第六話 ダンジョン挑戦 その1
ダンジョンに向かう途中でロイの分の水筒も用意してたのを渡したら珍しく、
「確かに水分補給は一理ある。ありがとう」
と普通に感謝された。
俺は嵐でも来るかと身構える程、驚いた。
そんなやりとりがあって今はダンジョンの入り口に着いている。
着いているが入っていない。
それは何故か?
二人の門番がいるからだ。
山の中腹に出来ている洞窟がダンジョンの入り口みたいだけど入り口の左右に甲冑を纏い完全武装した兵士がいて入り口で見張りをしたり、ダンジョンに入る手続きをしているみたいだ。
「ロイ、どうするんだ?」
「強硬突破する」
……えっ?
腕試しの為に人殺しするの?
さすがにそれは出来ない。
「何を考えている? あの門番を殺すワケじゃないぞ? 門番はダンジョンから出てくるかもしれない魔物の見張りだからな」
違うの?
まぁ、良かった。
でも、あの二人の門番がいる限り入る事は難しい。
「じゃぁどうするんだよ?」
「そこでハルの出番だ」
俺?
俺に何をさせるんだ?
……まさか盗賊を捕まえたとか言って俺を身代わりにして入る気か?
「だから何を考えている? ハルの魔法で俺たちの身体を強化し、無詠唱で魔法を使って木でも少し燃やして門番の目をそちらに引きつけている間に突破する」
おぉ!
それはいい考えだ!
……ん?
でも待てよ?
「じゃぁ変装する意味なかったんじゃないか?」
「だから、少しは考えろ。ダンジョンの中は俺たちだけじゃないんだぞ?」
あぁ、確かに。
ロイって同じ歳なのに妙に頭が良いな。
そこは素直に認めよう。
うん。
ロイ君偉い!
「分かった。じゃぁ行くか?」
そう言って俺はロイと自分に身体強化の魔法をかける。
そして……ドカッ!
無詠唱で魔法を放つと、門番から少し横に離れたところにある木に命中し、燃え出した。
「なんだ!? 木が急に燃え出したぞ!?」
「魔物か!?」
二人の門番は急に木が燃えたのに驚き、そちらに気が行った。
その瞬間に俺たちは身体強化された身体で走った。
走った、そして走った!
そしてこけた。
「いててて」
「全く、何してるんだ?」
「いや、だってここ光が当たりにくくてジメジメしてるからコケがあってコケたんだよ」
「……つまらん事言ってないで行くぞ」
シャレで言ったんじゃないんだけど……。
振り返ると門番達の姿はなかった。
おそらくまだ燃えた木の方の様子を見ているのだろう。
そうして、俺たちは門番に見つかる事なく無事にダンジョンに内部に突入する事ができた。