1話[見知らぬ街]
ふむ……どうなっているんだ?
やぁ、いきなり考え事しながらでごめんね!
でもしょうがないんだ。俺のせいじゃない。俺はただ自分の部屋のドアを開けただけなんだ。
いつもの廊下を見ると思っていた俺の目や脳は、まったくもって見たこともないものを見せられているんだ。
え?何言ってるかわからないって?……大丈夫俺も分かってない。
とりあえず落ち着こう、まだ慌てるような時間じゃないはずだ。
そう、これは夢だ。夢に違いない。だからほら、一回部屋に戻ってベッドに横になって目をつむればきっと夢から覚める。
そうと決まれば部屋に戻るとしようそうしよう。
けどまぁ、結果から言えば部屋に戻ることはできなかったんだけどね。驚きすぎてドアノブから手を放したのがいけなかったのかな?後ろを振り返ったらドアのドの字もありゃしねぇ。
俺の目の前に広がるのは見たこともない素材の壁だ。
ひょっとしたらすでに焦らなきゃいけないんじゃないか?
さっきから周りの人の視線がすっごい気になるんだよね。そりゃそうだよ、いきなりドアが出現したと思ったら見たこともない男(俺なんだけど)が出てきて、さらにそのドアは消え去ったんだ。
驚くのも無理はないだろう、俺だって驚く。むしろ俺が一番驚いてる。
しかしあれだ、人ってのは自分の理解の及ばない驚きにさらされると逆に冷静になれるんだな。
冷静になれたからあれだ、今目の前にいるおっちゃんに話を聞こう。
「おっちゃん、ここどこだ?」
「どこったて、王都だよ」
「嘔吐?」
「字が違う」
なぜばれたのか
「そうか、ありがとう」
「おう、それにしても兄ちゃん今のは何だ?いきなりドアができてそこから出てきて、おまけにそのドアは消えちまった。どういう魔法なんだ?」
それは俺が聞きたいです……てかこのおっちゃん聞き捨てならんこと言ったな
「なぁおっちゃん、この世界には魔法なんてものがあるのか?」
俺の世界には魔法なんてものは空想のものだった。
ゲームや漫画ラノベでよく見て使いたいと思ってはいた。けれど結局それは空想の産物で、マナなんてものはないし魔法なんて使えっこなかったのだ。
だからおっちゃん、そんな変なものを見るような目で見ないでくれ、俺のガラスのハートが割れてしまうから。
「兄ちゃん頭大丈夫か?魔法なんてものは赤ん坊でも使えるもんじゃねーか」
「……」
「それに、今兄ちゃんが使ってたのも魔法だろ?さっきも聞いたがなんて魔法だ?」
俺が使った?いつ?今とか言ってたな。するとあれかこの世界に来てしまった時に生じたあのドアのことか。
そっかそっか、あれが俺の魔法かぁ。ってんなわけねーよくそったれ!
だが、このおっちゃんがからかってる様には見えんしな、のっておこう
「ごめんなおっちゃんあたり前な事を聞いて。それとこの魔法だが企業秘密で教えれないんだ」
「企業秘密ってのはわからんが、まぁ教えれねーならしょうがないな」
「本当にごめんなおっちゃん。そんじゃ俺の馬鹿な質問に答えてくれてありがとな」
「ああ、これぐらいなら別になんてことはないさ」
さて、親切なおっちゃんと別れて歩き出したのはいいけれど今の俺裸足なんだよな。
しかもパジャマだ。
だが地面がアスファルトじゃない。だから決して痛くはないのだ。むしろ見たこともない素材でなんとも表現しがたい感触だ。なんだこれ?
さっきの壁も見たこともない素材だった。むしろ見たことのある素材を探すほうが難しいのではないだろうか?
さっきのおっちゃんとの会話で分かったことがある。
1つ目、ここが王都と呼ばれる場所ということ。
今思えばもっと詳しく名前を聞いておけばよかった。それに王都があるなら帝国もあるのだろうか?帝国はやはり[悪]なのだろうか?疑問が尽きないな
2つ目、この世界には魔法があるということ。
魔法とかチョー使ってみたいけれど俺に使えるのだろうか?そもそも俺にMPがるのだろうか。
さらに言えばどんな魔法がるのかまったくもってわからん。俺の知ってる魔法が通じるのかいつか試してみたいものだ。
3つ目、これが案外重要だった。そう、やっぱりといっていいのか異世界なのに言葉が通じるのだ!
やったぜ!これで言葉が通じなかったら詰んでた。何もできねーよ。翻訳の魔法とかあるのか?もし通じなかったら翻訳魔法が使えるやつが来るまで会話すらできなかったのか。
そう思うと言葉が通じて本当にラッキーだった。
おっちゃんとの会話で分かったのはここまで。
次はこの世界にきて少ししかいないが、少しの間でこの街(王都)を見て分かったこと
1つ目、異世界ということで中世ヨーロッパ風かと思っていたかがとんでもない。
見たこともない形の建物や、重力なんてかんけーねぇぜFOOOOOみたいなものもある。
流石魔法。科学だとできないことを平然とやってのけるぜ!そこに……まぁいいや
しかしあれだな、この空間を頭の固い科学者が見たら発狂しそう。物理無視したものがいっぱいあるからな。ざまぁみろ。
2つ目、さっきから何度も言っているが、見たこともない素材ばかりだ。
たまに木材を見かけるけどその木材でさえ不思議木材なのだ!
だって光ってんだぜこの木!発光してんだぜ?元の世界で見たことも聞いたこともねーよ。
ちなみにこの木材、光ってるだけあって光源に使うらしい。松明にしてもないのに光源か。流石異世界。
3つ目、これが驚いた。言葉が通じたんだから文字が通じないわけがない!と言わんばかりに日本語だった。そーいやさっきのおっちゃんも字が違うとか言ってたな。
だが、これはうれしい誤算だ。異世界物といえば、言葉は通じても文字は違うなんてのがセオリーなのだが。この世界は俺に優しいようだ。
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さて、ここまでがおっちゃんとの会話と王都を見て回ったことによる情報だ。
そして今俺が置かれる状態はというと
「おい!てめー聞いてんのか?ああ?」
ザ・不良みたいなやつに絡まれていた。
さっきの事を少し訂正しよう。
この世界は俺にとって優しいと思っていたこともあったがそんなことはなかった。
どこが優しいんだこの野郎!言い出したやつ出てこい! あ、オレダ。
なぜ俺がザ・不良みたいなやつに絡まれているかというと簡単なことだ。
俺が弱そうだから! うん、そうだね弱そうじゃなくて弱いんだね。
「ああ、ごめんなさい。ちょっと考え事してまして。」
「はっ!この状況でよく考え事なんてできるな!」
この状況でって、そんな状況作ったやつに言われたかねーよ。
しかし見事にみんなスルーだな。どこの世界でも一緒か。
関わりたくないから見て見ぬふりをする。もし変に手助けして自分が痛い思いをするのが嫌だからね。
別に否定はしない、俺だってそうする。
けど自分が絡まれる状況になったら助けろよ!って思ってしまうのもまたしょうがないことだよね?
「それで、僕に何の用でしょうか?」
「何の用だと?笑わせるな!お前さっきからきょろきょろして怪しいんだよ!そんなやつ野放しにできねーだろうが!」
「ああ、確かにきょろきょろしてましたね。けど、それだけで絡むのっておかしくないですか?観光で来てるだけかもしれないじゃないですか」
「ああ、きょろきょろしてるだけならそうだろう。だが、お前のその恰好!見たこともない服装で裸足!そんなやつが観光なわけだない!言え!貴様どこの国のものだ!俺が成敗してやる!そして俺が英雄になるのだ!」
(最後で台無しだなぁ)
そんなことを考えてしまってもしょうがないよね?だってまったく反論できない答えだったんだもの。
それなのに最後のセリフ…… まさか実体験するとは
それに街の連中が何もしない理由がまさにこれだ。
怪しい!
知ってた。いつか言われるんじゃないかと思ってた。むしろ最初のおっちゃんの時にでも言われる可能性もあったと思うけど、あのおっちゃんは優しかったみたいだ。
(さて、どうしたものかね。
ここでさらに怪しまれるわけにはいかないし、兵隊さんがやってきたらたまったもんじゃない。逃げるか?しかし俺が逃げ切れるか?逃げ切れればいいけど駄目だった時が怖いな。
でもまぁ、考えてるだけじゃ始まらないよな。てことで)
「なぁ、こんな諺をしってるか?」
「あ?なんだいきなり。はんっ!さては油断させて逃げようって魂胆だな!だが無駄だ!てめーごときが俺かr」
「逃げるが勝ちってな!」
そういうと同時に俺は全速力で走った。
ザ・不良が大げさに俺に向かって何か言ってたが無視だ。
「なっ!!」
ザ・不良が驚いている。俺も驚いた。今日だけでだいぶ驚いている気がする。
何に驚いたか、そりゃもちろん走ってる速度だ。間違っても引きこもりだった俺が出していいスピードではなかった。
なんせ体が軽いのだ!体重がなくなったかと錯覚してしまうほどに。
「畜生!なんて速さだ!!待ちやがれ!!!」
後ろで俺に向かって叫んでいるが従ってやる義理はないのでそのまま逃げだした。
いやぁ、一時はどうなることかと思ったね!まさか絡まれるとわ。こんなにも善良そうな顔してるのに。
さてさて、さっきのやつもまいたしまた街の探索でもしますか!
「君が中央で騒ぎを起こした不良と怪しい人物の怪しいほうだね?無駄な抵抗はせずについてきてくれるかな?」
兜で顔は見えないけれど、きっと額に青筋を立てながらいい笑顔で言っているんだろうな。
探索を続けようとした俺の前にいたのは、仕事の速い兵隊さんだった。
どうも附箋です
今回も誤字脱字、表現が足りないかと思いますがよろしくお願いします。!