匂いを嗅ぐ男
ソレは暇つぶしに、ほんの遊び心でやったことが始まりで。。。
とある大学生寮での出来事
「なんか、ひま~」
「暇だよねー」
「ねぇねぇ!8人いるんだからさぁ、かごめかごめしない?」
「えー!昔、子供の頃やったあのかごめかごめ?」
「いい大人が?」
「面白いんかなー」
『そうだ!ルールちょっと変えてさぁ。後ろの正面を当てる時に、匂いを嗅ぐまではオッケーにしようよ!』
「ハハッ♪面白いかも!」
「男女混合だよ~?」
「いいじゃん!それくらい♪」
「じゃあ、ジャンケン~ぽん!!あいこでしょ!」
何度か繰り返して
たっちゃんが真ん中に座ることになった
「じゃあ、始めよう!」
か~ごめかごめ籠の中の鳥は~♪。。。。。
女の子たちは、後ろの正面になりたくなくて
どんどん早回り
男の子たちも、まさか同性に匂いを嗅がれるなんて、まっぴらごめん
歌の後半になるにつれて、手を繋いだ輪が崩れだした
最後には、バランスを崩して倒れ込んだけど、声を出す訳にはいかない
崩れた円の中心に
たっちゃん
そして、真後ろになったのは
あたしだった
(えー、あたし?マジかぁ。)
タオルで目隠しをされた、たっちゃんが
こっちにやってくる
「え~、誰だろ?匂いで分かるかなー」
最初は遠慮がちに、30センチくらい離れたところから鼻をくんくんしていたけど
通常の人間なら、香水でもつけていない限り分かるわけもなく
どんどん距離が近くなる
「ん?女の人かな?シャンプーの匂い?こんなん男じゃないよね。誰だろ?女子でー。ん~。。。。」
(ひぇー!かなり近いよ!近すぎないか?)
もう、体スレスレ
「分かんないなぁ。。。」
その時に、斜め後ろにのけ反るあたしの右胸元近くに鼻が当たる
そのまま腕を捕まれ
ガンガンに鼻をすりよせる
回りの同僚たちは、面白がってあおりだすし
もう、押し倒される寸前
「もーいいでしょ!!あたしあたし!ゆい!!」
「あ~。喋っちゃったぁ~」
「ごめんねー。ゆいだったの。ちょっと調子にのっちゃった!」
「何されるかと思ったよー。ビックリしたぁ」
それからというもの
たっちゃんが「匂いの学習♪」とか言って
あたしの匂いを嗅ごうとする
そこへ、冗談半分でさおりがあたしの腕を後ろ手に捕まえ
生け贄贈呈状態
遊びの延長戦
「もーう!」なんて言いながら
最初は、ドキドキも感じながら、その遊びに付き合っていた
だいたい1日2回捕まるんだよねー
ある夜
薄暗い部屋で、いつもの3人
(遊びの延長で、すっかりいつもの3人になってしまった)
で、テレビゲーム
昔懐かしいファミコンだ
「これこれ!この音!単音だよ?でも、味があるよね~」
数時間楽しんだあと、眠くなったので自分の部屋に帰ることにした
「ねぇ、眠いから部屋に戻るね。おやすみ~」
もう、あっちもこっちも真っ暗だ
いったい何時だろう?
遊びすぎた
真っ暗な廊下を歩きながら独り反省会
ふと違和感を感じ、立ち止まった
するといきなり誰かに後ろから抱きつかれる
(ひっ!!!!)
恐怖で声も出ない
後ろから羽交い締めにされ、首筋に鼻が当たる
鼻息を吸う音。。。
(何?何?何?何っ!!)
あたしの顔に相手の顔が近づいてくる
体の後ろ側に居た状態から、前に移動する時の少し腕が緩んだ瞬間に逃げ出した
階段を駆け降り、すぐの部屋に飛び込む
物陰にうずくまってみたが大丈夫だろうか。。。
気づかれるか?
ヤツも階段を降りて探しているようだ
部屋に入ってきた
(いやー!やめてー!気持ち悪いー)
最近、もういい加減、匂いを嗅がれることに嫌悪感を抱いていたが
あの2人常談も好きだし、いつも怠けてるし、しゃーないかー
なんて自分を言い聞かせていた
でも、さっきの羽交い締めで
スイッチが入った
恐い。
こんなに無意識で震えて
心が渦巻いて嫌~な気持ち
衝動で暴れたくなるこの感覚。。。
トラウマになっているのか?
ヤツが近付く
(嫌だ!どっか行け!!)
その願いも虚しく
うずくまるあたしの肩をいきなり掴まれる
(ひっ!!!!)
そのまま押し倒され、顔が近付く
匂いを嗅がれる
「いっ。。。。いやーーーーーっ!」
あたしが声を出したことで、ヤツは更に息が荒くなり押さえ付けにかかる
バックには何故か
ファミコンの音が流れている
単音の
あの懐かしい気持ちになる曲。。。
ててててってってぇ〜♪
そしてあたしの脳の電源が落ちた