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第三十話 意外な展開

 葬式の前日。

 夕方にシーレント王国王族とマーシャル家がアースハイト王国に到着した。

 長旅という事もあって簡単な会食で顔合わせ程度だった。

 俺はロイのお父さんにドラゴンを倒した英雄と紹介され、みんなからまたしてもお礼を言われ、あの台詞を連発した。

 ロイのお父さんはニヤリと笑っていたところを見ると確信犯だろう。

 紹介の仕方も大げさだった。

 さすがロイの父親だ。

 俺はもう国王というよりロイの父親という認識でさらにロイと同様、油断できない相手になっている。


 ちなみにシーレント王国国王は青髪でちょっとふくよかな感じの人の良さそうな人だった。

 名前はシードル=アラマン=シーレント。

 王妃は赤髪のキレイな感じの人だった。

 でも、何か少し活発そうな感じだ。

 この人はロイのお父さんの妹らしい。

 名前はフローリア=アラマン=シーレント。

 そして青色の長い髪で背はシャーリーより少し高いくらいで可愛いかキレイかで言ったらキレイな女の子。

 シーレント王国第二王女。

 アリア=アラマン=シーレント。

 この子がロイの許嫁らしい。

 見た目お淑やかそうな印象だ。

 そして、マーシャル家の長男で跡取り。

 リチャード=マーシャル。

 青髪で見た目は優しい優男のような印象だ。

 でも、話を聞いていると商売の方ではかなりのやり手らしい。

 シャーリーの両親も若いながらに才能を認め、実質業務を任せていたらしい。

 俺はシャーリーのお兄さんと話す機会がなかったけど、一瞬目があった時に微笑みを浮かべていた。

 でも、なんだろう?

 一瞬背筋に寒気が……。


 そんな会食も終わり今は中庭で一人涼んでいる。

 すると、一人が近づいてくる気配がした。


 「やぁ! こんばんは」


 シャーリーのお兄さん、リチャード=マーシャルだった。


 「こんばんはです。どうしたんですか?」


 俺は突然の訪問にびっくりしたけどなんとなく想像はついた。


 「ちょっと話でも……って思ってね」


 そう言ってシャーリーのお兄さんは果実のジュースの入ったビンを俺に差し出した。


 「ありがとうございます」


 俺は右手を出し、ビンを受け取りお礼を言う。


 「シャーリーを助けてもらってありがとう」


 お礼の言葉を言ってシャーリーのお兄さんは頭を下げる。

 その言葉に対し、俺は今までに何度言ったか覚えていない程口にした言葉を言う。


 「いや、大した事はしてません。それにシャーリーの助けもあっての事ですし、それにそのご両親には……間に合いませんでした」

 「いや、あの絶望の状況でシャーリーだけでも助かったのは奇跡だよ。それにあの子は小さい時からおっちょこちょいなところがあってね。僕はいつも気にかけていた。髪の色も違うしイジメられたりしないかとかどっかの変な男に絡まれないかとかお金目当てで寄って来ないかとか……ね。まぁ過保護と言われてもね」


 そう言ってお兄さんは空を見上げる。

 過保護って自覚がありながらもシャーリーが心配だったようだ。

 俺はそんなお兄さんの横顔を見ている。

 何か話してみて聞いてた話とちょっと印象が違うかな?


 「今日シャーリーが家に帰りたくないって言ってきたんだ」


 シャーリーは優柔不断そうだけど芯が通っている。

 だから、いざという時はちゃんと自分の主張はするし意見も言う。

 だから、今回も早々にお兄さんに話したんだろう。


 「最初はただ単に僕への反発かなって思ったんだけどいろいろ違うみたいでね。シャーリーはシャーリーでいろいろ考えたらしい。魔法も上手くなって今じゃ僕より上だ。誰に習ったかって聞いたら君だったわけさ」


まぁ確か無詠唱をマスターしたからには魔力の底上げもあるしそこらへん、いや、宮廷魔術師以上の実力だろう。

 ある意味俺はそれで良かったのか責任を感じるけど。


 「それでシャーリーからいろいろ君の話を聞いていてどんな人だろうと思って。確かに君はドラゴンを倒す圧倒的な力を持っているみたいだ。でも、君はその力をどぅ使うつもりだい?」


 お兄さんに聞かれて俺は自分に言い聞かせるかのように決意していた事を口にする。


 「俺はこの力は周りから見れば脅威だと思います。だから、使い方を誤ってはいけないし正しい使い方をしないといけないと思います。あのドラゴンのよぅにみんなの脅威になる敵が現れた時にみんなを守るみたいな……俺は大切な人を守る為とみんなの為になる事にだけ力を使うつもりです」


 お兄さんは黙って俺の言葉を聞いてくれた。


 「そうか……ハル君もハル君なりに悩んで自分の答えを見つけたみたいだね。確かにシャーリーが言ってたみたいに悪い人じゃなさそうだ。まぁ僕みたいな人間が力になれるか分からないけどシャーリーを助けてもらった恩もあるしいつでも力になるよ」


 そう言ってお兄さんは俺の方へ向き直った。


 「それとシャーリーがね……」

 「お兄さん!!!!!」


 振り返るとシャーリーが怒った顔してこっちに向かって来ていた。

 その後ろからロイとロイの許嫁、ロイのお父さんが続いてきている。


 「お兄さん!!! 何話してたの!?」

 「いや、ただ単に世間話を……ね? ハル君?」


 えっ!?

 そこで俺にふるの!?


 「そ、そうなんだ。お兄さんにいろいろシーレント王国の話を聞いてたんだよ」

 「本当に!? ハル君ウソついてない!?」


 俺は目が泳ぐのを必死に誤魔化そうとロイの方を向いた。


 「ロ、ロイはなんでいるんだ? そして許嫁さんとお父さんも?」


 俺は必死に話を逸らそうと話題をかえた。


 「あら、ハル君ってば話逸らそうしてるよ? シャーリー?」


 思わぬ伏兵がいた!

 ロイの許嫁は見た目に反していい性格みたいだ。


 「ハル……すまない……俺は無力だ」


 何かロイがいつもと違う!?

 ヤバイ!

 これは非常にマズイ!

 ……こうなれば!


 「いやいや! 純粋に国王様がこんなところに来るなんて疑問に思いますよ! ね? お兄さん?」


 必殺振り返し!

 そして、一人で対応できない時は複数人で!

 戦闘の基本だ。


 「そ、そうだよね! 僕たちみたいに世間話って感じじゃなさそうだし」


 お兄さんナイス!

 何かお兄さんとは気が合いそうな気がしてきた。


 「あ〜、実はシャーリー君から我がアースハイト家にしばらくお世話になりたいと言って来てな。まぁアリア君もしばらくいるって話になったしどうだろうと思ってリチャード君の意見を聞こうと思ってな」


 えっ!?

 そんな根回しまで!?


 「いやいや国王様! もしシャーリーをアースハイト国に滞在させるにしても我がマーシャル家で用意します! そんな手を煩わすなんて……」


 ロイのお父さんはこっちに近づいてきた。


 「実は女性陣から有無を言わさない状況なのだ。みなシャーリー君を可愛がっててな。特にアリア君は同じ年の友達がいて欲しいみたいだし……ここはひとつ頼む」


 ……なんて弱いんだ、国王様。

 まぁでも女性は強い。

 シャーリーも怒るとあんな感じだとしたらこの姿は将来の俺かもしれない。

 そう思うと妙に親近感が沸く。

 それはシャーリーのお兄さんも一緒みたいだ。


 「そういう事ならお願いします! 仕送りはちゃんとしますので! それと僕に出来る事があったら言ってください」


 俺とロイのお父さんとシャーリーのお兄さんは目を合わせて頷いた。


  三人の中に変な絆が生まれた瞬間だった。

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