不思議の国のアリス③
主人公のプロフィール
鏡 有紗(かがみ ありさ)19歳 女性
デブではなく痩せ型。ゲーム漬けだが視力は良い。
容姿は特に決まってないが、ブスではない
耳が雑音を拾い、意識が緩やかに浮上する
雑音の正体は規則的に屋根を叩きつける大粒の雨のようだ
「あれ、寝ちゃってたんだ…」
布団から身体を起こし伸びをする。
部屋の中は薄暗く、出窓からの外灯の光りだけが唯一の光源である。窓に雨粒が当たる様がよく見える。
「雨が降る予報なんてなかったけどなぁ…まぁいいか…」
すぐに興味をなくし、寝落ちる前に枕元に置いたスマホを見れば時刻は19時ジャスト
遅めの朝食を取ったのが11時頃でその後12時頃から15時近くまで動画巡回をしてた
そしてその後は…あ、やばい!
掛け布団を剥ぎ目的のブツを探す
お、あったあった。良かった、ぐしゃぐしゃにはなってなかった…
手に取ったのは黒い一冊の文庫本。
黒一色の表紙に金色の文字で『不思議の国のアリス』と書かれている
――この本と出会ったのはつい昨日の事。朝目が覚めるといつの間にか枕元に置いてあったのだ
部屋には内鍵が掛かってるから誰にも入れぬ筈なのに、寝る前にはそんなものなかったのに、いつの間にか置いてあったのである。
恐る恐る表紙を開いてページを捲れば、なんの変哲もない誰もが知ってる『不思議の国のアリス』の物語。異様な風体をしているだけで、中身は至って普通の文庫本。
何処から来たのかいつから置いてあったのか。なんの目的で?そもそも誰が置いたのか…
例の恒例行事をしに来た母親に、折見てそれとなく聞いてみたが当たり前のように否定された。父親?父親はここ数日帰ってきてないので除外。そもそも私の事など存在ごと忘れてる。本当クソ….
まぁそんなこんなでこの本の扱いを持て余し、一時は得体の知れなさに捨てる事も考えたが、なぜだかそんな気には一切なれず、そのまま放置しても良かったのだが、結局、動画巡回の片手間に読むようになってしまったのだ
部屋の灯りをつけて布団に座り直しながらページを捲る
「寝落ちる直前までこれを読んでたからあんな夢見たのかな?なんだがものすっごい厨二臭い夢だったけど」
『大罪』だの『司る魂』だの、二次元でしか今日日聞かないようなワード達である
「しかも『怠惰』とか『虚』って。私に対する嫌味か…」
本当、自虐にも程がある。深層心理では、今の状況は良くないと感じてるからあんな夢になったのか?
いやまさか。
今が一番幸せに決まってる。
だって何もしなくていいんだから。
何も頑張らなていいのだから
誰にも期待されてないし、強要もされてない、命令もされてない
悩む事など何もないはず…
本を片手に立ち上がり、自室のドアに向かいそっと鍵を開ける
ゆっくりとドアを開けようとするが、コツンと「何か」に当たる
笑みがこぼれるのを止められない
慎重にそれ倒さないようにドアを開ききれば、その「何か」はすぐに正体を現す
四角いお盆の上に乗せられた、一人前の焼き魚定食。部屋のドア前にデリバリーされた本日の晩御飯である。
「アジの塩焼きしたんだ。美味そう!」
お盆を部屋の中に入れドア閉めて施錠する
働かずに食う飯はいつも美味い
母親がメシウマで良かったと、そこだけはいつも感謝してる
性格は合わないしなにもかも気に食わないが、適当にスルーすればこのような素敵な状況を提供してくれる
「だから本当、今が一番幸せ。願いなんてない。今のままでいいよ」
机の上に置かれた本を眺めながら一人つぶやく
――夢での問いかけを思い出し、そう結論づけた時、出窓から轟音が響いた
すいません、デュエルは次回で。その代わり幼女来ます