6話「初めての仕事」
今回も誤字脱字が多いと思いますがよろしくお願いします
「お待ちしておりました。ユウマ・アマノ様ですね?」
「はい」
今俺は、フォルゲン隊長に案内してもらいギルドまで来ていた。なぜ来ているのか?そんなもの前に言った気がするけどいいや答えてあげよう!仕事のためだ!
まぁギルドにきて仕事以外にするものといえば依頼かメンバー探しだろうが、如何せんまだ両方とも必要ないし。
「大まかなことは王宮の方から連絡がございました。ですがギルドに入るのであればだいたいでいいのでステータスを確認させていただきますがよろしいですか?」
きたな?ステータス確認きちゃいましたな?フォルゲン隊長には無条件と言われたが、前世での記憶では最初のほうは受付の人がその人に見合ったものを選んでくれる可能性があると思い一応フォルゲン隊長と話し合ったのだ。
ちなみにフォルゲン隊長のステータスは大体700前後だった。正直そんなこと言われてもその数値がどれほどのものなのかがわからない以上コメントのしようが無いと言うものだ。俺の年代の平均を聞いたところ
「お前いくつだ?」
との有り難いお返事だった。名乗ったのはいいがそれ以外は異世界人であることしか伝えていない気がする。
「25です」
正直に答えておこう。なんかそんな気がする。
さてさて、俺の年齢ばれもしたところで25歳の平均ステータスはなんと450前後だという。フォルゲン隊長がいくつなのか気になるが25歳の平均より強いってことだけわかっていればいいか。
フォルゲン隊長の数値と俺の年齢の平均の事を鑑みるに少しばかり低くしておこうと二人で話し合った。
ということで、受付のお姉さんにフォルゲン隊長との共同作業で考えたステータスを伝えておこう。
「350です」
「わかりました。登録いたしますので少々お待ちください」
なんだ、弱いことに対して何か言ってくるかとも一瞬思ったがそこはプロというやつか。ただ単に興味がないだけか。俺はお姉さんに興味ありますけど……主にスリーサイズが。
そんな馬鹿なことを考えていると受付のお姉さんが登録を完了し戻ってきた。
「登録完了しました。それではさっそく依頼を受けていきますか?」
「そーですねぇ、どちらかといえば俺のステータスだとどのくらい通用するのかがわからないので、そこのところを踏まえてしばらく見繕って貰おうかなぁって思ってるんですが」
「なるほど、わかりました」
うん、なんていうかすんなりいったな。他にも俺みたいな注文をするやつがいるのだろうか?ま、居るんだろうな。でなければただ親切なだけだろう。どちらにしても俺としてはありがたいので何も言わないけれど。
「アマノ様のステータスですと討伐は王都近辺の魔物は大した相手ではないでしょうが、失礼ながら戦闘経験は?」
「ありません」
「でしたら、まずは比較的動きの遅い相手にいたしましょう」
「あ、一ついいですか?」
「はいなんでしょう」
「しばらく討伐系はやめて採取や採掘みたいなのにしてもらえませんか?」
こと地形に関して無知な俺が道案内システムもなく、かと言って自動歩行システムもないのに討伐対象のモンスターのところまで行ける気がしない。
だからまずは採取など討伐などという緊張しまくるものではなく採取というとりわけ楽な気持でやれるほうがいいのだ。
まぁ、いざとなればステータスをどうとでも変動できるので討伐でもいいけれど、フォルゲン隊長との約束もあるし、あまり目立たないようにしたい。
「分かりました、それではそn……」
「お願いします!誰か!誰か助けてください!」
受付のお姉さんが依頼を探しに行こうとしたとき、大きな声で助けを求める声がした。
☆
少年は叫んだ。自分の喉がつぶれてしまうかもしれないほどに叫んだ。だが、自分の喉がつぶれるだけでお母さんを助けることができるならば安かった。
少年は叫んだ。もう何回叫んだのだろう。わからない。けれどお母さんが倒れてから少年はギルドまで足を運び叫んだ。
「お願いします!お母さんを助けてください!!!!」
そんな折一人のギルドメンバーが近づいてきた。少年は気持ちが高ぶった。今まで何度も叫んだが誰もかれもが相手をしてくれなかった。理由は簡単お金を持っていないから。お金があればギルドに依頼する、けれど少年にはそんなお金は持っていなかった。だからこそ叫ぶしかなかった。
そこにギルドメンバーの一人が来たのだからきっとお母さんを助けてくれるのだろうと気持ちが高ぶった。けれどそれはほんのひと時。
「クソガキが!何日もうるせーんだよ!そんなに助けてほしけりゃ金を持ってこい!」
そういいながら、男は少年を蹴り上げた。
少年はいきなりの怒号と腹に来る衝撃と痛みで涙が出てきた。けれど決して泣きはしなかった。お母さんを助けるために、ただお母さんを助けてほしいがために。痛くて、苦しくて、怖いけれど決して泣かなかった。
少年は決めていた。泣くときはお母さんが治ってからだと。自分では治すことができないからこそ泣かずにそのギルドメンバーの男にもう一度叫ぶ。
「お母さんを!助けてください!」
だが、その願いは届かない。
「うるせえな!何度も言ってるだろ!助けてほしけりゃ!金を持ってこい!」
その男はこぶしを振り上げた。少年を殴るために。うるさい子供を黙らせるために。だが、そのこぶしが少年に当たることはなかった。なぜならば……
「いけすかねぇな」
☆
何やら少年が叫んでいる。助けてください?だったら依頼でも出せばいいだろうにと思ったのも一瞬、すぐに理解ができた。この子には依頼するお金がないのだと。
「依頼を作るとかそういうことぐらいしてもいいのでは?」
「個人的にはそうしてあげたいのですが」
受付のお姉さんがすごく居心地の悪そうな顔をした。正直俺も意地悪な質問をしたと思う。けど、それでもと思うのが日本人の……いや、人間の性か。
すると今まで黙っていて完全に空気だったフォルゲン隊長が話しかけてきた。
「お前の言いたいことはわかる。だが、一度受けてしまえば、一度特例としてあの依頼を出してしまえば、他の者からもそうしろと言われるだろう。それを断れば……」
知ってるよフォルゲン隊長。言われなくても知っている。それが人間だから。
微妙にアンニュイになっていると強面のおじさんが少年に近づいて行った。助けてあげるのかと思ったのもつかの間、少年に怒鳴ったと思ったら蹴りを入れていた。
何をやっているんだ?あのおっさんは。確かに邪魔なのかもしれない。確かにうるさいかもしれない。だけど、それであの子にけりを入れて言い通りにはなりはしないだろうが!
少年は蹴りを入れられて涙目になってはいるが泣いてはいなかった。蹴りを入れられても尚少年は叫んでいた。助けてくださいと。
そんな少年の姿を見て俺は心を動かされた、そんな少年に対して殴ろうとしているクソ野郎を目にしたとき俺は、いつの間にクソ野郎の手を掴んでいた。
「いけすかねぇな」
「ああ?何だてめぇ」
「黙れよ」
「あ”あ”?」
クソ野郎が何やらすごんでいるようだ。けどどうしてだろう、まったく怖くない。むしろイラッと来る程度だった。イラッと来た拍子にクソ野郎の手を潰してしまったのはご愛敬だろう。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ手があああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
クソ野郎が絶叫している。うるさいやつだ。黙れと言ったのが聞こえなかったのだろうか?
「黙れと言ったよな?」
「っ!」
どうやらわかってくれたようだ。クソ野郎の潰れた手を放してやると悲鳴を上げながら逃げていった。手がつぶれてますよ?生活できるんですか?え?潰しておいて何言ってんだって?HAHAHAHA☆
さて、あのおっさんの事はほっておいて少年だよ少年。すごく痛そうだ。まずは癒してやらなばな。
「ヒール」
俺が軽くつぶやきつつ少年を回復することを意識すると回復魔法が発動した。正直助かった。魔法とか発動させたことなかったからどうすればいいかわからなかったけど。発動してよかった。これで発動しなかったら恥死するところだった。
少年を回復してやると周りがざわついている気がする。回復魔法が珍しいのかな?もしかして目立っちゃったかな?いいや気にしないでおこう。
「お母さんを、助けてください!」
「うん、いいよ。まずはお母さんのところに案内してくれるかな?」
「うん!」
助けるにしてもどんな状態なのかを見なければいけない。見ても分からないかもしれないが。見なければ一生分からないだろう。だってこの少年が説明できるとも思えないし。
「おい、正気か?」
「はい、正気ですよ」
「勝手にすればいいが、案内はここまでにするぞ?」
「ああ、そうですねぇ」
しまったなこれは。変な正義感に駆られてフォルゲン隊長の街案内偏ということを忘れていた。
「いいですよ、家の場所がわかるので」
「そうか」
「はい」
そういうとフォルゲン隊長は軽く挨拶をして、自分の本来の仕事に戻っていった。フォルゲン隊長の本来の仕事ってなんだっけ?
「兄ちゃん、よかったのか?」
「いいよ、子供がそんなに気にするな」
自分がこんなセリフを言う時が来るとは思わなかったぜ
☆
さて、少年に道案内を頼んで少年の家に着いたのはいいけれど。いいのだけれど。これは……またなんとも普通の家だな。なんでちょっと普通の家じゃないっぽい感じにしたのかは謎である。
「お兄ちゃん!」
少年に案内されながら、少年のお母さんのところまで行くと幼女がお出迎えしてくれた。反射的に抱きしめてくるくる回ってしまいそうだったが何とか思いとどまった。偉かったぜ俺。
ロリコンじゃないよ?本当だよ?信じて!そんなことはお置いといて。
「なんだお前妹がいたのか」
「うん、僕の妹のメグ・ナンシー」
「メグ・ナンシーです!」
そうかメグちゃんか。あれ?そういえばこの少年の名前を聞いていない気がする。俺も名乗っていない気がする。名乗った?いや、名乗ってないな。そんな描写はなかったし。
「そうか、そういえば少年自己紹介がまだだったな。俺の名前はユウマ・アマノだ」
「あ、僕も自己紹介まだでした!すみません!僕の名前はアルド・ナンシーです」
アルドという名前なのか。なんか赤髪の冒険者の名前みたいな響きだな。まぁ、ㇽとドが反対だが。
んなこたぁどうでもいいんだよ!今はこの二人の母親が倒れているんだ。目の前で。そう、目の前で。なんで倒れた母親の前でのんびりと自己紹介をしてるんでしょうかね。
ふと、気付いたことがある。今までの会話の中で(あまり話してないが)父親という単語が一度も出てきていない。家族を見捨てて出て行ったか、あるいはすでにこの世にいないか。極端だけどこの世界では多分その理由が多いだろう。だからあえて聞かないでおこう。
それにしても、なんだろうか。この部屋に入った時から嫌な空気がする。辛気臭いというかただ暗いだけなのか。よくわからないがあまり居心地のいい場所ではないな。
「うあ…あああ、うう」
「「お母さん!」」
うなされているな。相当苦しいのだろうか。正直見ただけじゃ何が何だか分かったもんじゃねぇぜ。ただの風邪ならアドバイスくらいできるが、これがもしこの世界にしかない病気だったりしたらお手上げだ。
「アマノさん!お母さんを助けてください!」
泣きそうになりながらも俺に助けを乞うてきたアルド。今更そんなことを言わなくてもいいのだけれど、それしかできないことを理解しているんだろうな。この子は。妹のメグほうも訴えかけるように俺を見てくる。やばい、ドキッとした。
とりあえず熱があるかどうかの確認だけでもするか。おでこを触ればいいのか?
「熱!冷た!」
「アマノさん?」
おおう、びっくりしたな。母親のおでこは確実に熱かった。だけど母親の周りが冷たかった。まるで意味が分からんぞ!対象のものだろう?対象とか以前に、なぜ周りが冷たい?空気がそれこそ凍りそうなほどに。
あまり考えたくはないがもしかしたら霊の類かもしれんな。この世界ならありそう。けど、霊がいる辺りが冷たくなるみたいな話は元の世界だけのものではないのか?この世界でも通用することなのか?
わからん。わからんが試してみる価値もあるだろう。
「二人ともちょっと外に出ててくれるかな?」
「え?」
「おねがい」
俺がお願いするとしぶしぶながら二人は外へ出て行った。
さて、それじゃあ元の世界のあれこれがどこまで通用するのか試してみましょうかね。
まず、霊がいる辺りが冷たくなる。これは今母親を触ったときに感じたものだろ。次は音の反響だな。テレビで音が反響したら霊がいない証拠だとか。
「あーーーー」
……うん、わかんね。正直な話この部屋に居ようが居まいが反響しなさそう。さてさて、次が一番みんなの中で一般的なもの。霊は暗いところに現れる。しかし、今は昼だ。カーテンを閉めようが光が差し込んできて明るくなる。だからと言って夜まで待つなんて馬鹿なことはしない。じゃあどうするか。
簡単だろう?何の為の異世界だ?何の為のMPだ?何の為の闇系魔法だ?……まぁ普通はこんなことに使う為じゃないだろうけど。とりあえず、この魔法をうまく使えば程よく暗くできるはずだ。暗すぎると見えなくなるしね。
で?どうすりゃいいんだ?闇系魔法使って霊が浮かび上がるようにしよう!ここまでは実験としていい考えのはずだ。問題は。
「闇系魔法の何をどう発動すればいいの?」
いやー考えてなかったね。まったくもって考えてなかったね。どうしようか。とりあえずそれっぽくイメージしながらそれっぽいの言っておくか?
「ブラックアウト」
俺がそうつぶやくと同時に周りから光が消えた。いきなりあった光が消えたことで脳も目も反応しきれずに今は完全に真っ暗闇だ。ちょっと失敗しちゃったな。目が慣れるまでおとなしくしていよう。しかし、あれだなもし見えたとして会話できるのか?よくある展開では見えるようになったら会話ができたりもっと行けば触れたりするようになるけれど。でも今は視えるかどうかそれが問題だな。
さて、そろそろ目が慣れ始めてうっすらと見えるようになってきた。とりあえず母親の様態を確認しようとしたらそれは視えた。
「ぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつ」
わぁお☆変なおっさんがいた。やばくね?あいつやばくね?え?何?なんで本当にぶつぶつ言ってんの?あれって聞こえないほどの声で何かを言っている描写じゃないの?ええ?世界観こわれるぅ。
……今更か。ふむふむ、視えるし聴こえるな。聴こえるなら会話もできるのだろうか?
「あのー」
「ぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつ」
「少しお話いいですか?」
「ぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつぶつ」
「……」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ成仏するうううううううううううううううううううううううううううううううううううううう」
無視するのが悪い。俺は無視されるのが嫌いなんだよ。そんなやつには無条件で光系魔法を食らわせてやった。正直光系が聖属性なのか迷ったけど、似たようなものだろうと発動したらビンゴだったわ。ざまあみろ!
「お、おおおおお前ええええええいきなり何しやがる!」
「あん?無視しやがった霊を強制成仏させてやろうとしただけだが?」
「馬鹿野郎!そんなことしたらお前成仏しちゃうじゃねーか」
そのための強制成仏だというのにない言ってんだこのおっさん。
「ちっ、うるせぇなとっと成仏しろよ」
「俺はまだ成仏するわけにはいかないんだ!」
「なんでぇ」
「妻が苦しがっている」
俺は無言でまた光系魔法を発動しようとした。するとおっさんは慌てて止めてきた。
「まてまてまて!何故!?ほわい!?今の聞いてた?!」
「ああ、聴いてたよ?つまりあんたはこの人の夫だろ?それで妻が苦しんでるから可哀想でしかなくて見守ってるんだろ?」
「ああ」
「じゃあ成仏しようか」
「なぜっ!」
ははーんさてはこのおっさん自分が悪霊になってるってわかってないな?そもそも何故奥さんに憑いてるんだ?その前に俺は無視をしやがったから悪霊としたけど実は違う?
「なあおっさん一つ聞いていいか?」
「なんだ?」
「今は苦しがっているから居るんだろうけどその前の理由」
「……」
なぜ黙る。人に言えないようなことか?やはり悪霊!強制成仏が必要か!?……天丼も何回もやると面白くないしもういいや。
「実はな妻が浮気していないかが気になったんだ」
なんか言い出したぞこの幽霊野郎
「私と妻の結婚は望まれぬものだった。妻はとある貴族の令嬢で俺はただの平民だ。妻のノアの関係者からはもちろん俺の方からも批判ばかりだった」
「……」
「貴族と平民だ、皆から非難を受けることぐらい分かっていたし覚悟もしていた。だが、非難するだけでなく実力行使までしてきたのだ。俺を消し去ってしまおうと。俺の親も友も、貴族と一緒になって俺を殺そうとした。」
「なぜおっさんの家族や友まであんたを殺そうとした?」
「決まっているだろう?貴族の相手なんざごめんなんだよ」
簡単な理由だな。自分が面倒ごとに巻き込まれる可能性があるのなら、消し去ってまで巻き込まれないようにする。思っていたよりもなかなかに黒いなこの世界。
「そんな中、ノアが言ってくれたんだ。一緒に逃げようと」
そこで一旦話を区切るとおっさんはノアさんを見つめた。
「せっかく自分の地位まで捨ててここまで来たというのに。俺は早くに死んでしまった。それが悔しくて悲しくて、そして何よりもそんな俺に愛想尽きてまた戻ってしまったりすぐに他の男のもとへと行かないか気になった。それが地縛霊になった理由だろう」
「なんだ、自覚あったのか」
「ああ、何せ看取られた記憶があるからな」
おっさんはそんなことを言いながら胸を張って威張った。決して威張れることでもないんだけれど黙っておくとしよう。
「それで、気付いた時には地縛霊になっていて目の前にノアがいた。俺はうれしかった、ノアにもう一度会えたことが、だかそばに向かったとたん」
「苦しみ倒れた」
「ああ」
悪霊の類なのか判断できないな。思いが強すぎてなってしまったのか、それとも霊の類に弱い体質なのか。分からないがノアさんが苦しんでいる理由はおっさんだろう。おっさんが近づいたときに偶然何かの病気になったか。おっさん的にはそっちの方が気持ちが楽かもしれないが、おそらく。
「おっさん……ノアさんが苦しんでいる理由はあなたなんですよ」
「え?」
俺はおっさんに伝えることにした。決して嘘はつかず。
「おっさんはただ見守っているだけなのかもしれない。けど理由はどうあれ今のおっさんは一般的に言う悪霊の類だ」
「じゃあ、つまり」
「そう、おっさんが離れれば治る」
おっさんは悲しそうな顔をしてノアさんを見つめて、すぅっと離れた。するとノアさんの荒かった呼吸が穏やかになり、額に触ってみると熱も下がっていた。
「おっさん、おっさんには受け止めがたいかもしれないがこれが答えなんだ」
「……そうか」
おっさんは何かを悟ったような顔をし俺を見てきた。
「なぁ」
「はい?」
「俺を成仏させてくれ」
確かに俺ならおっさんを成仏させることはできるだろう。どれほど心残りがあって地縛霊になっていたとしても強制成仏させることができる。だけど、今回は違うんじゃないだろうか。俺が成仏させていいものじゃない気がする。
「ん……あなた」
「っ!」
寝言だろうか。ノアさんがおっさんの事を呼んでいる。
「あなた……愛してるわ。ずっと……ず……っと」
一瞬慌てたがただ眠っていしまっただけのようだ。夫とはいえ悪霊になってしまったものにそれなりに取りつかれていたんだ。体力などが落ちて悪霊が取れた瞬間逝ってしまう可能性もあった。よかった。
「ああ……ああ!俺もだよ、ノア。愛してる」
おっさんは涙を流しながら声を震わせもう一度妻に愛を誓った。聴こえたのだろうか、ノアさんの顔が少しばかり笑っているようにも見える。
「おっさんこれで成仏できるんじゃないのか」
「ああ。十分だ。ノアの言葉も聞けたし、ノアが居れば子供たちも大丈夫だろう」
「そうだな」
「ありがとうな青年。お前のおかげで妻の気持ちを…俺の死んでからの気持ちを知ることができた。ありがとう」
俺にお礼を言いながらおっさんは光に包まれ消えていった。きっと無事に成仏できたのだろう。心なしか部屋全体が温かい空気に包まれている気がする。
「もう化けて出てくんなよ」
俺はそれしか言えなかった。言わなかった。俺にはどうでもいい話だし、むしろ置いてけぼりな気もするけれど。それでもこの家族、特にこの夫婦にとってはとても大切な事なのだから。だからこそ、ノアさんが目を覚ましたら話をしないといけないな。
愛する夫が愛した人が浮気しないか嫉妬で悪霊になってしまった話を。
早くヒロイン出さなきゃ(使命感)
なんだか読者置いてけぼりな話の展開ですね。