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神さまの涙  作者: 凪
1/3

―「○○○」こそがこの世で最も美しく罪深い物である



私には父がいた。

実際には「父のような存在」であって、本当の父ではないが、長い事側にいたので父と呼んでも違和感は無い。

思い出話は私の性格上、過去にしがみついているようであまり好きではない。

しかし、私自身の終わりを私の手で迎えるに当たって、最後に余韻に浸ろうと思う。




父は美しいものが好きだった。

あちこちから綺麗なものを集めては、専用の大きな箱に詰めていた。

綺麗なものが好きであるにも関わらず、その箱は古臭かった。


父は寡黙だった。

父と私の間に会話が無いことが日常茶飯事だった。あるとすれば、私が父の綺麗なものを見ようとした時の、お決まりの一言である、

「私が死ぬまでは開けてはダメだ」

以外に会話は存在しなかった。

毎回聞くたびにふくれていたのを覚えている。


父は仕事熱心だった。

私とろくに会話をしなかったのは、父の頭の中が仕事でいっぱいだったからというのもある。

仕事に一途な父を尊敬していたため、特に何とも思ってなかった。

ただ、時折浮かべる父の切なそうな表情が気になっていた。


そんな父がいなくなったのは本当に突然だった。


小さな机の上に父の使っていた道具が並べられていた。

古びた天秤と錆びた分銅、その使い方をまとめた本と一緒に、簡単な書き置きがあり、細く鋭い字で、

「お前なりの美を追求しなさい。P.S:箱を開けなさい、お前ならできるはず」

とだけ簡単に書いてあった。


何のことかさっぱり分からなかったが、とりあえず、整理整頓が最期までされていなかった父の部屋に入り、箱を探す事にした。

子どもの頃からこの部屋に出入りしていたが、あまりの汚さに何年経ってもどこに何があるかを理解できない。

意味不明なのは父の頭だけにしてくれ…と考えていた矢先、押入れの一番深い所で箱を見つける。


小さい頃から開ける事を禁じられていた箱。

どんな綺麗なものが入っているんだろう。

胸が高鳴るのを感じていた。


鼓動がピークを迎えるのと同時に、私は両手で箱を開けた。



―眩い光と同時に、1つの世界が生まれた





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