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(株)異世界人材派遣  作者: 春海
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月収28万からのお仕事です!

 大学を卒業して二回目の春が来た。

俺は就職活動とやらに失敗し今は飲食店のキッチンとしてフリーターをしている。

「おい!大野!ちゃんとこの料理しあげとけよ!」

「あ、はい、すみません・・・」

今日も厨房の中は怒号が飛び交い目が回るような忙しさだ。

このまま、アルバイトとして働いてていいのか?

そんな不安はいつも俺の隣にある。

今年の春で俺も24歳・・・年齢的にも就職を考えるのであれば微妙な年齢にさしかかってきている。

「あぁ、どうするかねえ・・・」

悩んでぼけっとしていたらまた先輩に怒られてしまう、今は取り合えず目の前の仕事をこなしてしまう事にしよう。




「お疲れ様でした」

深夜一時、ようやく片付けも終わり帰路につく。

朝から晩まで馬車馬のように働かされるこのレストランには厨房のアルバイトが俺しかいない。

先輩の社員さんとオーナーシェフ、料理に携わるのは俺を入れた三人だけだ。

「早く別の仕事を見つけないと過労死もありるな・・・」

なんて冗談を口にしながらだんだんと暖かくなってきた道を歩いてゆく。

帰っても何もない、誰もいない部屋だけが俺の帰りをまっている。

そんな寂しいことを考えているとふと、見慣れない小道を発見してしまった。

「なんだ、ここ。こんな道昨日まであったか?」

目を凝らして見るがやはり昨日までは見たことがない、しかし古くから使われているような獣道のような細い小道だ。

普段の俺であれば疲れてそのまま帰るところではあるがなぜかその先になにかあるような気がしてならなかった。

「・・・まあ、少し寄るだけなら」

気まぐれというのか好奇心というのか、その小道の先に進むことにした。

歩くときの砂利の音しか聞こえない。風の音も虫の声すら。

ただただ自分の歩く音だけがその空間を支配していた。

ふ、と風が吹いたかと思い顔を上げてみる。

「え、こんな所に神社なんてあったのか?」

紅い鳥居が目の前に立っている、随分と立派な神社がそこにはあった。

何の飾り気も無ければ、神様の名前がわかるような物も何一つ無い。

あるのは小さな本殿だけだった。

 賽銭箱と上から釣り下がる大き目の鈴。拝殿の奥にはやはり何が祭られているのか分からなかったが、一体だけ、狐をモチーフにしたであろう木像を見つけた。

傷むでも風化しているでもなく綺麗な、しかし年月のいったであろうその木像は隅にちょこんと鎮座し可愛らしい印象すら受ける。

何がここにいるのかははっきりとは分からないが、今の現状を神様に聞いてもらうくらいは良いだろう。

 拝殿に一礼し、我ながらベタだとは思うが5円玉を賽銭箱に入れた。

鈴を鳴らしもう一度礼を繰り返し手を叩いた。

「えー、神様。もしもこの話を聞いていただけるのであれば俺に仕事をください!どんなものでもかまいません、ただ給料お福利厚生のしっかりした親にも誇れるような仕事を紹介してください。」

と、虫のいいことを告げ再度礼をし拝殿を後にした。

鳥居を抜け、再度後ろを振り返ると神社の姿は影も形も無くなっていた。

「は?え、嘘だろ?」

通ってきた小道も見当たらず、いつもの帰路がそこにはあるだけだった。

意味が分からず呆然としていたが、明日が週に一度の休みであることを思い出し俺は寂しい我が家に帰ることにした。

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