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ループ五回目の伯爵令嬢は『ざまぁ』される前に追放されたい  作者: 星里有乃(星井ゆの花)
干渉縞が生じるループ

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01


 他国をも巻き込んだタイムリープ魔法がかけられているという呪われた孤島ペリメーラ島。

 呪いをかけた張本人である赤毛の魔女の出身地である中央大陸では、魔法に見識のあるレオナルド公爵を中心に、神官や調査員で呪いを解くための方法を探していた。

 大陸随一の魔法図書館の禁書専門書架を特別に開けて、古代魔術の技法の中からそれらしき文章を抜き出していく。


「公爵様、ところで赤毛の魔女がかけたとされるタイムリープの魔法は、一体何周目まで可能なのでしょうか。まさか、無限ということはないですよね」

「有識者の集めた資料によると、上限は六回とされているそうだよ。ただし、前世の因果を含めたタイムリープだとすると、今世では五回が上限だと言えるだろうって」

「ほう……一体どのようなカラクリが……」


 レオナルド公爵の情報に、年配のベテラン神官が異論とまではいかなくとも、詳しい説明が欲しい素振りを見せる。


「時間を司る魔法にはルールがあるようで、時間であれば二十四、月日であれば十二、と回数に制限がかけられています。確かに一日は二十四時間であるし、一年は十二ヶ月。タイムリープ魔法は繰り返すという性質から、さらにその半分である六回制限ではないかとされているそうです」

「なるほど、無制限にタイムリープ出来るわけではないということか。そこはひと安心」

「ええ。そして、ペリメーラ島の場合は前世の因果の引き継ぎだと言われていますから、とうの昔に一回分は消費済み。その計算で、上限は五回という予測になるのです。ループは回数を追うと光の干渉縞のように変化を生じて、外部からの介入ポイントが見えるようになると言います」


 なるべく簡潔に、だが納得のいくように。レオナルド公爵が、タイムリープの上限予測について語る。


「ふむ、では公爵様。干渉縞が生じたループに我々の介入が上手く作用することを祈るばかりですな」


 一応、ベテラン神官も納得したようで、再び自分の作業へと戻ってしまった。一方で若手の神官はレオナルド公爵側に付いており、教会側の主導をベテラン神官よりも公爵に任せたい様子である。


「干渉縞ですか……今の段階で大陸の教会が介入すれば、なんとか制限までに因縁を終わらせられそうですね」

「そうだ、それにそうなるように仕向けなければならないだろう。さて、タイムリープの鍵を握るヒメリア・ルーイン宛の手紙がきちんと届くと良いのだが」


 暗がりでは赤茶色に見える髪を揺らして、レオナルド公爵は時空魔法を施した手紙に目をやる。ヒメリア宛のその手紙は、公爵家の印で封をするだけだ。


 繰り返される時との戦いは、静かに幕を開けようとしていた。



 * * *



 因縁の舞台である島国ペリメライドでは、タイムリープの魔法も、赤毛の魔女に対する侮辱的な断罪すら、何事もなかったように島民たちが日常を過ごしている。

 だが、因果の中心人物とも言えるヒメリア・ルーインは、タイムリープ魔法の反動から高熱を出してベッドで魘されていた。すべてのタイムリープの出来事は、ヒメリア・ルーインの悪夢であったということにするための、強制的な通過儀礼だ。


「ヒメリアお嬢様、もう何日も魘されていますね。早く良くなると良いのですが……」

「あまり病弱だと、次期王妃候補から外されてしまうし、心配だわ」

「このことは王宮の人達には漏れないように上手く誤魔化さないと……」


 魘されながら眠るヒメリアの部屋で、メイドと母親が看病をしながら話題は王妃候補から外されないか……とのことばかり。


 当のヒメリアは夢の中で、自らの先祖であり前世でもある網元の娘ヒメナと、南国蚕の小屋で絹糸を紡ぐ作業をしながら会話をしていた。


『ついに、タイムリープの魔法も三周目に入り、回数制限の半分を消費した結果となったわ。いわば、折り返し地点と言えるわね』

『次に目が覚めた時は、一体何歳くらいのどの時点になるのかしら。また、子供の頃から人生をやり直すのは億劫だわ』


 カラカラと音を鳴らして廻る絹糸を手に取り、自らの人生の糸を何度も紡がなくてはいけないことに不安を覚えてしまう。


『心配しなくても、三周目ともなると繰り返される時間軸に制限がかかるの。大体、結婚式の日から逆算して一年といったところでしょうね』

『結婚式の一年前……それならまだ、フィオナは生きているわ。彼女があんな酷い断罪を受けると分かっていたら、初めから花嫁の座を譲っていたのに』


 クルスペーラ王太子の花嫁候補を辞退するとなれば、家の存続に関わるかも知れないと二周目では流れに任せて次期王妃となったヒメリアだったが。フィオナが殺されて未来を紡げなくなったため、結局一年前からやり直しである。

 そんなことなら何か上手い理由づけをして、花嫁候補から降りた方が良いだろうと思うようになっていた。


『その場合は、貴女が断罪される側になるかも知れないわよ。ヒメリア……気をつけて』

『えっ……それって、どういう意味なの。ご先祖様……』


 魂の対話はそこまでで、いつしか紡ぎ終えた蚕の繭が優しくヒメリアの魂を包んでいた。時間軸を越えてようやく目が覚めたと同時に、次の因縁の合図とも言える一通の手紙がヒメリア宛に届く。

 三周目のタイムリープはペリメーラ島のみに留まらず、中央大陸からの介入があることを示すかのように。


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* 2024年04月28日、第二部前日譚『赤い月の魔女達』更新。 小説家になろう 勝手にランキング  i1122560
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