第十話 ダンジョン挑戦 その5
先ほどの戦いのあと、さらに五匹程の蟻の魔物と戦いになったけど役割り分担でスムーズに倒す事が出来た。
そして難なく、第三層への階段を見つけた。
「行こう」
俺とロイは階段を降りる。
そして、ダンジョンを少し奥に進もうとしたところで通路の奥から声が聞こえた。
「助けてくれぇ〜!!」
見ると戦士系の男が魔法使いと思われる小さな女を抱えて逃げてきた。
その後ろには骸骨の魔物が大軍で押し寄せるのが見える。
「なんだあれは!?」
俺は思わず口にしたけど隣でロイも面を食らっている様子だった。
「助けてくれ!」
戦士系の男が声をかけて来た。
「何があったんだ!?」
「一匹と戦ってたら後ろから不意打ちを食らって逃げてるうちにいろんな通路から出て来て大軍になったんだ!」
そんな戦略的な行動をする魔物もいるのか。
……偶然か?
「なるほど。スケルトンは亡くなった死体が魔物化したと聞いた事がある。もしかすると亡くなった冒険者の知識があるのかもしれないな」
さすがロイ!
物知り!
……なんて言ってる場合ではない。
この状況をどうするかが大事だ。
「ロイ。どうする?」
「そうだな。あの数相手では分が悪い。撤退が最善だと思う。ハル時間稼ぎ出来るか?」
「任せろ!」
俺はオリジナル魔法を開発していた初期に派手な魔法で範囲が広く制御が難しい御蔵入りになった魔法を唱えた。
俺は無詠唱で魔法を放つ。
すると、水が大河のように流れスケルトン達を押し戻す。
「今のうちに!」
御蔵入りになった魔法でも使いようによっては使い道があるんだな。
俺たちは降りてきた階段へと全力で走って逃げた。
その後、俺とロイは二人と行動を一緒にし、ダンジョンを出た。
ダンジョンを出た時、門番に怪しまれるかと思ったけど戦士系二人、魔法使い一人、盗賊一人でバランスが取れていた為か怪しまれる事なく出る事が出来た。
でも、俺を見る目だけ少し違った気がするけど……。
「すまん。助かった。あんたらスゴイな」
ダンジョンを出ると男が感謝してきた。
ちなみ無詠唱についてはドタバタしてたから気づいていないみたいだ。
これからは他人の前で使う時は気をつけないとな。
まだ女の方は気を失ったままのようだ。
「いや、たいした事はしていない。では、俺たちは急いでるので」
そう言ってロイは俺の手を引き走り出した。
「おい! 名前は!? お礼を!」
「また、機会があったらな!」
そう言ってロイは俺を半分引きづりながら走る。
「どうしたんだよ、ロイ?」
「バカか! 正体バレたらややこしいだろ!? それに見ろ!」
言われて見ると太陽がほぼ沈みかけていた。
……ヤバイ!
これはまことにヤバイ!
ダンジョンの帰り、女を抱えた男にペースを合わせてたから思ったより時間が過ぎてたらしい。
俺は自分とロイに身体強化の魔法をかけて太陽が沈みかけ、闇が訪れようとする中を全力で走った。
俺は今ダンジョンより帰ってからの方が恐かった。
こうして俺とロイのダンジョンでの力試しの一日は終わった。




