第百八十話 ラース教皇国での出来事 その43
エイブラム司教が取り出したのは球型の魔法宝具のようなものだった。
「あなたはここで死ぬ!」
そう言うとエイブラム司教は魔法宝具にあるスイッチのようなものを押した。
「「!?」」
俺たちは声こそ抑えたものの、驚愕した。
なぜなら、コルト都市国家で出てきた戦闘狼が出現したからだ。
これは……間違いなくゴルゾーラ教が絡んでいる。
「……こんな事して何になるのです?」
「あなたはここで魔物に襲われて死んだそれだけだ」
「霊峰フォルクレストには魔物は出ませんが?」
「ふん、そんなもの道中で襲われた事にすれば問題ない」
「……アンジェはどうしたのです?」
「ん? あの女か? なかなか良い女だからな。使い道はいくらでもある。まぁ言う事をきかなければ殺すだけだが」
「あなたって人は……」
「さて、そろそろ死んでもらおうか?」
エイブラム司教はそう言うと戦闘狼に指示を出そうする。
「それは無理だな」
エイブラム司教の行動より早く、そして俺が動くよりも早くにウィルが魔力操作して瞬時にルルの前に現れた。
「そうだな。おまえたちの好きにはさせない」
「そうです! ルルちゃんは私達が守ります!」
「自分より年下を守るのは当たり前だからね!」
そう言って俺とシャーリー、ソニンはウィルなら戦闘狼程度では遅れを取らないと判断し敵を逃がさない為、エイブラム司教の背後に姿を出した。




