不思議の国のアリス④
ちょこちょこ手直ししながら上げてます
轟音の正体は出窓の窓ガラスが派手に割れた音だ。そして間をおかずに飛び散る筈だったガラス片を纏いながら大量の水が部屋に侵入して来る。
もう一度言う
大量の水が部屋に侵入して来る!
「はっ?!ちょっ、え?!!!」
理解が追いつかない。思考を巡らすよりも先に水流は部屋に行き渡り、一瞬で膝下あたりまで水位が上がる。
敷きっぱなしだった寝具は部屋の隅に押し流され、脱ぎ散らかしていた下着類も流れに乗って何処かへ向かうのが視界の端に見えた。
やばいやばいやばい!意味がわからない!どうして急にこんな…とにかく貴重品を守らなくては…!
「本当なによ!なんなんなよコレ!!!」
「あははは!お姉ちゃん慌てすぎー!」
水没させないように、スマホや愛用のノートパソコンを慌てふためきながら持ち上げる自分をあざ笑う声が不意に響いた。
声のした方を振り向けば、いつのまにか部屋の真ん中、自分の真後ろに女の子が居た。
年齢は小学校低学年位といったところだろうか…
女の子らしい丸顔にちょっとつり目の瞳、お下げ髪。茶色のハーフパンツに赤いパーカーを着こなし、まるで水面を硬い地面のような感覚で真っ直ぐに悠然と立っていてこちらを見下ろしている。
そして、左手には黒い本を持っていた
「あ、アンタ、どうやって入って来たの?!この水は?この水もアンタがやったの?!」
「そだよー、お水いっぱいすごいでしょ?!。お姉ちゃん死にたくなかったら早くあれを渡してよ!」
あっさり肯定された上に脅しまでかけてくるが、言われている意味が分からない。
「あれってなによ?!お金?!お金が欲しいの?!お金が欲しいからこんな事やってんの?!」
「おかねー?ミキはお金なんか欲しくないよ!欲しいのは黒の本だよ!早くちょうだい!お姉ちゃんの黒の本ちょうだい!」
自らを『ミキ』と名乗った女の子は催促するように屈んでこちらに手を伸ばしてくるが、既に水位が首元まで上がってきておりこちらはそれどころじゃない。
黒の本とやらに心当たりもない。
…いや、ある。あるにはあるが、でも水が、水がもう口元まで来てそれどころじゃ―――
「あーもー!お姉ちゃんノロマすぎー!これじゃミキのお願いが早く叶えられないじゃん!もうしーらない!死んじゃえ!!」
少女の死刑宣告と同時に一気に天井まで水位が増えて、私は完全に水没した
無様に必死にもがく私を少女はニコニコと眺めている。部屋全部が水に満たされ、少女も同じように水中にいるが、特に慌てる様子もなくむしろ「余裕」といった感じ。というか水中で息継ぎが出来ているようだ。人間やめてませんか?
そんなくだらない事を考えてたらどんどん意識が遠のいていって…
(あ、これ無理…マジで死ぬ…)
無茶苦茶にもがく右手がなにかを掴んだ時、私の意識は完全に闇に塗り潰された
主人公ピンチで終わってしまった…
次回反撃予定