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第八十五話 盗賊退治?

 「へへっ、有り金全部置いて言って貰おうか」


 ありきたりな台詞を吐いて、盗賊頭領らしき男が近づいてくる。

 なんでこいつらはこんなに型にハマった事しか言わないんだろうか。


 「ロイ、どうする?」

 「面倒くさいな。ハル、さっさと片付けよう」

 「了解!」


 俺はイストリア帝国で使った重力魔法と行動阻害の魔法の合わせ技を頭領以外の周囲の盗賊に向けてに放つ。


 「な、なんだ!?」

 「う、動けない……」


 あっと言う間に頭領以外の盗賊は無力化され、魔法により地面に伏せられた。


 「口ほどにもないな。さて、どうする?」


 ロイが一歩、また一歩と近づきながら頭領に言葉を放つ。


 「う、動くな! 他の仲間がどうなってもいいのか!?」

 「俺たちの事か?」


 そう言って現れたのはウィル、ソニン、シャーリー、アリィの四人だった。

 みんな怪我らしい怪我もない。

 まぁ当たり前か。


 「残念ながらおまえ達の仲間は返り討ちにさせてもらった。まぁ貴様ら如きに遅れを取る俺たちではない」

 「ま、まさか……」

 「安心しろ。みんな生きている」


 ウィルの横でアリィが腰に左手をあて、右手でピースサインをしている。

  ……なんかこれがアリィの決めポーズになりそうな気がする。


 「だとさ。さて、どうする盗賊さん?」


 ロイは盗賊の頭領らしき男に向かって問いかける。すると男が地面に頭をつけた。


 「す、すまねぇ! 悪気はなかったんだ! 許してくれぇ!」

 「悪気がなくて盗賊が出来るのか?」

 「そ、それは……」


 必死に謝る男に対して、ロイは冷たく言い返す


 「まぁロイ! 話くらい聞いてやろう! んで、じゃぁなんで俺たちを襲ったんだ?」


 男は顔を上げ、すがるように俺を見て話始めた。


 「じ、実は俺たちは盗賊だけど盗賊じゃないんです」

 「? どういう事だ?」


 男の支離滅裂な話にロイがすかさず聞き返す。


 「俺たちは商人から奪ったお金を貧しい人や子どもに分け与えているのです。俺は昔冒険者をしていてある高位の魔法使いの方の依頼を受け、ダンジョンに入りました。ダンジョンは順調に進みましたがある階で骸骨の魔物に会い、魔法使いの方がそれに驚き失神してしまい、さらに骸骨の魔物が溢れるように出現し、死にそうになりました」


 ん?

 なんかどっかで聞いた話のような……。


 「俺は死を覚悟しました。でも、その時助けてくれたのが盗賊と戦士の二人だったのです!」


 ……これはまさか!?


「二人とも小さいのにとても強く、あっと言う間に骸骨の魔物を退け、出口まで護衛してくれました。さらにお礼も受け取らず……。その時誓ったのです! 人助けをしようと! 最初は兵士になってみんなを救おうと思いましたが実力が足りず……それで盗賊になって金持ちから金品を奪い、せめて貧しい人達を救おうと。それに、盗賊をしていればあの時の盗賊の方に会えるかと思ったのです。いつか恩返しをする為に……すいませんでした」


 そう言って男は再度頭を下げた。

 これは……間違いない。


 「ロ、ロイ!?」

 「あ、あぁ」


 俺とロイは戸惑いを隠せなかった。


 「も、もしかして、その盗賊って黒い布巻いてなかったですか?」

 「そうです! おっしゃる通りで! まさか……あの方をご存知なのですか!?」


 男は俺に詰め寄り顔を近づけて聞いてくる。

 いや、そんな近寄らなくても聞こえるから。


 「それは俺たちだ」

 「へっ?」


 間の抜けた男の声が出る。


 「ハル、見せてやれ」

 「お、おう!」


 俺はあの時助けた魔法を無詠唱で放った。

 もちろん、人のいない開けた場所に向かって。


 「!? まさか……そんな……」


 男は驚愕の顔を浮かべる。

 そりゃそうだろう。

 まさかこんな形で再会するとは。

 俺だってまさかあの時の自分に憧れて盗賊になった人がいて会うとは思ってない。

 まさか、これも俺がこの時代に送られた影響……?

 いや、あの黒い布はロイが持ってきたやつだ。

 そうだ、俺のせいじゃない。

 うん。


 「元はと言えばハルがちゃんと用意して来なかったからだぞ?」


 ぎくっ。

 確かに。

 てか、ロイよ、どうやって心を読んでいるのですか?


 「顔を見れば分かる」


 あっ、はい。

 なら顔を布で覆うか。

 いや、またそんな事して真似する人が出たら……。


 「さてと、という事であの時の借りを返してもらおう」

 「は、はい!」


 男は怯え、目を閉じながら俯く。


 「……おまえ達にシーリスト街道の治安維持を任せる」

 「へっ?」


 再び、男の間の抜けた声が出る。


 「おまえとおまえの仲間でシーリスト街道の治安維持をしろ。報酬も出すように言っておく」

 「あ、あの〜……あなたたちはどう言った方で……?」

 「俺はアースハイト王国の第二王子だ。そしてあっちが、シーレント王国の第二王女のアリアだ」

 「えぇぇぇぇ!!!」


 男の絶叫する声が響く。

 そりゃ驚くよな普通。

 俺だって最初ドッキリかと思ったし。

 そして、向こうではアリィが決めポーズをして立っている。

 アリィよ、もう何も言わないよ。


 「ご、ご無礼申し訳ありません!」


 男はこれでもかというくらい頭を地面につけ謝る。


 「気にするな。では、父上には俺から言っておくから頼むぞ」

 「かしこまりました! 謹んでお受けいたします」

 「して、名前は?」

 「バルトと申します」

 「では、バルト。よろしく頼むぞ?」

 「はい、命にかえても! 二度にご恩を返させて頂きます」


 そんなこんなで俺たちは盗賊を改心させた。


 「ロイ、良かったのか? あんな約束して?」

 「ん? あぁ。アースハイト王国とシーレント王国としてもなかなかここまでは本格的な見廻りは手が回らなくてな。アースハイト王国からは少し遠いしシーレント王国は元々商業に力を入れているからな。兵士は少ない。だから、商人は自分達で冒険者を雇ったりしていたんだがな。まぁ冒険者も良いやつばっかではなくて盗賊とグルになる奴もいるからな。父さん達も喜ぶだろう」

 「そうか」

 「後でケータイ貸してくれよ?」

 「了解!」


 かくして、シーリスト街道の安全が向上し、一人の男の人生が正しい方へ向かった。

 それでよしとしておこう。

 さぁ、もうすぐコルト都市国家だ!


今回の話、少しはみなさんの予想を裏切れたでしょうか?

次回よりコルト都市国家編が始まります!

これからもエターナル・ログをよろしくお願いしますm(_ _)m

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