表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で楽しいセカンドライフ  作者: 附箋
王都攻略編
19/20

16話「素材を求めて」

お待たせしました

今回から新章突入です!長くなるかもしれないし短くなるかもしれません

が、よろしくお願いします

 「ヒスイちゃん、俺は君を殺す」

 

 雷が落ち暗い部屋を一瞬明るくする。雷の音がした後には先ほどと同じ雨の音だけがこの空間を支配している。そんな中、目の前の少女が口を開く。

 

 「私はこれでも一国の姫です。あなたもご存じでしょう?王族は生まれながらにして魔力が高いのを」


 もちろん知っている。そんなものはどこの世界(漫画やラノベ)でもお馴染みだ。むしろ魔力が高いからこそ一国を収めるほどの力やその他もあるのだろう。


 だが俺はそんなものじゃビクともしない。なぜならunknownなのだから。


 まぁステータスや魔法レベルが高いだけじゃ勝てないやつもいるけどな。


 「知ってるさ。それでも俺はヒスイちゃんを殺せる」

 「……どうしてもですか」


 目に涙を浮かべるヒスイちゃん。俺が命を狙っているのが信じられないのだろう。


 「どうしてもだ」

 「そう……ですか」


 それだけつぶやくと俺とヒスイちゃんは殺し合いを始めた。




▽△▽△


 メイドさんたちを雇い始めてはや数日が立とうとしていた。最初こそアンにこの家の間取り等を叩き込まれて何人か泣いている子を見かけたが、今ではすっかり慣れたようだ。


 なんかもういつも笑顔で楽しそうに仕事をしている。どうやったら早く奇麗に掃除ができるだとか、どうやれば食材を無駄なく使えるかなどいろんなメイドさんがいろんな工夫をできるようにまでなっていた。


 アンはすごいね。いやいややっていたけれど流石王って感じだ。下のものに教えるのがすごくうまい。むしろ王らしくないとまで言えるな。だって教えてるのメイドの何たるかとか掃除の仕方だとかだし。


 一回アンに本当に王様やってたのか聞いたときはいい笑顔で説教された。凄く怖かったです。


 メイドさんたちの成長はとても喜ばしいことなのだが、最近アンがずっと不機嫌なのが気がかりだ。


 「なぁアン。何をそんなに怒ってるんだ?王様やってたのを聞いたのがそんなに怒れたのか?」

 「そんなことすでにどうでもいいんです。私が不機嫌なのはご主人様が原因ですけど」


 結局俺が原因らしい。心当たりが全くございませんのです。いやいやマジだって。いつもいつでもアンを怒らせる行動をとってないですよ!


 むしろメイドさんを雇ってしまったのでお給料が必要になってくる。そのお給料を稼ぎに毎日ギルドにクエストをこなしに行ってたんだよ!


 え?そんな描写なかった?いらんだろそんなの。


 コンコンコンコン


 「どうぞ」


 俺がアンが不機嫌なのは一体なぜなのかを考えているとメイドさんたちが俺のところにやってきた。


 「失礼します。実はご主人様にお願いがございまして」 

 「お願い?」

 「はい。どうかアン様を我々の長にしていただけませんか?」


 先頭に立っていたメイドさんがアンの方をチラチラと見ながら俺にそんなの事を言っていきた。


 俺にお願いすることなのかそれは?なんて思いもしたが主は俺なのでやはり勝手に決めることができないのだろうか。


 「それはつまり、アンをメイド長にしてほしいと?」

 「はい」

 「何を馬鹿な事を。私はご主人様専z―――」

 「面白そう!その話乗った!」

 「ご主人様!?」


 俺がアンのメイド長化に対してノリノリで賛成したことにアンは驚きを隠せないようだ。


 だが考えても欲しい。メイド長、これはとてもいい存在だ。メイドをまとめる長そんな存在は絶対に必要なのだ。


 軍隊だって長がいるだろう。それと同じにしちゃいかんが長が必要なのは同じだ。


 しかしこのメイドさんたちも思い切ったことを言い出したものだよ。このアンを自分たちの長にしようとしているのだから。そういえばまだアンが悪魔だということを知らないんだったか?


 いつかは話さなければいけないけれど今はまだいいだろう。この子達がアンを本当に信頼して種族なんて関係ないと思えた時話すとしよう。


 時期が重要なんだよこういうのには。


 「ま、アンが嫌がってるけれど俺は本当に賛成だよ」

 「ご主人様!なぜですか!」

 「アン、お前も少し勉強が必要だろう?」


 などとあたかも俺がアンに勉強させるためにと装っているがただ単にアンがメイド長してるのが見たいだけだったり。


 「人間ってのがどんな生き物でどんな風にこの世界を生きているのか。それを見た方がいいと思うよ」

 「しかし・・・・・」

 「これも試練だ」


  試練という言葉にメイドさんたちは首をかしげているがアンはわかってくれたようである。


 「わかりました。その試練受けましょう」

 「おう。俺はちょっと素材取りに行って来るから、お前はメイド長がんばって」

 「はい」

 「あ、後。どんな事が起ころうとも殺してはいけないよ?」


 俺はアンに釘を刺して家を出るのであった。



 ▽△▽△


 久しぶりに一人になれた気がする。


 久しぶりといってもこっちに来てからまだ一ヶ月も経っていないのだけれど。 


 まずは比較的集めやすいというか自分で何とか集められるであろうヒノエンマの髪の毛を取りにいこうと思う。


 ヒノエンマがいったいどこにいるのかなんて知らないしどんな姿をしているのかも知らない。なのになぜいきなりそんなのに挑もうとしているか。簡単な話だ。


 反射鏡って何?どうしたら手に入れれるの?てかどんな形でどういうルートで手に入るの?まさかモンスターからのドロップ品だったり?


 ・・・・・・いっそギルドで依頼出そうかな?反射鏡5個!報酬5シルバー!的な?


 そもそも市場で買えるようなものをギルドで依頼するのもいやだな。てかそいつの価値が分からん。


 てか何であいつ市場で買えるとか知ってんだ。なぞが深まったぞこのやろう。


 なんて考えているうちに仕事がいっぱい冒険者がいっぱい受け付けのお姉さんがおっぱい間違えた3人ウエイトレスさんがいっぱいのギルドに到着した。


 しょうがないじゃないか!受付のお姉さんおっぱいがおっきいんだもの!俺だって男だ!目が言っちゃうのは仕方ないことだよ!ああ、仕方ないことだ!


 「おうアンちゃんどこ見てんだ?」

 「うっせぇ、筋肉盛り盛の変態は黙ってろ」


 俺が受付のお姉さんを凝視しているところに胸板の厚い筋肉を見せびらかしている変態が俺の視界いっぱいに入ってきやがった。


 ふざけんなよ本当に。何が悲しくておっさんの筋肉なんか見なきゃならんのだ。あれは画面越しだから見れるのであって直で見るには俺は耐久が無い。SAN値チェックが入ってしまうほどの映像だ。


 「いきなりご挨拶だなアンちゃん。最近活躍してるからって調子に乗ってるんじゃないだろうな?」

 「なんだよ。調子乗ってねーよ。むしろ早く隠居生活したと思ってる位だよ。分かったらそこどけ。受付のお姉さんの豊満な胸が見れないだろ」

 「お前恥ずかしげも無く言いやがったな・・・・・・」


 恥ずかしい?一体何のことだか。男がお姉さんの大きな大きなお胸様を凝視することのナニが恥ずかしいというのか。


 はっ!もしかしてこれが俺が痴漢と勘違いされた原因?馬鹿な!俺はあんな糞婆やデブスなんぞ見てないぞ!むしろ視界に入れないように必死になってたくらいだ!ふざけんじゃねーぞ。


 「な、なんだよ。いきなり何震えてるんだ」

 「気にするな。ちょっと昔のこと思い出してイラッときてるだけだ」

 「お、おう」


 はぁ、なんでこっちの世界に来てあの忌まわしき記憶なんざ思い出さなくてはいけないのか。全く世界は俺に優しくないな。もうちょっと優しくしてくれてもいいと思うんだけどな。


 俺は昔の事を思い出してしまった事により傷ついた心を癒すため受付のお姉さんの胸へと視線を向けた。


 だが、そこにあったのはお姉さんの豊満な胸ではなくさっきの筋肉変態野郎の顔があった。


 「うあああああああああああああああ」

 「ぶべらっ」

 「急にそのごりごりの顔を見せるんじゃねえ!びっくりして殴っちゃうだろ!」

 「な、殴ってから言うんじゃねえ!」


 くっ、超びっくりした。丸いふかふかした物を見ようとしたら四角いごつごつしたものを見てしまったらそりゃ驚くだろう。そりゃ手が出てしまうだろう。


 そこで俺は一つある事に気付き安堵した。


 多分だがステータスが変動したはずだ。そのときにこのおっさんを殺してしまわない程度になっていた事が安堵した。危なかった。正直今のは制御が効かなかったかとも思ったが。


 人ってのは本当にびっくりした時大体二つに分けられると思う。一つは硬直してしまう。びっくりしすぎた事により脳が一時的に考える事をやめてしまい結果動けなくなってしまう。


 もう一つが力の限りを出してしまう。脳が危険信号を出すことによりその時にその危険を回避する方法を全力でやってしまう。


 これは俺が勝手にそう思っているだけで実際はどうなんだろうか。今じゃそれを知るすべも無いのだけど。知っても―――まぁ、たまには役立つかも知れんな。


 そんな事より。俺が今起こした行動は後者。つまり危機を回避するために全力を出す、だ。


 だがステータスは決して本気ではなかった。もし本気だった場合このおっさんは跡形も無く消し飛んでただろうな。


 また疑問が増えた。今、間違いなく俺は制御なんて仕様と思っていなかった。何も考えていなかったともいえるが、それでもステータスが制御されていた。


 いや?制御されていたと考えてはいけないのか?あのときの全力があれだっただけなのか?


 わからん。考えれば考えるほど泥沼に浸かってしまいそうだ。


 「あー、おっさん悪いな。けどおっさんも悪いんだぜ?急にその怖い顔を俺の視界いっぱいに入れるから」

 「それって俺悪いのか?むしろ全面的にお前が悪くないか?!」


 何?10:0にしようとしてやがるぞこいつ!許さん10:0なんて許さんぞ!保険があっても俺が全額なんて破綻しちゃう!


 「馬鹿野郎おめーその顔が悪いんだ!」

 「顔が悪いとかどうしようもねーだろ!?なんだよ逆切れか!!」

 「10:0なんて先生認めませんよ!ちゃんとあなたにも罪はあるんですからね?分かりましたか?ハーゲ君!」

 「誰が先生だ!誰がハーゲ君だ!もしかしなくてもお前禿げって言いたいんだろ!?そうなんだろ!」

 「そうだよ!」

 「てめこの、認めやがったぞこいつ!」


 ハーゲ君と俺のやり取りを周りの冒険者風の人たちがわいわい騒ぎながら見ていた。賭けをしているやつもいる始末だ。


 なんて奴らだ!こんな善良な市民が柄の悪い筋肉モリモリマッチョマンの変態に絡まれているというのに!助けるどころか面白がってやがる!


 許さんぞ!俺を見捨てた事を後悔させてやる!


 「おい!そこのお前たち!ハーゲ君に言いたい事があるなら陰口なんかで言わず堂々言いなさい!いい年して冒険者なんかやってんじゃねーよ禿って!」

 「「「!?」」」


 俺の援護射撃のおかげで彼たちはハーゲ君のヘイトをもらう事ができたようだ。


 「俺はまだ23だあああああああああああああああ」

 「「「「「「えええええええええええええええ」」」」」」


 俺を含めハーゲ君以外の人が全員ハーゲ君の年を聞いて絶叫していた。てかこいつ年下かよ!



 ハーゲ君が衝撃告白をしてから少し時間がたった今でもまだ信じられない面持ちでいる。だってそうだろう?絶対30は超えていると思っていたハーゲ君がまだ23だなんて。


 俺以外の人も驚いていたし皆もきっと俺と同じ感想なんだろう。そのせいかハーゲ君が泣き崩れてしまったのもしょうがないといえよう。その後急に立ち上がって泣き叫びながら町に出て行ったのもついでに言っておこう。さらについでだがその件で緊急クエストが出ていた。


 [23には見えない老けた男を捕らえよ]だ。これ以上ハーゲ君の心をえぐるのはやめて差し上げてください。


 しかしこの世界にもいるもんだな。向こうの世界では都会のやつらは小学生でも厚化粧のBBA立ったりするからな。え?田舎?ははは。田舎はあれだよ普通のおっさんとおばさんだよ。


 しかしハーゲ君にえらい時間と精神を持っていかれてしまった。これは回復せざるを得ない。


 「というわけで受付のお姉さん」

 「どういうわけなのか解りませんがいかがしました?」

 「おっぱい揉ませて下さい」


 そういうとお姉さんは笑顔を真顔に変えて置くにスススッといってしまった。



 数分後俺の目の前に怒りマークを着けたフォルゲン隊長の姿があるのはいわなくてもいいだろう。


 「なあアマノ。お前はあれか?俺を過労死させたいのか?」

 「そんなわけ無いじゃないですか!」

 「じゃああれだお前は阿呆だな」

 「待ってくださいよフォルゲン隊長!男ならあの豊満なおっぱいを眺めて自然な流れでもませてほしいと思うのが当たり前でしょう!?」


 俺はフォルゲン隊長にそう説得を試みた。


 これは決して見逃してほしいとかそんな事でいっているんではない。男のプライドを賭けてあのおっぱいがいかに素晴らしい物なのかを知ってもらいたい。ただその一身だ。


 「やっぱりお前は阿呆だ」


 だがフォルゲン隊長には解って貰えなかった様だ。残念で仕方が無いがこればかりはしょうがない。強要してはいけない。強要してしまったらそれの魅力がなくなってしまう。自分で魅力に気づいてこそ意味があるんだ。


 「そうですか。残念です」


 と俺は心のそこから思った。フォルゲン隊長なら解ってくれると思ったが。しかし後ろに控えている憲兵の人が頷いているのを俺は見逃さなかった。後でジュースをおごってあげよう。


 「フォルゲン隊長、丁度いいし訪ねたいことがあるんですが」

 「そうか今からお前を留置所にぶち込むからその間に聞いてやろう」

 「留置所ぶち壊してもいいなら・・・・・・じゃなくてヒノエンマってどこに生息してるんです?」


 そう、俺はもともとヒノエンマの生息情報を手に入れるためにここにきていたのだ。決しておっぱい目当てでもハーゲ君いじりでもない。この二つは副産物だ。


 まぁその副産物にかまかけて全く持って本題を聞こうともしなかったのだけれど。


 「ヒノエンマなら王都の外に出ればすぐに会えるさ。お願いだから留置所をぶち壊さないでくれ」


 フォルゲン隊長からとてもいい情報を手に入れることができた。


 なんとヒノエンマは王都を出ればすぐに会えるとのこと。つまり門を出てさぁ出発だーヒノエンマだー戦闘だーてことだろう。楽しそう。


 いやしかしそうか。なら市場に売っていてもなんら不思議じゃないな。だって直ぐ其処に居るんだもの。


 ちょっと冒険者に依頼すれば在庫も補充可能だろう。てことはすでに補充されている可能性があるのでは?あれ?俺別に冒険行かなくてもイインデネ?


 ま、行くんだけどね。ここで市場に戻って普通に買ってもいいけれどあるとも限らないし。それにここで出ないと一生でないで終わりそうなんだよね。


 「ありがとうフォルゲン隊長。早速行ってくる!」

 「あ、おい」


 俺はフォルゲン隊長にお礼を言うと逃げるように去っていった。フォルゲン隊長が何か叫んでいるようだが気にしてはいけない。


 別に捕まるの嫌だから逃げているわけではないのでそこ勘違いしないように!


▽△▽△


 フォルゲン隊長に言われたとおり王都を出れば直ぐにモンスターと邂逅した。


 なんかいっぱい居る。うそでしょ?何でこんなに居るの?目に見える数でも数え切れないほど居るんですが。


 「ねぇいつもこんなに居るの?」

 「いや?今日は月に一回あるラッシュの日だ。やつらも何で月一でやってくるんだろうな」


 大当たりだった。


 きっとフォルゲン隊長が叫んでいたのはこの事だろう。決して俺が逃げ出したことではないだろう。

そういうことにしとけ。


 ここでひとつ重要な事に気づいた。俺、ヒノエンマがどんな姿をしているのか知らない。元の世界の妖怪の姿をしていれば何とかわかるかもしれないが名前が一緒なだけで姿まで一緒じゃないだろう。


 まぁ向こうの世界のヒノエンマもこれという姿は無いのだけれど。ただ女の姿をしているのが共通点だ。やはり男はみなそうなのか・・・・・・。


 しかし困ったな。明らかにぷよぷよしてかわいいスライムだとか小さい鬼みたいな感じのゴブリンはそこらに居る冒険者の声が聞こえてきているので解ったのだが一向にヒノエンマの名前が出てこない。


 しょうがない。隣の門番さんに聞くか。


 「なぁ門番さん。ヒノエンマってどんな姿してるの?」

 「なんだお前そんな事も知らないのか?ヒノエンマは一見人間の女に見えるが目が特長でな。俺たちでいう白い部分が緑で黒い部分が紫だ」


 何それ見てみたい。むしろ見てみたいんだけどその目。黒金とかよく効くけど緑紫とかはじめて聞いた。


 ゲームとかで目の色を変えれる事があるが大体角膜と呼ばれている部分だろう。それで見る事は出来るかも知れんがやっぱり実際のものとゲームのものじゃ全然違うはず。


 見たいなー。綺麗なんだろうなきっと。嫌でも怖そうでもあるなそんな色してたら。


 「ありがとう門番さん」

 「いやこれぐらいなんとも無いさ」


 なかなかかっこいい事言う門番さんだ気に入った。


 さてさてヒノエンマを探そうかね。といってもパッと見スライムとゴブリン後は、ありゃなんだ?サキュバスか?


 悪魔のような羽と尻尾を携えた女のモンスターが居る。そういう装備なのかもしれないが冒険者が戦っているのでモンスターなのだろう。しかし何だ。何で男はモンスター側についてるんだろう。


 状況を整理すると人間の男と女が一人ずつとサキュバスが一体。そして男がサキュバス側につき女を説得しているように見える。女は構わずサキュバスに攻撃。たまにサキュバス以上に力を入れて男を殴ったりもしている。


 この状況を整理すると導き出される答えはひとつ。男がサキュバスにほのめかされてホイホイ着いていき女の逆鱗に触れた。つまり痴話げんかだなありゃ。


 他所でやれと言いたいが既にここが他所である可能性も否めないので見なかったことにしてあの男が一刻も早く亡き者にされる事を祈っておこう。


 あんなにも可愛い子なのにサキュバスなんぞに目移りするなんて万死に値する。むしろそのままサキュバスとよろしくやってお前の女を俺に下さいお願いします。


 「お前の女を俺に下さいお願いします」


 いけない声に出てしまった。いきなりこんな事を言われたあの人たちは困惑している。そりゃそうだろう。見ず知らずの男がいきなり変な事言ってきてるんだ、むしろ通報もんだろう。


 「俺様の女を何だって?」

 「お前の女ってどっちだよハゲマゲドン」

 「誰がハゲマゲドンだこら」


 ハゲマゲドンが突っかかってきた。やめてほしい。何というかこの世界に来てから俺は禿げに愛されているんだろうか。


 「それに俺様は禿じゃねぇ、スキンヘッドだ!」

 「へぇ。ちゃんと短い髪からやりました?」

 「あ?そんな面倒な事するかよ」

 「ちなみにその頭にしたのっていつです?その前の髪の長さは?」

 「昨日だ。そんでロングだ」


 あっ(察し)。これはやってしまいましたなハゲマゲドンさん。


 スキンヘッドにするときの注意として短い髪から頭皮を太陽光に慣らしていかなければいけない。もし慣らさずにハゲマゲドンさんの様にロングからいきなりスキンヘッドにすると頭皮がやけどする。


 密林から砂漠に変化した頭皮は、今まで密林に守られていたが砂漠化することによって太陽光が直接当たってしまう。守ってくれるものが無くなってしまう。


 そりゃ火傷もしちゃうだろう。ちなみに火傷すると頭皮がめくれてきてとても見せられない感じになってしまうので・・・・・・・


 「合掌」

 「おいこら急になんだ。それに俺様の女が何だって?」

 「なんでもないので痴話げんかの続きをお願いします。ついでにそのサキュバスは退治しておきますね?」


 言いつつ俺は始めてのモンスター退治をした。言っても直接殴ったりしたわけじゃない。サキュバスってのがどの程度のものなのかなんて知らないので、炎魔法:火炎球(ファイアボール)を適当に感覚で撃ったら蒸発した。


 いやね?今まで何回か魔法使ってきたけど攻撃形の魔法とか使った事ないし?どんなもんでやればいいのか分からなかったんです。


 で、ちょっと軽い気持ちで。それこそステータスを鑑みてボールを緩くパスする感じで撃ったらものすごい勢いで飛んで行き文字通り当たったサキュバスは蒸発していた。


 ドン引きである。俺ドン引きである。ちょっとキャラがおかしくなってしまうほどには自分でやった事に引いているんですよ。


 だって本当に緩いパスをする感覚でやったのにあんな事になるんだもの。見ろよ、今まで突っかかってきた男もその女も周りに居る冒険者もさっきの門番さんも呆然としてる。


 だが、むしろこれはチャンスなのだろう。皆の思考が停止している間に逃げてしまおう。今逃げなければなんやかんやでいろんな面倒ごとが起きそうだから。


 「じゃあそう言う訳で、その人と仲良くするんだよ?」

 「お、おう」


 俺はハーゲ君に別れを告げるとヒノエンマ探しに出るのだった。


 ◎


 ハゲマゲドン君と別れてから数分後。


 「ソノカミノケヲ。。。ヨコシヤガレエエエエエエエエエエ」


 片言になりもはや人間としての理性なんて無い様な感じの天野優馬の姿があった。


 ハゲマゲドン君と別れてからヒノエンマ探しを再会した天野はヒノエンマをすぐに見つける事ができた。なので髪の毛を頂こうとヒノエンマに普通に攻撃したら破裂した。


 言っている意味が分からないと思うがここは理解してほしい。ヒノエンマを気絶でもさせてゆっくり髪の毛を取ろうと思っていた。それで殴ったら跡形も無く消し飛んだというより破裂した。


 最初天野は何が起きたかを理解する事ができなかった。否、理解はしたのだが認めたくなかったのである。


 気絶させるためにちょっと殴ったら跡形も無く破裂して消えてしまったのだから。髪の毛を取るために気絶させるはずがだ。


 天野は若干思考が停止した状態で髪の毛を取るにはどうしたらいいのかを考えた。殴れば破裂してとる事はできない。なら叩いてみるかと思い実行した。


 察しの通りまた破裂した。ならチョップではどうだと思い実行。切り刻まれた。


 意味が解らない。解りたくない。天野の頭の中ではもうそれしかなかった。


 物理的にやると絶対にとる事ができないと思った天野は魔法を使う事にした。魔法は区分的には物理にはならないだろうと。そんな事を考えることは出来たのだが・・・・・・。


 天野はこの時、殴って破裂した事に大きなカルチャーショックを受けており先ほどのことを忘れていた。


 何の気なきに風撃(エアシュート)を使ってみた。結果は言うまでもない。

 

 完全に詰んだと。もうどうしようもないとも思ったがそれでも試行錯誤して手に入れようとして失敗を繰り返した結果がごらんの有様だ。


 「なぁあれどっちがモンスターだ?」

 「そりゃあ、髪の毛よこせとか言ってる方だろ」

 「だよな、お前ちょっと討伐して来いよ」

 「嫌だよ。てめーも見てたろ。殴れば破裂して魔法をすれば蒸発する。オラァまだ死にたくねぇ」


などと完全に化け物扱いし始める人が出てくる始末。というよりも今の天野を見た冒険者は十中八九天野を化け物扱いする。なぜならば。


 「カミノケエエエエエ。フシュウウウウウウウ」


 完全に人間やめてしまっているからである。


 口からは先ほど使った炎の息(ファイアブレス)の白煙が出ている。完全にドラゴンなどの描写であるが。


 『アナタガ・・・・・・ワタシノかわいいむすめタチヲ!』


 ヒノエンマを倒し始めてから一体どのくらいの時間とヒノエンマが犠牲となったのだろうか。唐突に何十にも聞こえる声が聞こえてきた。そちらのほうを見ると今までとは比べものにならないほど美しい髪を持つヒノエンマがいた。


 「あれはヒノエンマのボスだ!」


 誰かがそう叫んだ気がした。だがアマノには関係の無い話である。いや関係ないことは無い、むしろ関係がり過ぎるぐらいである。


 では何が関係ないのか。ボスであるかどうかである。ボスであろうと無かろうと今の天野が欲しているものはヒノエンマの髪の毛5本である。つまり対象がヒノエンマである限り。


 「カミノケエエエエエエエエ」


 髪の毛に植えた化け物がヒノエンマのボスへと襲い掛かる図は冒険者の中で広く語り継がれる事になる。内容はとてもひどいものだが。


 ◎


 今俺はとても満足している。一時の記憶があまり無いのだが気がついたら髪の毛が大量にあった。


 もちろん最初は驚いたむしろキモイと思った。だってそうだろう?気づいたら目の前というか腕の中に髪の毛が大量にあるんだ。想像してみろよ。


 だがすぐにそれが俺の求めていたものだとわかった。なぜならば目の前につるつるになってメソメソとないているヒノエンマが居た。


 若干かわいそうにも思えたのだが相手はモンスターだ心を鬼にしなくてはいけない。


 というわけで。


 「ありがたく貰っていくよ!」


 俺はヒノエンマにいい笑顔で言い放った。


 しばらく歩いていると変なキラキラとした石を見つけたので珍しそうだったので持ち帰る事にした。


 それを持ってからというものやたらとモンスターに襲われるようになったが猪型のモンスターもやってきたので破裂させたりしないよう慎重に慎重に倒した。


 これをもってアンたちにプレゼントしようなんて考えながら家に向かって帰るのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ