第二百三話 ルード街道進みます その2
「そう言えばルルって両親はどこに住んでるんだ?」
俺たちはサラージ王国の手前にあるアドルノ工房のあるダンノームへ向かって旅を進めている。
その道のりは長く馬車で二週間はかかかる。
というのもラース教皇国の国土が東西に広く、ラース教皇を抜けるのに時間がかかる為だ。
もちろん、道中には街があるけど俺たちは今回ゴルゾーラ教の動きが活発になってきている為に最小限の寄り道にしようとしている。
ラース教皇国はラース教の教えに従っている為、どの街もコルト都市国家やシーレント王国のような派手さはなく、商店も必要最低限生活に必要な物を扱っているところばかりだ。
なので、最初寄り道した街もロイが、ルルとみんなの親睦を深めようとして宴会をしようとしたけど、お酒を飲もうにもお酒自体がなかった。
ラース教の総本山のある街はラース教の総本山であるけど、その分いろんな人たちが寄る為に一箇所だけ酒場の経営が許されていたけど、他の街には基本的にないらしい。
それを聞いてロイはショックを隠し切れなかったようだけど。
まぁそんな事で宴会はお預けになり、俺たちはいろんな話をしている。
もちろん俺の事も話した。
「私の両親は私が生まれてすぐに疫病にかかって亡くなったようです。私の生まれた場所はコルト都市国家とラース教皇国の間の小さな村だったようですが、記憶には残ってなくて物心ついた時はコルト都市国家の孤児院でした。その後、ラース教の司祭様たちが私の髪の色の噂を聞いてラース教皇国の大司教様に引き取られました」
そうだったのか。
光の精霊に加護を受けてても幸せな人生を歩んできている訳ではない。
そして、あの大司教はルルの育ての親になるのか。
ルルを一緒に連れて行くのは悪かったのかもしれない。
「ルル……ゴメン」
「いえいえ、ハル様も自分の事話してくださいましたし。それに私は幸せですよ?」
そう言ってルルは微笑む。
本当に強い子だ。
まだ小さいのに。
俺がルルくらいの時って何してただろう?
……ロイといろいろ悪ふざけしてたかもしれない。
「ルル、様づけとか敬語はいいぞ?」
「えっ?」
唐突にロイが口を挟む。
確かに敬語とか様づけとかこれから一緒に過ごす中で年しただからと言って必要ないだろう。
……ソニンなんて初めから呼び捨てされてるし。
「そうだよ? 遠慮しなくていいから」
「ルルちゃん、私たち仲間だからね?」
「まぁ私はお姉さんですから心が寛容なのです」
女性陣から次々に賛同の声が上がる。
ソニンはなんか違う気がするけど……。
「そうだ、ルル。いざという時はそんな事言ってられないしその為には普段からだ」
「でもーー」
「気にしなくていいから! じゃないと俺たちも巫女様って呼ばないといけなくなるから!」
ウィルの言葉に俺も続く。
「じゃ、じゃあ……ウィ、ウィル君、ハル君……」
ルルは遠慮がちに、恥ずかしがりながら呟く。
なんかもの凄く可愛いな。
……ダメだダメだ!
そんな風に思ったらシャーリーに睨まれてしまう!!
俺は咄嗟にシャーリーの方へ向いたけど、気づかれてなかったようだ。
……よかった。
「ルル、ハルは呼び捨てでもいいぞ? その方がしっくりくる」
「そうよ! 私も呼び捨てだから!」
おいおい!
なんて事言うんだ!
「おい! 扱いが雑だ!」
俺が抗議の声を上げるとみんなから笑い声が上がる。
こういう時にシャーリーも怒ってくれても良いと思うけど。
まぁ冗談って分かってるからだろうな。
……ソニンは本気だと思うけど。
「あはは! みなさんよろしくです!」
どうやらルルと俺たちの距離が縮まったみたいだし良しとしておこう。
俺たちはみんなで頷き先へ進んだ。




