2話「フォルゲン隊長」
「なぁ、いい加減本当のことを話してくれないか?」
「いや、いい加減って言われても……さっきから本当の事しか話してないですし」
「はぁ」
「信じてくださいよフォルゲン隊長」
王都にある取調室の一角で俺はフォルゲン隊長から取り調べを受けていた。
この部屋でもやはり元の世界とはだいぶ違っている。
まず、明かりの確保だがもちろん電球ではない。そんなものは多分この世界には存在すらしていないだろう。
じゃあどやって光を出しているかだ。答えは簡単、魔法だ。
光属性の魔法なのだろう。電球より小さめの光の玉があり、その光の玉でこの部屋全体を明るくしている。
フォルゲン隊長に聞いたら答えてくれた。
ちなみにフォルゲン隊長は気のいい人だったらしく俺の取り調べなのに俺からの質問にも答えてくれた。
まず、この国の名前は王都エスポワールだそうだ。そして、王の名前が アルド・エスポワール
さて、この国は近隣の国と比べるととびぬけて技術が発展しているそうだ。
しかし、国としての歴史は浅くまだ16年しかたっていないようだ。新国家だがとび抜けた技術があるため近隣の国は馬鹿にできない状態でいる。もし戦争でも吹っ掛けようものなら圧倒的戦力でつぶされるのだとか。
それはひとえにこの国の王、アルド・スポワールの存在が大きいだろう。
この国怖い、国というより王がというべきか
さて、このフォルゲン隊長なのだが、この人は俺を捕まえた張本人だ。
今は兜を取っておりその渋い顔が困った顔をしている。
困らせてるのは俺だけど。俺という存在が今こうしてフォルゲン隊長を困らせているのだけれど。
だが待ってほしい。俺だって被害者なのだ。
ドアを開けたら見ず知らずの街にいて、不良の兄ちゃんに絡まれたのだ。勘弁してほしいものである。
フォルゲン隊長が困っている原因は俺が不良に絡まれていた事ではないそうだ。
むしろそっちに関しては謝ってくれた。いい人だ。
じゃあ何か、あたり前だが俺が異世界から来たということだ。
何でもタイミングが悪いらしい。
取り調べの最中にフォルゲン隊長がつぶやいていたのだ。「タイミング悪すぎだろ」と
気になって聞いてみたところ、教えてくれなかった。ケチだった。
「ケチじゃない、これは国家機密だ。たとえお前が異世界から来たといっても俺の権限じゃ言えん」
……こいつ、俺の心を読めるのか!?もしかしてエスパーか!?
「口に出てるぞ」
嘆息しながらフォルゲン隊長が種明かしをしてくれた。これは恥ずかしい。
「フォルゲン隊長国家機密とか言ってましたよね?そんな重要なことどうして知ってるん?」
「なんだ?敬語を使いたいのかフレンドリーになりたいのかどっちなんだ?」
「まあまあそんなの今はいいでそ」
「……はぁ、立場わかってんのかこいつ。俺はこれでもこの国の警備隊のトップだ、一応の情報は聞いてる。だが部下は知らん、だから俺がこうして取り調べをしているんだ。」
部下は知らないのか。いいのかそれで
隊長だけが知っていても部下が知らなければ対象ができないと思うのだけれど。まぁこれに関しては俺には関係のない話だ。考えあっての事だろう。
「部下にも教えなくて大丈夫なのかみたいな顔してるな」
やはりフォルゲン隊長はエスパー!?
「表情からどんなことを考えてるかを読むのは必要だから。それにお前は顔に出やすい。」
「ほう、流石フォルゲン隊長っすな!」
「褒めてるのか?それは……ここだけの話、この国の王は誰も信じておらんのだ。たとえそれが自分の妻でも娘でも」
「嫁さんも自分の娘も信じてないのに情報は与えてるんですか?」
「ああ、各部署の隊長つまり幹部や上層の貴族には情報を与えている」
ふむ、意味が分からんな。信じていないなら最初から情報を与えなければいい。下手に情報を与えてその情報が漏れる可能性だってあるのだ。
しかし、まったく情報を与えないというのもまた国を滅ぼすことになりかねないか。一応は国王、国を守るために必要最低限の人員に情報を与えているということか?
今はそんなことを気にしても仕方ないか。
「信じてないか、何か理由がありそうですね。例えば、信じていた人に裏切られたことがるとか」
「ないな、俺が知る限り王が誰かを信じたことはただの一度もない」
そっかーないのかー
「だが、王は俺たち民の事を決して見捨てはしない」
「なぜわかるんです?」
「昔この国は貧困で今にみな倒れてしまいそうだった。だが今の王が即位されて以来自らが出向き俺たちを救ってくれた。だからこそ俺たちは王を信じる」
民は王を信じ王は民を信じないか
「だが、俺たちも王を信じ続けてもいいのか迷いが生じ始めている」
「王が自分隊を信じてくれないからですか?」
「ああ」
それもそうか。この国の人達にとっては王は神のような存在。だが所詮人間神ではないのだ。
神は何もしなくても信じてもらえる故に神。だが神のような存在は称えてくれるものに対しそれ相応の働きをしなければ信用を得られない。それも信じているのに信じてもらえないとなれば
だが、この国の王は民を信じてはいないが民のためにその身をとして働いている。
「もどかしいですね」
「ああ、本当にな」
俺のつぶやきにフォルゲン隊長が同意した。
いつの間にか俺の取り調べから話題がすり替わっているがどうでもいいだろう。
どうせ変わらない質問と答えが永遠と続くのだから。
うわ、怖いな。せっかく異世界に来たのにそれで人生終わるって嫌過ぎぃ
そんなことを考えているとドアをノックする音が聞こえた
フォルゲン隊長が椅子から立ち上がりドアを開けるとそこには一人の兵隊が敬礼をし立っていた。
敬礼を解いて
「王より伝令です。即刻異世界人とともに来るようにと!」
兵隊さんはそういうともう一度敬礼しその場を去っていった。
こうして俺はこの国の王、アルド・エスポワール王に会うことになった。
遅くなりました
イースが面白いのがいけない
8の予習……と称してセルセタやったのがいけなかった