間話 恋心
「ソニンちゃんも料理するんだ?」
「も、もちろんよ! 女の子なんだから当たり前でしょ!!」
「そっか! でも、ちゃんと料理作れるのってポイント高いよね!」
「そ、そう?」
何でしょう?
このラートって人と一緒にいるとペースが乱されます。
私ってこんなキャラじゃなかったはず。
ポイント高いとか上から目線で言われて黙ってられないはずなのに。
きっとこれがハル相手なら怒れるんでしょうけど、この人相手だと……何なんでしょうか?
なんだか私が私じゃないみたい。
いや、きっと私は気付いている。
これが『恋』ってやつなのかもしれない。
最初は会ったばかりの同じ年の男に『ちゃん』付けでいきなり馴れ馴れしい呼んでばれてこの人の第一印象は良くなかったのに……。
それでも、何かと遠慮なく私に話しかけてきて……思えば今まで同年代の人で皇族の私にこんな遠慮なく気さくに話しかけてくる人なんていなかった。
特別扱いじゃないけど、普通の人と同じ扱いをしてくれる。
まぁハルは別として。
ハルはハルだからね。ウィルお兄様と違って出来の悪い兄みたいですわ。能力は別ですけど。あれは常識外れもいいとこですわ。それにあの人はシャーリーお姉様がいるしね。
でも、ウィルお兄様も恋に関しては少し鈍感ですわね。あのルルって子はお兄様の事好きなんでしょうけど、お兄様は全然気付いていないと思いますし。
もし、万が一お兄様とルルが結婚なんてなったら義理の姉が私より年下!?
ありえないありえない!
でも、ルルは巫女だし世間的には地位が高い……うーん……。
っと、それよりもラートよ。
あの人、いつもチャラい感じなのにいざとなったら真剣な顔をするし、私の事守ってくれたし。
戦闘の時に見せる真剣な表情と助けてくれた時に見せた少年のような笑顔……なんだか見てると胸が苦くなる。
「ソニンちゃん、肉焦げそうだよ?」
「あっ、いや、違いますわ! これはちょっと焦がして風味を!!」
「そうなんだ!」
いけないいけない、集中しないと。
せっかくだから美味しい料理食べて欲しいし。
でも、恋したいなんて思ってたけど、両親が亡くなったばっかりなのに本当に私、恋なんてしていいのでしょうか?
したいしたいと思っていたけど……。
「ソニンちゃん、料理上手だね!」
「あ、当たり前ですわ! レディですから!」
これから先どうなるか分からないけど、せめてラートと一緒にいられるこのダンジョンの中だけはこの笑顔を見ていたいな。
……お父様、お母様いいよね?
 




