後編
結局。
私をドキッとさせた発言の後。
また普通の会話に戻って、お互いの好きな作曲家の話とかで盛り上がって。
あっというまに楽しい時間は過ぎて、コンパは終了となった。
特に二次会という話もなく、その場で解散となった直後。
友人の清美が、私のところに駆け寄ってきた。
「ねえねえ、ちょっといい雰囲気だったわね」
ニヤニヤする清美。
先日の女子会で「最も素敵と思う男子の名前を挙げよ」と言われて、私は米野くんの名前を出したからなあ。清美はそれを覚えていて、今日のコンパで私と米野くんが隣同士と気づいて以来、私の方に注目していたらしい。
「『きれいになった』とか『化粧変えた?』とか言われてたわね」
「いや、それは……」
そもそも私は、ろくに化粧もしないタイプだ。悪く言えば地味、良く言えば純朴というところだろう。
清美だって、それくらいわかっているくせに!
「否定しなくていいよ。あっちゃんがキレイになったのは、本当の話だし」
「……え?」
私が目を丸くすると、清美は声を出して笑った。
「ハハハ……。やっぱり気づいてないのね。あっちゃんらしいわ」
それから、少し真面目な顔で、
「あっちゃん、本当に変わったのよ。特に、肌の輝きが違う、って感じかな」
「でも、私、化粧なんて……」
「わかってる、わかってる。だけどね」
チッチッチッという仕草で人差し指を振りながら、清美は言い切った。
「女性を美しくする魔法の化粧品。それは、恋をすることなのよ」
(「私がキレイになったわけ」完)