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ハロウイン

作者: 湯吊

「よっこらせ」

ランタンを持ち上げ庭に置く。例年より重い気がするのは乾燥が足りなかったせいか、それとも歳のせいか。腰をさすりながら考える。雪が帰ってくるまでもう三十分を切っている。早く終えてしまわねば。料理の準備はできている。雪の一番の好物であるオムライスもちゃんと用意してある。もちろんお菓子も完璧だ。最後の仕上げにランタンのライトをつけてまわる。


玄関に腰を下ろし、今年一番の力作のランタンの頭をなでる。ランタンは可愛らしい間抜けな表情をしている。毎年作ってるだけあって流石にうまいな。なんて自画自賛する。そういえば、一番最初に作った時は盛大に失敗したな。思い出して笑みを浮かべる。早く作りすぎて腐らしてしまったのだ。

『やだー。おとーさんおばけがいる。こわいよお』

滅多に泣かない雪が珍しく俺にしがみついて泣いたんだった。あのとき雪は小学生だった。あの頃は可愛かった。もちろん今も可愛いが。

玄関のドアにさっと影が差す。雪が帰ってきたのだろう。しばらくごそごそいう音がする。鍵を開け雪がドアを開けるのを待つ。

「トリックオアトリート!」

いきおいよくドアを開け、雪が満面の笑みでいう。

「ハッピーハロウイン!」

負けじと満面の笑みで返した。



「じゃあ今年も雪はパーティにはこないんだ?」

ホームルームが終わっていそいそと帰ろうとすると尋ねられる。

「うん。父親が絶対早く帰ってこいって」

私はさっと顔をしかめる、ふりをする。

「まじで? ありえないこの年になってまで家族でハロウインとか」

「ね、ほんと勘弁して欲しいよ。もう高校生なのに」

なんて口ではいいながら自然と頬がゆるむ。私がハロウィンパーティをやりたい! といった十年前から父さんは毎年律儀に準備をして私を待っている。

そろそろ帰らなきゃ。名残惜しそうな友人に手を振り、駆け足で学校をでる。今年のランタンはどんな顔だろう。想像してくすりと笑う。


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