第百五十三話 ラース教皇国での出来事 その16
「何かいいね、こういうの」
俺がウィルとクリフ君の後ろ姿を見ているとシャーリーが横にやってきた。
「そうだな」
俺はただ一言、言葉を発する。
それ以外に言葉が見当たらない。
なんて表現すればいいのか……何か特別って訳でもないけどたくさんの笑顔がそこにある。
コマや剣、ぬいぐるみで遊ぶ子供達、お腹いっぱいで満足そうにして微笑む子供達、そしてその光景を見て微笑む大人達。
特別な何かではないけど、確かな幸せがここにはある。
「うん」
シャーリーは俺の肩に頭を寄せる。
隣にいるシャーリー……大事な人。
特別な何かがなくても大切な人と一緒にいる、笑顔がたくさんある、そんな当たり前の事が一番の幸せなのかもしれない。
なんか今日ここに来れて良かったな。
俺はシャーリーの肩を抱く。
「今日はありがとうございました!」
メイファちゃんが来て俺とシャーリーに感謝の言葉を口にする。
「どういたしまして! 俺たちも楽しませてもらってるよ! メイファちゃんも楽しんでる?」
「うん! ありがとうね、お兄ちゃん、お姉ちゃん!」
メイファちゃんは笑顔で言うと『次に行かなくちゃ』と言ってロイとアリィの方へ向かって行った。
どうやらお礼を言いに回っているようだな。
本当に出来た子だ。
「あぁ!! お兄ちゃんがいちゃついてるぅ〜!」
俺とシャーリーがメイファちゃんの後ろ姿を眺めているとメイファちゃんより少し歳上だと思われる女の子が叫ぶ。
「本当だ本当だ!」
「ヒューヒュー!」
その言葉に次々と子供達が反応する。
「全く……ハルは場所を弁えないな」
「ハル、今はクリフが主役だ。そういうのは後で場所を変えてしたらどうだ?」
そして、ロイとウィルの追い討ち。
「だぁーー!! これは違うんだ!」
俺は弁解するもそんな空気ではない。
シャーリーは顔を顔を真っ赤にして俯いてしまった。
どうしよう……あっ、そうだ!
「今のはちょっと相談してただけなんだ! 何かクリフ君の誕生日を祝福しようと思って!」
「ん? 本当か? 何か知らないけどやってみたらどうだ?」
ロイはニヤリとしながら言ってくる。
おそらく嘘だと思っているだろう。
仕方ない、嘘なんだから。
でも、思い付いたんだよな。
「いいか? 見てろ……よっ!」
『ヒュゥゥゥ〜〜』
俺がある魔法を放つとそれは上空へ上っていく。
それをこの場にいるみんなは見上げる。
そして……
『パンッ』
大きな音と共に夜空に彩りの光が広がる。
「うわぁ〜! キレイ!」
「すげぇ!!」
子供達は声を上げながら喜んでいる。
俺はエターナル・ログの知識にあった『花火』を火薬と呼ばれる物がないので光魔法でアレンジし応用して打ち上げた。
「ほう」
「全く……ハルはなんでもありだな」
「「「キレイ!!」」」
ウィルは感心しロイは呆れ女性三人は感動している。
何とも性格にあった反応だ。
「そら、もう一発!」
俺はクリフ君の誕生日を締めくくるべく花火を打ち上げた。
花火を見る子供達の笑顔は夜空に広がる花火のように輝いていた。




