不思議の国のアリス⑤
アリス氏が可愛い
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おうちのまえの木の下には、テーブルが出ていました。そして三月うさぎと帽子屋さんが、そこでお茶してます。
ヤマネがそのあいだで、ぐっすりねてました。
二人はそれをクッションがわりにつかって、ひじをヤマネにのせてその頭ごしにしゃべっています。
「ヤマネはすごくいごこちわるそう。でも、ねてるから、気にしないか」とアリスは思いました。
テーブルはとてもおっきいのに、三名はそのかどっこ一つにかたまっていました。
「満員、満員!」とアリスがきたのを見て、みんなさけびました。「どこが満員よ、いっぱいあいてるじゃない!」とアリスは怒って、そしてテーブルのはしのおっきなひじかけつきのいすにすわりました。
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明るい柔らかな日差し射し込む、彩り鮮やかな薔薇の生垣に囲まれた、緑の小さな広場。
その広場の真ん中に、真っ白なテーブルクロスを引いたラウンジテーブルが置かれている。
テーブルの上には紅茶とティースタンド。ティースタンドの中にはスコーンとビスキュイ。そして付け合わせのクロデットクリームと木苺のジャムがココット皿にぎっしりと詰まっている。
英国式のお茶会。
なぜか私はそのお茶会の場にいた
「お話の途中で急に居なくなるなんて、ひどいと思わないかしら?本当にせっかちなうさぎさんね」
向かいに座るアリスはティースプーンで紅茶をかき混ぜながら不機嫌そうにこちらを見てそう言う。
前回の夢の続きなんだろうか…
不機嫌なところ申し訳ないが、私は今一番聞きたい事をぶつける
「えと…私はどうしてここにいるの?私は溺れていて、それで…」
「貴女がせっかちな『人魚姫』さまに襲われてたから助けてあげたのよ。まだお話の途中でもあったし、ついでによ?つ・い・で」
「人魚姫?助けた?」
紅茶を優雅に飲むアリスの口から気になる言葉がまた飛び出す。
「貴女を襲ったあの女の子の事よ。可哀想な人魚姫。嫉妬に狂った人魚姫…」
アリスは今度はスコーンに手を伸ばした。
「あの子はね、願い事を叶えたいのよ。でも願いを叶えるにはそれなりの対価がいる。その対価が貴女も
持ってる黒の本なの。とんだせっかちさんに目をつけられたものね。まだ始まったばかりなのに…」
右手に持ってる黒い本を見る。
あの時意識を失う寸前に、もがき苦しみながら掴んだ物だ。
「その黒の本は貴女がこれまで生きてきた証、罪の証、罪の型。実は、貴女と同じように、その黒の本を持つ人は他にもいっぱいいるの。勿論、あの子もそうよ。そしてその人たちの事は罪人と呼ぶわ」
黒の本、罪人…
「他の罪人から黒の本を奪い、集めるのが願い事を叶える条件だそうよ。集めれば集めるだけ、いっぱい願い事を叶えてくれるとか…
ね、簡単でしょ?だから私も頑張って。いっぱい集めよう。あの子なんかに負けないで、ちゃんと勝って…」
「いや、ちょ、待って待って。話しが追いつかない。願い事?そのために他人から奪う?集める?いやいやそういうのいいから。とにかく今はあのクレイジーなガキをどうにかしたいだけだから!」
話しがおかしな方向に行きそうだったので慌てて本題に戻す。
アリスはそんな私を見てクスクスと笑った
「貴女は本当、怠惰な人ね。いっそ無欲で謙虚にも見える…だから私は貴女が好きなのかもしれない」
アリスは椅子を引き立ち上がる
「いいわよ。これでお茶会はおしまい。今から悪いあの子を懲らしめてあげる」
またアリスが私に向かって右手を差し出す。慌てて、黒の本を左手に持ち替え、差し出された手を右手で掴む
「黒の本は決して奪われないようにね。罪の証であると同時に貴女の能力の証でもあるんだから。それがなければ貴女は戦えない。私は私を護れない。だから絶対に他の人に渡しちゃいけない。渡さないで。そして、貴女の願いを叶えてね」
アリスは可愛らしく笑った
さて、次からいよいよ主人公反撃のターンです