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ある日、王宮にてクルスペーラ王太子が直々に花嫁会の運営者達に話があると招集をかけた。てっきり花嫁会解散の決定かと危惧した者もいたが、クルスペーラ王太子の決意は真逆のものだった。
「しばらくの間、カシス姉さんのことで皆に心配かけて悪かったな。もう、オレは過去を振り返らず未来を見て国を守るために生きると決めた。残ってくれた花嫁候補二人と会う機会を設けようと思う」
クルスペーラ王太子は親しい人を亡くした哀しみからようやく立ち直り始めたのか、残った花嫁候補の二人とお茶会をする決意をした。おそらくそのお茶会を行なってしまえば、その二人の少女は王太子の結婚相手がどちらかに決まるまで自由のない暮らしとなる。
だが、今更王太子が話をなかったことにしようとしたところで、世間は彼女達を知ってしまっている。まだ幼い子供だから大目に見て貰えている部分もあり、年頃の少女になる前に交流を深めておいた方が良いとクルスペーラ王太子自身が考えたのだ。
「ああ、ようやく決意されたのですね王太子様。実は花嫁候補の少女達も二人で交流を深めさせるために、教会で勉強会を開いているのです。まだ始まってそれほどは経っていませんが、二人とも仲良くなってきているそうですよ」
花嫁候補が二人に絞られてしまったせいで、二人は世間から見るとあからさまなライバルになってしまっていた。古くから伝わる島の御伽噺に登場する三角関係の三人の人物設定にそっくりなこともあり、因縁の再来だとか供養をした方がいいだとか噂の方が先に飛び交っている。
それらの悪い噂を解消するためにも、二人には極力仲良くしてもらい、助け合えるような関係を作ろうと大人達は必死だった。
「そうか。どちらか一方を最終的に選ばなければならないのは心苦しいが、二人が先に仲良くなってくれればそれほど揉めずに済むだろう。網元の子孫であるルーイン伯爵の娘ヒメリアとは、何度か会ったことはある。あの子は歳の割に聡明で、まるで伝説の聖女のような雰囲気だったな。まぁそれであの子を候補に残したのだろうが」
聖女のように美しいと評判のヒメリアだったが、未だ十歳という幼さのため暗部にそこまでは目を付けられずに済んだのだというのが一般的な意見だった。大陸派の本名がフィオだとすると、フィオが年齢で浮いてしまわないように同い年のヒメリアを切らなかったとも言われている。
チャラチャラした面がなく下手をすれば修道院にでも入るのではないかと思う信仰の強さも、彼女が花嫁候補の争いにそこまで巻き込まれなかった理由だろう。けれど、あまり深い話をすると亡くなったカシス嬢と、彼女と秘密裏に通じていたクルスペーラ王太子の悪口になってしまうため誰も発言しなかった。
「はい。他の少女達と同じような回数でしたが、ヒメリア・ルーインはあの年齢にして知性的と申しましょうか。時折大人のような美しさもあり、将来有望かと期待されているため残したのだと思われます」
「一方で中央大陸からやってきた赤毛の少女フィオとは、カシス姉さんの葬儀ですれ違った程度絵できちんとした面識がオレとは無い。ヒメリアの方が既にフィオについて詳しくなっているだろう。まぁヒメリアもどんなにしっかりしていても、十歳の子供だ。ヒメリアにもフィオにも変に大人の対応を求めず、しばらくオレは二人の遊び相手のお兄さんに専念しよう」
この発言に花嫁会の運営メンバーは、もうクルスペーラ王太子は花嫁候補と【そういう関係にはしばらくならない】という発言だと解釈した。そもそもカシス嬢が、不慮の事故で亡くなるという不自然な死を遂げたのは、クルスペーラ王太子と【そういう関係】を持ったからだろうと考えられていたからだ。
しかし、昔ながらの王宮関係者の中にはカシス嬢は、王太子が大人の男としての【通過儀礼を済ませるための相手役】に選ばれただけだと考える者もいた。だから、暗殺をしたのが何処の誰だか分からなかったが、考え過ぎの傾向があり案外、王宮の常識に少しばかり疎い派閥なのではないかとも囁かれていた。
穏やかに過ぎていく予定のヒメリア、クルスペーラ、フィオのお茶会。だが、フィオを伝説の赤毛の魔女にしようとする派閥が積極的に動くことで、さらなる波乱を呼ぶことになる。




