第四十五話 大人になります
ルイーズさんが旅立ってから月日が流れた。
俺は今日15歳の誕生日を迎える。
この世界で15歳と言えば大人とみなされる。
世間から子供ではなく大人と見られるようになる。
お酒が飲めるようになるのも、結婚が出来るようになるのも15歳からだ。
まぁもっとも俺の誕生日と言ってもじぃちゃんとばぁちゃんが、俺を拾ってくれた日だから厳密には違うだろう。
ちなみにロイとアリィとシャーリーは俺より先に15歳の誕生日を迎えた。
三人の誕生日はそりゃ盛大だった。
ロイとアリィは国を挙げて祝いが行われ、一週間くらい城下町では一種の祭りのように賑やかだった。
シャーリーの誕生日もマーシャル家からお兄さんや商会の人たち、シーレント王国からも遣いが来て、ロイの両親やアレク兄さん、セフィ姉さん(アレクシス王子とかセフィリア姫とか呼んでたら二人にこう言うように言われた)、城の人や俺とロイとアリィ達で盛大に祝った。
俺は三人の誕生日に魔法の師匠として、『エターナル・ログ』の知識から、錬金術と知識を使って魔力増幅と魔法耐性が上がる効果を付与したブレスレットをプレゼントした。
ちなみに色は髪の色に合わせてある。
まぁ、これがまた騒ぎになって
「魔法宝具も作れるのか!?」
ってロイ達にびっくりされてロイのお父さんに世界のバランスが狂うから何か作る時は相談して欲しいと言われた。
まぁ、俺の教え子はすでに一般レベルを超えてるからそれくらいでもうどうこう言えないからいいらしい。
俺が魔法宝具を作れるのはまたトップシークレットになった。
ちなみに 魔法宝具はダンジョンから発見されるものが一般的らしい。
みんなは誕生パーティーの時、お酒を飲んでどんちゃん騒ぎしてたけど、俺だけは飲まさせてもらえなかった。
まぁ酔ってる人を見るのも楽しかったけど。
アリィとシャーリーは酔っぱらうと甘えん坊になる。
アリィはロイにベタベタだったし、シャーリーは俺の目を見つめて『……あ〜んして?』とか言ってくるし…。
俺はどんだけ心の中で抱きしめたい衝動を抑えるのに格闘した事か……。
あのまま抱きしめて告れば良かったか?
いやいや、やっぱりここまで来たら酔ってない時の方がいいだろう。
だいたいその次の日から気まずかいからか、しばらく避けられるけど……。
ロイは普段無口なのに飲むとよく喋る。
あれは絡み酒だ。
アリィと仲良くイチャついてるかと思いきや『ハル、ちゃんと聞いてるか!? 俺はあの時な……』何度同じ話を聞かされた事か。
三人とも酔い潰れた後、解毒魔法で二日酔いにならないように介抱してあげる役目だったけど今日でそれも終わりだ。
ちなみにシャーリーとの仲は未だ進展がない。
なかなか機会に恵まれないのか俺がいけないのか……。
今日はロイとシャーリーとアリィが俺の誕生日を祝ってくれる事になっている。
準備するから夕方までどっか行っててと言われたので街に出た。
もちろん変装して。
お金は闘技大会で賞金も出たからそれなりにある。
「さて、どこ行こうかな?」
とりあえず大人になったし、ちょっとカッコつけてみるか。
そう思って俺はカフェに入り注文する。
「コーヒーブラックで」
そう。
コーヒーブラックは渋いカッコイイ男の代名詞だと思っている。
俺はオープンテラスで一人コーヒーを飲む。
ズズッ……。
「にがっ!」
ヤバイ!
思わず口に出てしまった!
とりあえず俺は平静を装って外を眺めた。
「なぁなぁ、知ってるか? イストニア帝国が戦争の準備してるって」
「あれ本当の話なのか? 噂だと思ってたけど……」
「なんかどうやら本当に怪しいって話だぜ?」
道を歩く街人から何やら怪しい話が聞こえた。
戦争か……人間同士争って何になるんだろう。
まぁでも、噂話レベルな感じだから噂ですんでくれたらいいんだけど……。
ズズッ……。
「にがっ!」
俺はこっそり砂糖とミルクをもらいに行った。




