(安値-人)な名前
入浴・食事を終え、部屋に戻ってきた俺。
このままベッドにダイブして夢の世界に飛び立とうかとも思ったが――――
「そうは問屋が卸さないってやつですよ」
いつの間にか目の前に白い少女が立っていた。
「チッ」
「会っていきなり舌打ちとか酷過ぎません!?」
二日ぶりの登場。俺をこの世界に送り込んだ神様(自称)だ。関わると碌なことが起きないのできっと疫病神かなんかのたぐいだと俺は予想している。
「疫病神じゃありませんー。れっきとした『光』を司る神ですー」
「人の心を勝手に読むなよ」
許可取ればいいってものでもないけどな。そもそも許可を出す気もない。
「で、何しに来たんだよ。俺は疲れてるから寝るおやすみ」
「ちょっと待ってください!用件を質問したんだからせめてそれを聞き終えるまで待ちましょうよ!」
「やだ。無理。グッナイ」
「させるかぁ!」
ベッドに入った俺から掛布団を奪い取る神様。何さらしとんじゃい。
俺の故郷こと日本と同じく四季があるらしいこの世界は現在、冬真っ只中。掛布団も無しに眠るのは流石にキツイ。
というわけで、
「はあ。分かったよ。話を聞けばいいんだろ聞けば」
俺はしぶしぶこのぱっぱらぱーな神様に付き合ってやることにした。
「それで、用件は?」
「実は特にないです。暇だったのでお話しに来ました」
「会話終了。布団置いて帰れ」
ナメとんのかこのバカ神は。
「いやいやいや!大丈夫です!流石に会話のネタくらい用意してきてますって!しかも悠希さんに有益な情報ですよ!」
「俺に有益?」
「はい!召喚機構の仕組みとかについてです!」
「ほう……」
それは確かに是非とも欲しい情報だった。ルナに聞いたところ召喚機構については詳しい情報があまり残ってないらしく、色々知りたい情報が聞けなかったからな。
俺はベッドから出て部屋の明かりを点け、備え付けえてあった椅子に座る。神様は(俺の許可なく)小さい丸テーブルを挟んで向かい側に座った。
「それじゃあ早速始めましょう!その可愛さは三千世界にも轟くと専ら噂の女神、ハクちゃんの『なぜなにサモン!』」
「お前名前あったんだ」
「ツッコむとこそこですか!?」
てっきりこのまま『神様』って名称で行くのかと思ってた。それにしてもハクって……
「まんまだな。ひねりがない」
「言わないでください!ちょっと気にしてるんですよ!」
「あとジ◯リっぽい」
「川の神様じゃありませんから!」
「もしくは売れない音楽プロデューサー」
「あのキャラはむしろ自分が歌ってることの方が多いでしょう!」
ツッコみ過ぎてぜえぜえ言ってるハクに、俺はそっと紅茶を差し出す。
「あ、ありがとうございます。ごくごく……ぬるっ!?」
「そりゃ昼に沸かしたやつだからな」
決して嫌がらせではない。節約精神だ。素晴らしきかな日本の『MOTTAINAI』文化。
「うう……でも美味しい」
なんやかんや言いつつも結局淹れたお茶を飲みきったハク。味が良ければ温度など大きな問題ではないのだ。
「それで?召喚機構についての情報って何なんだ?」
「そうですね……何か聞きたいことありますか?それについて私が回答する方式で行きましょう」
ふむ、聞きたいことか。色々あるがまずは……
「俺って、元の世界にどうやって帰るんだ?」
これはずっと気になっていたことだった。俺が呼ばれたのはルナの問題を解決するため。ということは、問題さえ解決してしまえば俺はもう用済みなのだ。ならば、元の世界に帰るのが道理だと思うのだが――――
「すみません、それは禁則事項です」
「ふざけんなああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
自分から聞きたいことは無いかって言っといて答えないとか何考えてんだ!?一回ぶっ飛ばすぞこのバカ!
「やはは……流石に答えられる質問とそうでない質問がありましてですね、出来ればそれ以外の質問にしてください」
「それ以外って言ったって……」
俺はハクの理不尽な発言に怒りと違和感を覚えながらも、気になっていたことや新たに疑問に思ったことを質問し続けたのだった。
話を早く進めたいのに全然進まない不思議