第四話 腕試しします
10歳になった。
あれからロイと一緒に修行している。
ロイはいろいろ忙しいとか行って3日に1日くらいのペースで来ている。
遠回しに俺が暇人みたいな言い方されるけど……。
二年間の間に俺たちは修行以外にもいろいろと友好を深めた。
時には言い合い、ケンカし、時には些細なことで笑い合い……俺にしたらこんな世間では当たり前の事がなかったから、毎日が新鮮で楽しくあっと言う間に月日が流れた。
ロイには恥ずかしくて直接言えないけど、親友だと思っている。
……絶対からかわれるから言わないけど。
まぁ、ロイも毎日来る訳ではないので、俺はロイが来ない日は午前中に狩り、午後からオリジナル魔法の開発をしている。
ちなみに治癒魔法と補助魔法に関しては一通りは出来るようになった。
何故か本能的に魔法の使い方が分かっている。
俺は天才か?
それとも髪の色が違うように化け物なのだろうか?
……いや、前者である事を願いたい。
それに、俺は体とかは普通の人たちと変わらないから。
オリジナル魔法に関しては最初、派手な魔法とか思って風魔法で竜巻を作りそこに火魔法を合わせた『地獄の竜巻』と言ったちょっと恥ずかしい名前の魔法を開発した。
これは、使ってみてたらまさに名前の通り木々が燃え地獄絵図と化した。
すぐさま水魔法を使い、鎮火させたけどあれはトラウマになった。
って事で派手な魔法は範囲が広く制御が難しい為、いろいろ試行錯誤して実用的な魔法を開発した。
その中の一つは弓矢からヒントを得て、魔法で弓矢と同じように出来ないかと考えた。
その結果、土魔法で矢の先の部分を作り風魔法でその矢先を高速に飛ばす。
これは実用的で狩りをする時に便利だった。
弓矢と同じで標的が燃えたり破裂したりする事がないから狩りをする時にはもってこいの魔法だ。
嬉しくて名前を考えようとロイに相談したら、
「二属性使ってる時点で他に誰も使えないし無詠唱で出来るなら詠唱で名前使わないし名前いらないだろ」
って言われてしまった。
確かにそうだ。
でも、自分の作った魔法に名前をつけ、後世に語り継がれる……そんなロマンがあってもいいはずだ。
ロイはこういうところに夢がない。
きっと現実的な思考の持ち主なんだな。
でも、あれは一気にテンションが下がった。
まぁそうは言うものの、人に紹介するには名前がいるしやはり今後ゆっくり考える必要があるだろう。
そして、他の魔法については機会が来たら使う事になるだろうな。
まぁ、そんなこんなで二年間修行した結果さらに常識外れな存在になってきた。
ロイも二年間で無詠唱を習得し、魔力量も増えた。
魔力量が増えるのは何か理由があるのかもしれないし、 このあたりは今後研究する価値がある。
もし、世紀の大発見となれば教授にでもなって家庭を養える。
そう言えば、俺は魔法ではロイに勝てるけど、剣術ではロイに勝てない。
明らかに太刀筋が違うし何か流れるようなさばきだった。俺が力任せに斬りかかっても受け流されカウンターを入れられ負ける。
身体能力高いはずなのに……。
「ハルはもぅちょっと頭使って考えたり、技術磨いた方がいいぞ」
ロイに屈辱的な事を言われてしまった。
遠回しに脳筋と言われているようだ。
俺はバカじゃなくて感覚で出来る天才アーティストだと自分に言い聞かせた。
それに教えてくれる人いないからね。
「ロイこそ誰かに習ってるだろ? 卑怯だぞ」
って言ったら、
「無詠唱を開発したり複数の属性の魔法を使ったり常識外れな存在のやつに言われたくない」
と言われてしまった。
ロイは最近俺に遠慮がない。
俺だって傷つく。
そんなこんなで二人で修行してきた結果、二人ともだいぶ力がついてきたと思う。
ちなみに今日も修行していて今休憩中だ。
「あ〜どっかで腕試ししたくないか?ロイ」
「ならダンジョンにでも行ってみるか?」
ダンジョン!?
そんなものがあるのか!
初めて知った。
「何だ? 知らなかったのか?」
うっ、図星です。
「全く、能力が常識外れなら頭も常識外れだな」
こいつはー!!!
でもダンジョンが気になるしここは耐えよう。
「ダンジョンってどこにあるんだよ?」
「この山の裏だ」
……マジか!?
そんな近くにあったのか。
五年もこの山で修行してて気づかなかった自分に少しショックを受けた。
「おまえの村によく商人とか冒険者が寄るだろ? それはダンジョンに挑んだりダンジョンから持ち帰ったアイテムの取り引き為だ。ダンジョンから時々魔物が出てくる為、危険で街が出来ないからな」
言われて見れば村にはよく人がきた気がする……。
よし、少しは社会勉強もしよう。
「じゃぁ今度ダンジョン行くか!」
「まぁ今の俺たちなら大丈夫だろうし……行くか」
「よし! 決定! でも夕方には帰らないとな」
夜に帰らないとじぃちゃんとばぁちゃんが心配するし……。
子供の事情ってやつだ。
これに関してはロイも文句を言わなかった。
なんだかんだロイも子供だからな。
こうして俺たちは遠足気分な感じでダンジョンで腕試しする事になった。