったようなフィレスの表情に思わずクスッと笑った。


フィレスはリースの笑顔に驚いた後、嬉しそうにリースの頭をなでた。


「笑顔、可愛いね」


そのキラキラしたフィレスの笑顔に、リースも先程逃げていった女性の気持ちが少しわかる気がした。なんとも無駄に美しい。

そしてフィレス自身に全くその自覚がない。


「フィレス様って、残念な人ね」


「えっ?どういう事?」


リースの言葉の真意は、きっとフィレスにはわからないだろう。


ある時はこんな事もあった。


いつものようにフィレス様が部下とリースを引き連れて城内を歩いていた。

すると、何かの用事で城にきていたらしいかなりバストサイズの大きな女性と、年配の父親らしき男性が、フィレス様一行が通りすぎる時に、端に寄って跪いた。


特にリースの目線が低い為、余計にすごくよく見えたのだが、女性のバストサイズと服のサイズが合っていないのか、はたまた緩いのか、恐ろしいほど肌の露出が凄すぎた。


さすがにリースは驚いて、フィレスの手を引っ張った。


ん?というようにフィレスがリースを見て視線を落とし、そして、フィレスもその胸の破壊力に気が付いて驚き、足を止めた。


基本的にフィレスは感情の起伏を表情に出さない為、なぜ無言で立ち止まったのかと、部下達の視線はフィレスに集まり、フィレスはどうしたものかと対応を必死に考えた。


目の前にフィレスに立ち止まられた女性も男性も、何か失礼な事があったのかと、大それた事になったと、震えて冷や汗をかいていた。


早く立ち去らねばと、フィレスは、女性にそっと耳打ちした。


「胸、見えてるよ」


すると、女性は真っ青になって胸を両手で覆いながら、叫んだ。


「何が見えるのですか!」


「えっ」


その驚きようにフィレスがたじろぎ、部下達にも何事だと動揺が走った。


女性が泣きながら男性に向かって叫ぶ。


「父さん!フィレス様が、胸に何か見えるって!私、病気?!それとも呪い?!どうしたらいいの?!」


「なんだって!大変だ!フィレス様!どうか娘を治して下さい!」


父親が、フィレスに慌てて土下座して頭を下げまくる。


「いや…そうでは」


フィレスが誤解を解こうとするが、女性の方も恐ろしい病か何かと思い込んで泣き叫んでいるし、部下達もざわめいているし、大騒ぎになった。


この自体の終結させる為に、フィレスは、何もないのに胸に向かって祝福を与えるという、まさに、残念な結果となったのだった。


泣きながらフィレスにお礼をいう親子のもとを去ってから、リースは、あまりの残念な結果になったことに我慢できずに、声をあげて楽しそうに笑いだした。


「フィレス様って、面白い!」


「リース…」


そんなに笑わないでくれるかなと、フィレスが肩をすくめるが、後ろから着いてくる部下達は、リースが笑ったことに驚き、さすがフィレス様だと、更にフィレスの賛美を高めたのだった。


フィレスの逸話はこうして幾つも作られていったのだ。


リースが来てから数ヵ月が過ぎた。


この星は相も変わらず平和な空気が流れていたが、ルヴァレス軍の他の星への侵略は恐ろしい事になっていた。


その為、国家存亡をかけての大規模な計画が秘密裏に進められており、その綿密な会議が今度数日に渡って開かれる事となった。


さすがに、その会議にリースを連れて行く事はできない。


試行錯誤の上、フィレスは、ちょうどいい時期にグリンガム帝国にお忍びで訪れていた人物に、リースを預ける事にした。


準備で忙しい最中、部下には内緒でこっそり出掛ける。


向かった先は、旅人の中でも金持ちしか泊まれない、警護もしっかりとしたおしゃれで小綺麗な宿屋だった。


颯爽と歩くフィレスに片手で抱えられて連れて来られたリースは、初めてフィレスとのお出掛けに興味深くキョロキョロしていた。


「リース、君に合わせたい人達がいてね。きっと気に入ると思うよ」


「そうなの?フィレス様から会いに行くなんて、珍しいね」


城にはいつも大勢謁見を申し込む人はいたが、忙しいフィレスの方から城外に会いに行く事は一度もなかった。


「そうだね、相手もお忍びだからね、内緒で行かないと。リースも秘密にしてくれるかな」


「うん。わかった」


約束するねと、フィレスの首元にリースが抱きつく。少しバランスを崩しながらフィレスが、微笑み、体制を整えてから、宿屋の一室の扉をノックした。


「はーい」


と、軽やかで柔らかい感じの女性の声が聞こえ、扉が開かれた。


「いらっしゃい、フィレス!」


リースは、その一瞬の出来事の間でいくつもの事で驚いた。


まず、女性の姿が今まで見た中でも一番美しかった事で、緩やかな美しい金髪に、太陽で輝く森の木々のような緑が反射するような不思議な髪色をしており、身体全体から花が咲いた時のような明るいオーラが溢れていた。


しかも、フィレス様の事を呼び捨てにしている。


更にもっと驚いたのは、その女性のあまりに素早い行動だ。


「この子がフィレスの言ってた子ね!まあ、なんて可愛いの!」


そう言いながら女性は、一瞬でリースをフィレスから奪い、自分の胸でぎゅっと抱き締めた後、状況について行けずに呆気にとられているリースの顔をのぞきこんだ。


「も~う、本当に可愛い!はじめまして!リースちゃん、私はジュラよ!仲良くしましょうね!」


「おい、ジュラ。そんな所で立ってないで、こっちに来たらどうだ」


部屋の中心にある豪華なソファーにふんぞり返っている男性がジュラを呼んだ。


威風堂々としたがっしり目の雰囲気の男性で、とてもお行儀が悪い体制をしているのにもかかわらず、その何者にも動じない威厳ある様子が父に似ているとリースは思い、大人しくジュラに抱っこされながらじっと男性を見た。


「ごめんなさい、フィレス、私、待ちきれなくて。どうぞ、入って」


「お邪魔するね」


親しげな三人が挨拶を交わしながら、ジュラとフィレスも空いているソファーに座った。


リースに見られているのを察した男性は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「あと十年後ならいいぞ」


「カルドってば!もう~またそんな事言って!」


不思議そうにリースが首を傾げると、フィレスが苦笑して、ジュラがたしなめた。


ジュラは、とても木々が多く、自然の景色が一番美しいとされる星の自然界の女神だった。

自然達と共に数多くの妖精、精霊、ドラゴン、話すことの出来る動物や、昆虫、また、共存する人間達の住む地域等、それらを統治していた。


カルドは、銀の一族の神の息子の一人で、紫銀と呼ばれる一族の王だった。

銀の一族は、美しい銀色の世界に住む種族で、一人一人の能力が桁違いに優れた、とても気高い種族で、国から外に出ることも多種族との交流も皆無だった。


そんな一族の中でも、カルドは、他種族との交流が趣味で、頻繁に他の星を探索して回り、自然界の女神ジュラを見初めた。


しかしながら、二人の結婚は互いの親族からそれぞれの諸事情で反対されており、その為、二人はこっそりとお忍びでこの国に頻繁に来て会っていたのだった。


二人が初めて国に訪れた時、その神としての高い力を二つも感知したフィレスが、何事かと思い、かなりの真剣な形相で二人の前に姿を現した。


そこには、仲睦まじく腕を組んで、幸せオーラを発しながら、歩いている二人がいた。


「え?」


「え?」


察したフィレスが、目撃してしまった事を驚き、一方、この国の王が凄い真剣な雰囲気で突如目の前に現れた為、見られてしまったと驚いた二人が、その場に固まったのはいい思い出だ。


そこから三人はこの国でよく交流するようになった。


二人の人となりは良くわかっている上に、能力も高く、リースがアヴィスの娘とわかっていても、預かってくれると快諾してくれた為、フィレスはここにリースを連れてきたのだ。


「リース、実は、とても大切なお仕事があってね。どうしてもそこにはリースを連れていけなくてね…二人と一緒にお留守番をしてて欲しいんだよ」


フィレスが、心配そうにここに連れてきた理由をリースに伝えると、泣きそうな表情を浮かべながら、ジュラに抱きついた。


ジュラも心配そうにリースの背中をなでる。


少し考えてから、リースはフィレスに向かって寂しそうに見つめながら承諾した。


「とても大切なお仕事なら仕方ないから、お留守番してる…」


「まあ!偉いわね!リースちゃん。数日だから大丈夫よ!一緒に遊んでたらあっという間にフィレスが帰ってくるわよ~」


努めて明るくジュラがリースに笑いかける。


「いい子だ。買い物に行こうか?なんでも買ってやるぞ」


カルドも太っ腹な事を言って、フィレスからリースの気を反らした。


「そろそろ行くね」


今回の会議があるのは違う国の為、出発までもう時間もなく、心底心配そうにリースを残してフィレスはその場をあとにした。


翌日の朝、いつもと違うベッドで目覚めたリースは、そう言えばフィレスが会議で国から不在の為に預けられていた事を思い出した。


「あらっ、起きたのリースちゃん!」


寂しくて泣き出しそうになった瞬間、にこやかなジュラにがばっと抱き上げられた。


「今日はおでかけするわよ~朝ご飯食べに行きましょう~」


虚をつかれて泣きそびれたリースは、ジュラに抱きつく。

昨日も思ったのだが、ジュラに抱きつくと、暖かな日差しに包まれたようで心地よく、安心するのだ。


「お腹すいてる?」


「…うん」


「良かった!お着替えして行きましょうね」


甲斐甲斐しく世話をするジュラは、いつ買いに行ったのか、子供服を着せ替えように何着も用意しており、心底嬉しそうに選んでからリースに着せた。


ふわふわした白いレースのワンピースが主体で、全体的に淡い色で統一されており、リースの銀色の髪の毛が映えた。


「さあ、行きましょう~」


手をつないで部屋の外にでたら、カルドが待ち構えており、ひょいっとリースを持ち上げた。


「可愛くしてもらったな」


よしよしと、カルドが満足そうにしている。


「…うん」


リースは照れたように少し微笑んだ。


グリンガム帝国で一番活気のある城下町は、他国の商人や、旅人と、自国の民との交流で、大にぎわいしていた。


そんな中で三人は、食事をしたり、買い物をしたり、リースは、今まで見たことがない文化に触れる事が出来て喜んだ。


右手はカルドと、左手はジュラと手をつなぎながら賑やかな街道を歩き、公園で休憩中には、ジュラがその美しい声で聞いたことがないうたを歌ってくれた。


「自然を回復させる歌よ」


にこやかに自由に歌うジュラがとても綺麗で、公園にいる人達が遠巻きに見て、聞き惚れていた。


「私も歌ってみたい」


興味津々にリースが意欲をみせると、ジュラは嬉しそうに笑った。


「一緒に歌いましょう!でもその前に喉がかわいたわね~」


ちらり、とジュラはベンチでくつろいでいるカルドに視線を送ると、仕方ないなという風にカルドが立ち上がった。


「飲み物買ってくるな」


「いってらっしゃ~い」


二人で見送って、仲良くベンチに座った。


カルドが買い物に出掛けて少しして、一人の男がどこからともなくリースの目の前に現れた。


その人物にリースは見覚えがあった。

自分の事をアヴィスの屋敷で育ててくれていた、アヴィスの一番の部下のヤリウスだ。


「あ!ヤリウスだ!」


「お探ししましたよ。リース様。良くご無事でしたね」


ヤリウスは、にこやかにリースに手を差しのべた。


「お父様は?お父様もきてるの?」


嬉しそうにリースがヤリウスに尋ねると、隣にいたジュラがハッとして、顔色を変えてヤリウスを見た。


お父様の部下という事は、この目の前にいるのは、ルヴァレス軍の者だ。


何も知らないリースは、嬉しそうにヤリウスの手をとり、素早く手中に収めてられてしまった。


「リースちゃん!」


ジュラが取り返そうとヤリウスに攻撃しようとするが、ヤリウスの周りに張られた結界により後ろに弾き飛ばされた。


「ジュラ!」


驚いてリースが叫んで駆け寄ろうとするが、ヤリウスががっちり腕に捕らえて離さなかった。


「離してヤリウス!」


「大人しくして下さい、リース様」


地面に倒れたかに見えたジュラだったが、衝撃をもろともせずに立ち上がり、空中から剣を召喚し、必死の形相でヤリウスが張った結界に攻撃する。


歪みに亀裂が入る様な軋み音が鳴り響き、その度に火花のような光が散った。


集まっていた人集りが、恐怖のあまりに悲鳴や叫び声を上げながら逃げ惑う。


結界を壊す為に、ジュラが何度も怯む事なく攻撃し、その度にジュラの傷が増えていく。


「なんでこんな事するのぉ!」


目の前で繰り広げられる光景にリースが号泣しながら暴れ、ヤリウスの顔に手があたる。


「なぜかって?」


それに少し怒りを覚えたヤリウスが、真剣な表情でリースに詰めよった。


「良くお聞き下さい。

あのアヴィス様が、賢者に頭を下げて、契約したのですよ。このフィレスの国を滅ぼす代わりに、あなたを手元で育てる事に関して、一切の関与はしないと約束しろと」


「…え?」


難しい言葉と、フィレス、滅ぼすという不吉な言葉に、嫌な感じがしてリースが戸惑うと、追い討ちをかけるようにヤリウスは言い放った。


「あなたを助ける為に、この国を滅ぼすのですよ!わかりましたか?!わかったら、暴れないで下さいね!」


わたしをたすけるためにほろぼす?


どうして?


思考回路がついていかずに呆然として黙ったリースにホッとしたヤリウスは、結界が割れるのも時間の問題と、イヤリングの通信機でアヴィスに連絡をとる。


「アヴィス様。リース様を見つけて保護しました。次の作戦に移って下さい」


そう言って、ヤリウスが合図を送った途端、空が割れるかのような空間の響きと共に、アヴィスの軍隊が空から侵入してきた。


青空が黒いオーラでどんどん侵食されていくのと共にアヴィスの部下達が続々と増えていく。


その中には、アヴィス自身は見当たらなかった。


アヴィスは、フィレスの足止めの為に自らが赴いていた為に、この場にいなかったのだ。


公園での異変に気が付いて、逃げ惑う人に邪魔されながら戻ってきたカルドが、自らの鋭く固い爪の能力で、ヤリウスの結界を壊した。


窓ガラスが割れる様な鋭く高い音が響き渡り、リースは我に返ってカルド達を見た。


「リース!」


結界が割れて、カルドが瞬時にヤリウスに攻撃する。


ヤリウスは間一髪でそれを避けて、次の瞬間リースを両手で脇から抱えて前に付き出して、己の盾にした。


「リース様を傷つけたくなければ、攻撃しないことだな。どうせこの国はすぐ滅ぶ」


ニヤリとヤリウスが笑い、カルドもジュラも悔しそうにジリジリと間合いをとった。


リースは、目の前の二人が困り果てているのを見て、ヤリウスの手から逃れようと、泣いて暴れたが、髪の毛を掴まれて押さえ込まれ、痛みで更に激しく泣いた。


「痛いよぉ!」


「リースちゃん…!」


「リース必ず助けるからな」


二人は一生懸命リースを励まながら、なんとかヤリウスを攻撃できないか間合いをとった。


リースは、なぜ、こんな事になってしまったのかを泣きながら考えた。


あんなに穏やかで暖かった公園の雰囲気が、冷たく、痛々しいものに変わった。


髪を掴まれて無理矢理上を見させられる状態になると、雲一つもなかった清々しい青空が、今は、暗黒の黒いオーラに侵食されているのが目に入った。


痛いし、とても、こわい。 


暗いオーラも空気も恐ろしい。


ても、それよりもっと、自分のせいだというのがこわかった。


優しかったみんなが死んでしまう。


そんなこと、とてもこわい。


「ここが破壊される前に逃げないとな」


ヤリウスが二人を牽制したまま、逃げようとする。物のように扱われながら、リースは一生懸命考えた。


どうしよう!どうしたらいいの?


ハッと、リースは父の言葉を思い出した。


邪魔するやつは消せばいい。


そうよ、目の前の人間を消してしまえばいいんだ!


リースは慌てて父から貰ったルヴァレスの力を使ってヤリウスに触れた。


すると、そよ風に吹かれるぐらい静かに、呆気なくヤリウスは赤いルヴァレスのオーラに包まれて消えた。


しかし、その瞬間リースは、何かおぞましいものが身体中に走った気がして、悲鳴をあげた。


「リースちゃん!」


ジュラが駆け寄ろうとして、カルドが慌てて抱き止めた。


「だめだ!ルヴァレスの力が溢れてる!」


リースは、赤いルヴァレスのオーラが、魂を求めてうごめいているのを感じて悲鳴をあげながら、ぼんやりと、フィレスの言葉を思い出した。


この力は危険だから絶対に使ってはだめだよ。


使ってみて初めてわかった。


物凄く恐ろしいのに、力が止められない。


「約束…破って…ごめんなさい…フィレス様」


小さく呟いて、リースは侵入してきているアヴィスの軍を見上げた。


消さないと。


私のせいでみんなが死んじゃう。


そんなのこわい!


こわいよぉ!


今、躊躇してしまったら、この国が滅んでしまう。


リースは、言葉にならない悲鳴をあげながら、アヴィス軍に向かって両手をあげて赤いオーラを放った。


リースの激しい苦悩をよそに、赤いオーラはいとも簡単に人を消していった。


アヴィス軍に対抗しようと集結したフィレス軍は、一定の距離をとって急いで離れた。


人が消えていく様を恐怖の面持ちで見ながら固まり、その力を放っているリースを見た者全てが化け物を見るような目で見て後ずさった。


ジュラとカルドは、ルヴァレスの力を前にして近づく事も出来ず、ただただ息を飲んでリースを凝視していた。


無我夢中で人を消し続けたリースは、息をすることも出来ない、している事すら認識できない、もう何がどうなってるのかわからない、限界状態のまま時間が過ぎ、敵が見当たらなくなったと思った途端、糸が切れたように意識を失って倒れた。


リースの危機よりも先に国の危機を感知したフィレスは、会議中にも関わらず、すぐさま国に転移をして戻ろうとした。


しかし、その大勢いる会議場所に、敵であるアヴィスが単身でいきなり現れて、フィレスに全力攻撃をしたのだ。


転移軸がずれかけて、フィレスは急いで転移を止めた。


会議に参加していた要人達が、ルヴァレス軍のアヴィスと気が付いて、阿鼻叫喚で逃げ出す。


一刻を争うフィレスが、アヴィスに攻撃を仕掛けながら問いかける。


「僕の国にリースがいるのに攻撃を?」


「リースの事はもちろん保護した」


険しい表情のまま、アヴィスも攻撃を仕掛ける。


「リースを保護してくれた事には感謝している。すまないと思うが、このまま滅んでくれ」


「すまないと思うの?君が?」


ルヴァレスに幾多の魂も献上するのが誉れと思っているアヴィスが謝るとはあり得ない。


「きっと理由があるんだろうね」


だからといって、同情の余地はない。


更なる攻撃をと思った時に、アヴィスが通信機に向かって叫んだ。


「リースが、軍を消しただと?!な、なんでそんな事になったんだ!」


慌てた様子のアヴィスが、フィレスの事を顧みず一瞬で転移した。


リースが?どういう事?


フィレスも急いで転移して後を追う。


グリンガム帝国に着いたアヴィスは、とても濃いルヴァレスの力をすぐに感知した。


慌てて向かうと、ルヴァレスの力に蝕まれているリースが無残にも地面に倒れていた。


「リース!!」


駆け付けたアヴィスは、当たり前の事だがルヴァレスの力の事は気にもせずにリースを抱き上げた。


「リース!何があった?なんでこんな事になったんだ!」


「こんな事?君がこんな幼い子供にルヴァレスの力を与えたからだよね?」


すぐに追い付いたフィレスが、冷めた目でアヴィスを睨み付けながら、躊躇なくリースに近寄り、リースを蝕んでいるルヴァレスの力をなぎ払った。


「リース!大丈夫?」


父とフィレスの声が聞こえて、ぐったりしていたリースは、どうにかうっすらと目だけを開け、ゆらゆらした視線を父に定めた。


「あ、お父様だ…迎えにきてくれての?」


それは、かすれた小さな声だったが、本当に嬉しそうにだった。


「迎えにきた!迎えにきたぞ!」


アヴィスは、慌てて答えながらも、リースの血濡れたような赤い目を見て愕然としていた。


あの、初めて会った時から見守り続けた、澄み渡った青空のような美しい瞳は、永遠に失われてしまったのか…。


リースは、何か言おうとしたが、また目を閉じた。


ルヴァレスの力が消えた事で、ジュラがリースに走りよって来て、泣きながら心配そうに足をさする。


「リースちゃん、リースちゃん」


「ルヴァレス様に頼んで治してもらう」


アヴィスは、慌ててリースを連れていこうとして、悲痛な顔のフィレスに力まかせに掴まれて、再び座らされた。


「良く聞いて。

リースの体がまだ存在できているのは、僕の加護の力だよ。本来ならもう霧散してる。

魂は、修復できないぐらい粉々で、小さな核の欠片しか残ってない。

そんな状態で、どう治してもらうつもり?」


「それは…」


アヴィスは、ガックリと項垂れた。


「リース…」


「リースちゃん…」


ジュラが涙で悲しみにくれ、カルドがしっかりと抱き締めていた。


「一つだけ解決方法があるんだけどね」


フィレスがリースの頭を愛しそうになでながらそう告げると、全員の視線がフィレスに注がれ、フィレスの方はジュラを見つめた。


「ジュラ」


「え?何?私にできる事があるの?!あるならなんでもするわ!」


勢いこんでジュラは、フィレスに対して身を乗り出した。


「君は今、カルドとの赤ちゃんがおなかに宿ってる」


「えっ?!」


ジュラとカルドが同時に驚きの声を発した。


「まだ魂は宿ってないから、そこにリースを転生させてもいいかな?欠けた魂は、赤ちゃんがお腹の中で育つと共に、自然に回復するように術はかけておくからね」


「もちろん、いいわ!可愛いリースちゃんが転生してくるなんて、嬉しいわ!」


女神としては銀の一族の子供だと、色々な意味で困難な世上ではあるが、一個人の女性としては、愛する人の子供ができた事は素直に嬉しい。


「大丈夫だ。なんとかする」


ジュラの不安を汲み取って、カルドがしっかりと頼もしくジュラを抱き締めた。


フィレスは、嫌悪しながらも、次いでアヴィスを見た。


「君の子供の事だから、君にも選ぶ権利は一応あるよ。どうする?」


一瞬アヴィスは、自分とは血の繋がりがない事を言おうとしたが、もう今更の事なので、言葉を飲み込み、静かに頭を下げた。


「そうしてくれ、頼む」


「わかったよ」


事は一刻を争うので、フィレスは、すぐさま虹色のような美しい力を手に集中させると、瞬く間にリースの体から、無事な魂を回収した。


すると、霞に消えるようにリースの体は一瞬でなくなった。


フィレスは、その魂に何か複雑な術をかけると、そっと、ジュラのおなかに手を当てて、魂を宿らせた。


それを見届け、アヴィスは毅然としながら立ち上がった。


この一連の事件は、自分が軍に帰還すると、処分対象に違いない。


それならば、リースの為に出来ることをしてあげたい。


「私からは、これをプレゼントさせてくれ」


言いながら、どこからともなく緻密な細工が美しい水晶で出来た小瓶を取り出した。


「この中には、この小さな小瓶一つで、国一つ分ほどの広範囲の人間の記憶を消し去る事が出来る砂が入ってる。これが最後の砂で、本当に希少なんだがな」


「え?」


何をするのかとフィレスの顔が強張る。


「まあ、最後まで話を聞け。これで、リースの記憶に関してだけを人々の記憶から消す。遠巻きに見ているおまえの部下も民も、リースを見る目が酷すぎる」


確かに、野次馬のように集まっていた人々は、畏怖の念に満ちた、排他的な視線でリースの事を見ていた。


「これからの、新しい人生に、私の娘だったという事実は必要ないからな!」


そう言い終わった瞬間に、アヴィスが小瓶の中の砂にルヴァレスから貰っている赤いオーラの力を込めて、蓋を開けた。


すると、ものすごい突風がアヴィスを中心に吹き荒れた。


記憶の砂の力が、風と空気に乗って、国中に流れていく。


中心部にいた者達は、ものすごい突風が過ぎ去った後、すごい風でしたね、と挨拶代わりのように話しながら、何事もなかったかのように日常に戻っていった。


フィレスの部下達は、確かに来ていたはずの敵が消えており、風の中心部にいたフィレスが、さっきの突風を発生させて、敵を排除させたのかと、勝手に思い、歓声をあげた。


ジュラとカルドも突風に驚き、一瞬、何かぽっかりと記憶がぬけたような違和感を感じたが、何も思い出せず、やがてその違和感は消失した。


「フィレス、会議中だったのに、敵の攻撃で急いで帰ってきたのね。お疲れ様!」


ジュラがにこやかにフィレスを労う。


フィレスは、欠如している自分の記憶に違和感を感じながら、ジュラに柔らかな笑みを返す。


「いや、君が無事で良かったよ。突風で傷ついたのかい?」


フィレスは、瞬時にジュラを癒して傷をなくした。


「まあ!ありがとう!」


「ああ、すまないな、フィレス」


本来なら自分が癒すべきところをフィレスに治してもらい、カルドはお礼を言った。


何かとてつもなく重要な事を、忘れてしまったような気がして、カルドも気がそぞろだったのだ。


それぞれが何か違和感を感じながらも思い出せず、気まずい雰囲気が流れた。


「そろそろ城に戻るね」


苦笑しながらフィレスがその場を去り、ジュラとカルドは見送った。


記憶の砂を操ったアヴィスは、ルヴァレス軍から消息を絶った。


軍の中では、賢者が陰で消したのだと囁かれた。


「私は何も知りません」


ルヴァレスの問いにも賢者はそう答えた。


真偽は貞かではないが、軍の中では、アヴィスの話しはタブーな事として誰も話題にしなくなり、いつしか忘れ去られた。


拭えない違和感、記憶の欠如。


フィレスは、毎日激務をこなしながらも、頭の片隅でずっと、記憶を辿っていた。


それは、何年も諦める事なく続いた。


そして、ある日ふと、子供が手を離してしまって、空に向かって風船が飛んで行くのを目で追った時に、雲が一つもない澄み渡った空が目に飛び込んできた。


この青空色には見覚えがある…。


「リース…」


その幼い少女の名も、可愛いらしいしぐさも、やっと思い出した。


そして、ハッとした。


この間数年振りに、ジュラに会った時に、ジュラの後ろに隠れて、恥ずかしそうにフィレスを見ていたジュラの子供の事を。


良かったね。


君は新しい人生を歩んでいたんだね。


長年の心のもやが晴れて、フィレスは久しぶりに心から穏やかな気分になれた。


ルヴァレスとエトワール、二人にまつわる物語はまだまだ続く。


二人が未来で一つになる日まで。

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