10話「アン」
遅くなりました!
パソコン周りの環境とか変えまして小説が書きやすくなったのでどんどん書いていこうかと思います
さて、アンドラスの王が俺のメイドとなった訳ですが。
「ご主人様?いかがなさいました?」
「お前は本当にそれでいいのか?」
いやね?言ったのは俺だよ?メイドになれって。
でもさ、いきなり……こう……なんていうの?従順?とでもいえばいいのかな?仮にもアンドラスという悪魔の王なわけでしょこの子。
そんな子がいきなり人間に対して敬うってどうかと思うんよ。
「いいのかと問われましても、ご主人様がメイドになれと仰ったではありませんか」
「言ったけどさ?なんかこう抵抗とか無いわけ?だって人間だよ俺」
「私共は弱肉強食の世界に生きていますので人間だとか悪魔だとか種族は関係ありません。強きものが弱きものを従える。弱きものは強きものに逆らわない。ですので、抵抗などございません」
「あ、そう」
だそうです。
本人が良いっていうのだから良いのだろう。それ以上突っ込むのは野暮というものだね。
さてさて、なんかすんなり俺のメイドになってくれたわけですが。
「お前さ名前あんの?」
名前それが重要。どう重要かといえば俺が呼ぶときに重要ただそれだけ。それ以外にない。
ただ、俺の愛読していた小説では魔物は基本名前を持たない。名づけるにはそれ相応の魔力的なものを持ってかれるらしい。
まぁ俺のステータス的に幾ら持ってかれても平気なのだけれど。
「いえ、私に名前はございません。私に名前を付けれるものがいませんでしたので」
「?どういうことだ」
「私共が弱肉強食の世界で生きていることは先ほどお伝えいたしましたよね?」
「ああ。強きものが弱きものを従え弱きものは強きものに逆らえないだよな」
「はい。従えるということはただ雇うだけではございません。存在そのものを従えるのです」
存在そのもの?……つまり生活の保護とかその他諸々のお世話もしなきゃならんと?それだけでなくそいつがそいつであるが為の照明もしてやらねばならぬと?
「おおむねその通りです」
「人の心をかってに読むんじゃあない!」
「声に出ていましたよ」
おっとこれは恥ずかしい。恥しいがなかなか聞き捨てならんな。え?なに?お世話してもらうためにメイドになれって言ったのにそのメイドを俺が世話するの?俺主人じゃないの?主人って何?なんだっけ。なんかゲシュタルト崩壊し始めた気がする。
「まあいい。じゃあ主人らしくお前に名前をくれてやろう。けど俺にネーミングセンスないからね!無難なところでアンドラスから取ってアンで」
俺がアンドラスに対して半ば強制的に名前を決めた。だって主人だし?存在そのものを従えるわけだし?いいよね!
さて、俺がアンと名付けた瞬間からなんだか光り始めた悪魔がいる。ナニコレまぶしい。
まぶしいし何かやってはいけないことをしてしまった気がする。何がとは言えないけど俺の何かがごっそり持っていかれた気がした。けどすぐに元に戻ったので気にしないでおこう。そうしよう。決して現実逃避でない。
「私の名前はアン……素晴らしい響きですご主人様」
なんか言ってる。
素晴らしい響きかね?そうかそうか。でもね?アンって名前案外そこら辺にありふれてるんだぜ?でも本人が気に入ってるみたいだしいいか。
それにしても服装まで変わってやがるな。ほとんどメイド服じゃないですか。さっきまでは黒いドレスのような……なんだ?ファッションに疎いからわかんねぇ。ドレスっぽいけどドレスじゃないみたいな?意味わかんないな。
んなこたぁどうでもいいんですよ!だって今はメイド服ですし!
「でも、なぜにメイド服だ」
「ご主人様にお仕えいたすためですよ」
だ、そうです。いや、それしか言いようがねーよ。俺に使えるためにメイド服になるって意味わからんこともないな。否定しようとしたことを速攻で否定することによりあたかも最初から分かったかのように見えるけど実際意味が解らんと言いながらそうでもなかったと思い直した結果である。
誰に言ってんだ?
話がそれまくってるな。
「さてと、これからどうしようかな」
「私はご主人様の仰せのままに」
役に立たなさそうな匂いがプンプンするぜ。yesウーマンになりそう。俺の事に対して全部yesと答えそうで怖い。
「アマノ!」
俺がアンに対して一抹の恐怖を覚えていると聞き覚えのある声が聞こえてきた。この声はフォルゲン隊長だろ。
振り向くとそこには予想通りフォルゲン隊長が走ってきていた。どうやら追い付いたようだ。もう終わったけれど。その隣には何故だかナンシー家がいる。
何故?とも思ったが騒ぎを聞きつけたとかそんなものだろ。
「アマノ大丈夫か!?アンドラスとはあったのか!?」
フォルゲン隊長が俺に問うてきた。その表情はとても真剣で汗びっしょりになりながら走ってきたのだろう。俺のことを心配してくれたのだろうか?だとしたらとても嬉しい。
「ええ、大丈夫です。それにアンなら……ほらここに居ますよ」
そういいながら隣に立っているアンを指さした。
そこでちょっと気になったことがある。服装はさっきも言ったが、むしろ服装にしか目が行ってなかったともいえるだろう。よくよく見れば髪の色や目の色も若干変わっていた。
「お前そんな髪の色や目の色してたか?」
「どうなんでしょうか、私はまだ進化してからの自分の姿を見ていませんので」
「それもそうか」
などと普通に話をしているとフォルゲン隊長の顔色がだんだんと悪くなっていく。大丈夫だろうか?少なくともフォルゲン隊長にはこれからもお世話になる予定なのだから体調を崩されでもしたら困るのだ。
「大丈夫ですか?顔色が悪いですよ?」
「……本当にその人がアンドラスなのか?」
「ええ、そうですよ」
「それを俺に認めろと?アンドラスの王である奴がお前をご主人様と慕い、さらには進化だと?ふざけているのか?俺を過労死させたいのか?なんなんだ?俺は一体どうしたらいい?」
いかんフォルゲン隊長が壊れてしまった。
「ま、まぁ一回落ち着きましょう?焦っていると正しい判断もできなくなってしまいますよ」
「俺は至って冷静だ」
「いえいえ、正直な話まったくもって冷静には見えません。なんかもうやばい感じの人ですよ。薬でもやってんじゃないかな?って位には目の焦点もあってないですしそれに……汗が尋常じゃないですよ?」
ああもうこれはやばい。何がやばいって一刻も早くフォルゲン隊長を休ませてあげなければ本当に復旧不可能なほどに精神が壊れてしまう。しかもその原因がまことに不本意ながら俺であるところがさらにやばい。俺的にはフォルゲン隊長の精神を破壊なんてマネはしていないつもりなのだが、どうにもフォルゲン隊長……というよりもこの世界の常識からして俺はそれほどの事をしているようだ。
だってほら、そこにいるナンシー家だって口を開けて(・□・;)こんな感じの顔になっている。
君たちそんな顔できたんだね。
「おや?」
フォルゲン隊長の精神がひどくなりナンシー家の人たちの顔芸を見ているとアンが何か疑問を持ったようだ。
「どったの?」
「いえ、そこの者たちから私の贄となったものと同じ匂いを感じまして」
ナンシー家の方を向き同じ匂いを感じたというアン。それも決して嬉しくない贄となったものと同じ匂い。
「え?匂いフェチなの?」
「いや、そういうこっちゃなしにですね?」
アンが既に俺に合わせてきているってかなんでそんな反応できるのこの娘。
ふざけるのもいい加減にしておこう。同じ匂いか……それはそのまま「匂い」として受け取ってもいいのかそれとも「雰囲気」と取ればいいのか、それとももっと他のとらえ方をすべきなのか。
「ふむ、あなた達デル・オルマという人物をご存じ?」
唐突にアンはナンシー家に質問をした。子供たちはそんな名前を聞いたことがないのか首をかしげて『しらなーい』と言っていた。だが、対象に母親のノアさんには心当たりがあったそうで驚いた顔をしている。その顔はまさかここでその名前が出るとは思っていなかったという顔。
つまり、それが意味するところは……
「私のお父様です」
推理するほどのものでもない答えがノアさんの口から答えられた。




