第三話 友達が出来ました
詠唱が聞こえた方向を見ると、同じくらいの歳の男の子がいた。
全く狩りをするなら獲物を燃やすなよ……。
なんて思っていたら、向こうも俺に気づいたみたいでこっちに近づいてきた。
近づいてくる姿をよくよく見ると何か違和感を感じる。
ふむ、顔は濃くなくどちらかというと薄くてパーツが整っているし言うなればイケメンだろう。
顔は問題なし、身長は俺と一緒くらいだし体形も鍛えられてるし細マッチョって言った感じで特に変わってない。
なんだろう……。
あっ!
あいつの髪の色がオレンジなんだ!
そうかそうか!
きっと俺と一緒で、髪の色でみんなに馴染めないからここで修行とか一人遊びしてるんだな!
ふふっ、ここはひとつ先輩として相談に乗ってやろう。
「やぁ! こんなところに一人とは君も友達がいないのかい?」
「えっ? そんな事はないけど……」
しまった!
こいつは友達がいるのか!
これは痛恨のミスだ!
例えるなら世間で言うまさに、
『かっこいいお子さんですね』
『いや、うちの子は女の子ですけど』
状態だろう。
口は災いの元……。
そして、気づけば相手は怪訝そうな顔で俺を見ている。
そんな目で俺を見ないでくれ!
俺はもう十分にダメージを受けている!
てか、何でこいつには友達がいて俺にはいないんだ!?
何か自分で自爆してさらに惨めになってきた。
「てか、誰だ?」
「えっ? あっ、俺はハル! 君は?」
「ロー……ロイだ。こんなところで何してるんだ?危ないぞ?」
「えっ、いや、あっ、ちょっと狩りに……」
いかんいかん!
いつの間に立場が逆転している!
こんなハズでは……。
「狩りって……。さっきも詠唱もせず武器も構えないであんなんじゃ無理だろ」
ロイって子は呆れ顔で俺を見ている。
きたきた!
ここで立場を逆転してやろう。
ちょっと驚くかもしれないけどイイよな。
「ふふふっ……」
「なんだ? 気持ち悪い」
おい!
さっきから俺に精神的ダメージを与えやがって!
見てろよ!
「ロイ君。君は何か勘違いしているみたいだけど俺は実はスゴイんだぞ?」
「はぁ?」
「イイから見てろ……よっ!」
……ドカッ
無詠唱で何の前触れも無く発動した魔法は近くの木に当たって燃えた。
ちなみさっきロイ君が使った魔法の強化版だ。
「なっ!?」
「ちなみにこんな事も出来る」
……ザーッ
俺はまた無詠唱で水魔法を唱えて燃え盛る木を鎮火させた。
「まぁこんな感じ」
「し、信じられない……」
ふふふっ
やっと立場が戻ってきたな。
「……ハルと言ったか? それはおまえが特殊な人間だから出来るのか?」
特殊な人間?
あぁ、髪の色か。
でも、こいつ今までよく髪の色見て動揺しなかったな。
「んー……ここだけの話、二種の属性を使ったのは特殊だけど無詠唱は出来るんじゃないかな?」
「本当か!? なら、教えてくれ!」
おっ!
何か食い付いてきたな!
……よし!
「よし! 俺を師匠と……」
「帰る」
「冗談冗談! 教えてやるよ!」
何でこいつにペース握られるんだ?
「ふふっ、なかなか面白い奴だな。じゃぁよろしく頼む。俺の事はロイって呼んでくれ」
「えっ、あぁ、じゃぁ俺の事はハルって呼んでくれ」
なんだ?
この展開は?
もしかしてこれは友達って奴か!?
「えーっと、あの、ロイ? おまえは俺の髪の色見ても大丈夫なのか?」
「あぁ。俺も髪の色ではそこそこ苦労したからな」
そうかそうか!
やっぱり髪で苦労してる仲間なんだな!
これは親友になれそうだ!
「そうか! じゃぁ苦労してる者同士よろしくな!」
「あぁ」
おぉ!
意外と素直なんじゃないか!
やっぱり人間よくよく話さないも分からないものだな。
「でも友達がいなくて一人で修行してたらこんな凄くなるんだな」
グサッ……。
いちいちトゲのある言い方しやがって……。
口元が笑ってるしあいつワザとだな。
前言撤回。
意外とイイ性格してやがる……。
こうしてなんだかんだで初めて俺に友達が出来た。