序2
「天秤と分銅の使い方」
初めに、天秤の針の調整をしましょう。
何も皿に置かない状態で、中心から等間隔に触れていたらベストです。
天秤の調整が終わったら、その人の「良い事」と「悪い事」を精製します。
純度が高いほど良いでしょう。
次に、得られた2つの精製物の重さを比較します。
左の皿に良い事、右の皿に悪い事を載せて、どちらが重いかを確認します。
最後に、重い方の精製物の重さのおおよそを分銅で測りとります。
以上の工程から得られる結果は、「どちらか重い精製物」と「精製物の重さ」です。
重い方の精製物に応じて、報酬または罰を与えましょう。
報酬または罰の量は明確に規定されており、重い方の精製物の重さから軽い方の精製物の重さを単純に引いた分がその量となります。
次に、人間の行いに関する「比重」について説明します。表1に行動と比重の対応を…
…なるほど、思ったより簡単な仕事じゃないか
父の仕事を理解するのにさほど時間は掛からなかった。
要はその人を総合的に判断して、今後の調整をするだけ。
良い事が多い人には幸せを、悪い事が多い人には不幸せを。
与える量も明確に定式化してあるから仕組みは簡単だ。問題ない。
「注意点」
※1:我々は「報酬または罰を与える立場」であって、「その人の将来を変える立場」ではない事に注意
※2:人は生き物なので、時々刻々と状況が変化する事に注意
※3:予後予測に十分に注意
うんうん、なるほど。
この世界の人間は良く出来ている。
というよりも、父が人間に与えた遺志が、この世界の人間の身体に組み込まれている。
例えば、人間は2本の腕を持っている。
これは「1つの事象について、必ず良い事と悪い事の両方を持つ」という事と、「複数の事象を持つ事はできず、何かを掴んだら何かを失う」という事を示唆している。
父の遺志はあまりに自然すぎて、人間は気付かないだろう。私から見たらこんなに分かりやすい表現はないのに。
色々と思考が横道に逸れたが、大体の内容は把握出来た。
じゃあ早速仕事を始めよう。
―初仕事は、「田中結衣」なる人間にしよう