第三十一話 葬式〜闘技大会へ
葬式当日。
ロイのお父さんは昨日みたいな事はなく威厳のある態度で場を仕切った。
俺はじぃちゃんとばぁちゃんの喪主という事になっているけど、実質はロイのお父さんの命令を受けた執事達がやってくれている。
マーシャル家はシャーリーのお兄さんが喪主を務めている。
お兄さんは仕事上、慣れているのか表面上はそつなくこなしているようだった。
シャーリーは隣で泣いていた。
俺は久々に見るじぃちゃんとばぁちゃんの遺体を前にしても死んだという現実がまだ、なんとなく実感ができなくて周りの風景をぼんやりとまるで、他人事のように眺めていた。
葬儀はしめやかに行われた。
みんなが順に遺体に祈りを捧げていく。
俺はそんな光景を眺めながら今一度記憶を辿る。
血のつながりはないとは言え育ててくれたのはじぃちゃんとばぁちゃんだ。
これは忘れてはいけない。
じぃちゃんとばぁちゃんがいなかったら今の俺はないだろう。
だから、精一杯気持ちを込めて見送った。
葬式が終わって一週間。
葬式がひと段落してシーレント王国の王族とマーシャル商会の人は帰っていった。
シャーリーとアリアを除いて。
今日から訓練を再開しようとしたら
「ハル君! 私にも魔法教えてよ! シャーリーだけズルイ!」
「アリア様……私だけズルイって……」
「だ・か・ら! シャーリー! アリア様じゃなくてアリィって呼んでって言ってるでしょ? ハル君もアリィって呼んでね!」
「で、でも……」
「いいの! それにここに残れた貸しがあるでしょ? これでチャラ! 私だってロイ君みたいに友達が欲しいの! それに小さい時はアリィって呼んでたでしょ?」
「……わかりました」
「敬語もなし!」
「は、はい!」
俺はその一連のやりとりに断わっても無駄だと悟り教える事にした。
人間誰にでも不可能な事はある。
それと強制的にアリィって呼ぶ事になった。
「でも、ロイ……女の子っていろんな顔があるよな?」
「確かに……。そこはハルと同意見だな」
「そこ二人! なんか言った!?」
「なんでもない!」
「なにもありません!」
俺はロイとの友情を再確認した。
そんなこんなでしばらくは魔法主体の訓練を行った。
アリィは元々才能があるのか器用なのか飲み込みが早かった。
無詠唱も早くにマスターしたし。
魔力は二人に及ばないけど、魔法の応用とかは上手だった。
イメージ力が強いのか。
この前なんて、
「見て見て!」
なんて言うから何事かと思ったら、
「水龍よ!」
……うん。
それは騒ぎになるからやめようね。
でも、発想とイメージ力はスゴイ。
ロイとシャーリーもアリィに負けまいと頑張ってるし相乗効果で良い事だろう。
魔法の訓練から三ヶ月。
アリィの訓練もひと段落した事もあり、闘技大会も近い事から剣術の訓練を始める事にした。
この国の闘技大会は基本的に魔法は禁止らしい。
基本的にって事で多少は使ってもいいらしいけど。
その線引きはその時々によって判断されるらしい。
なんてアバウトな。
まぁだいたいの基準として直接的な魔法による攻撃はダメらしい。
それとこの闘技大会に使用できる武器は剣のみで剣術のナンバー1を決める大会となっている。
ちなみに各国にいろんな闘技大会があるらしい。
聞いたところによると魔法のみの闘技大会。
素手で戦う闘技大会もあるらしい。
ちなみに、俺とロイはロイのお父さんに言って闘技大会へエントリーをすませてある。
「ロイ、久しぶりに模擬戦しないか? 魔法なしで」




