不思議の国のアリス②
いけるとこまで書く
胃が浮くような不快感に意識が浮上し、目を開けて見るとそこは暗闇だった
いつのまにか真っ暗な暗闇に放り出され、下に下にと重力に従いゆっくり落ちている途中だった。
いや、ただの暗闇ではない
辺りを見回せば、そこかしこにぎっしりならんだ戸だなに本だな。あちらこちらに見える画びょうでとまった地図に絵。通りがかりにたなのひとつからびんを取り下ろすと、〈オレンジ・マーマレード〉とはられてあるのに、中身はから。
…あれ、これ、なにかで見た事あるようなないような…いや?読んだ?とにかくデジャヴ
「うふふふ。うさぎさんたら呆けた顔してどうしたの?午後のお茶にでもあたってしまったかしら?」
思わず反射的に肩が跳ね上がる。辺りを見回した時には誰も居なかった筈の真後ろから声。
振り向けば少女がいた。
色白の肌に金髪碧眼。頭のてっぺんに大きな黒いリボンを兎の耳のように立てて、青いエプロンドレス着て。青と白のシマシマのタイツに黒エナメルおでこ靴。暗闇の中でもはっきり視認できる程薄く輝く発光の美少女
ーーこの少女はまるで、まるで…
「そうよ、思い出してくれたかしら?うさぎさん。私よ。アリスよ」
アリス。アリス。不思議の国のアリス。そうだ、不思議の国のアリス。この光景は、野原の垣根の下に空いた穴に白兎を追ったアリスが落ちていく時に見ていた光景だ
…私が昔好きだった物語。母に何度も読み聞かせてもらった物語…
「そうよ。私も私が大好きだったのよ」
アリスはそう言いながらフワリと重力に逆らうような動きで私に近づいてくる
「うさぎさん、うさぎさん。突然で申し訳ないけどね、もう時間がないのよ。もう始まってしまったのよ」
アリスが兎を急かすとは、なんだかおかしな話だ
「うさぎさん、うさぎさん。貴女の願いを聞かせて欲しいの」
願い
願い
いきなり言われてもピンとこない。そもそも私に願いなどあったのか…
―――無気力に、自堕落に、流されるまま生きてきた私に…
「なければないでわたし別に良いんだけどね、あっちはそんな言い分聞いてくれないのよ」
答えられずに口ごもる私にアリスが苦笑いしながら意味ありげな事を言う
「大好きな私を巻き込んでしまって申し訳ないわ…でも始めてしまったのだから仕方ない。私が貴女の力になるから」
アリスが可愛いらしい手をこちらに伸ばしてくるので、思わずその手を取った
「私は不思議の国のアリス。司る魂は『虚』そして私の罪は『怠惰』」
繋いだアリスの手が眩しく光り輝いていく。眩して目を開けてられない。思わず目を瞑る
「貴女の真の願い、思い出せるといいね」
薄く目を開けたら、花のような綺麗な美しい少女の笑顔があった
次回、ついにデュエル!