結構スパルタ?
レオとの出会いから翌日。
「せいっ、やあっ!」
「……」
俺は鉄剣片手に騎士団長に襲い掛かっていた。
総合技術部で培った剣技でも、本職の騎士様相手にはあまり通じない。
たった数分で俺は見事に撃退されてしまった。
「いってえ……剣の腹で殴られたから出血はないけど、やっぱ痛いもんは痛いなちくしょう」
というか打撲だから普通に内出血する。痛みを和らげる技術とか習っとくんだった。感覚が鈍くなるから却下とか言われそうだが。
「それにしても強いな。流石王国一の剣の使い手の騎士団長様だ」
「いえ、私はまだまだです。それに、そう言う貴方の方こそ素晴らしい剣技でした。本当に何者なのですか?」
「さっきも言ったろ?地方から出てきたばかりで右も左もわからない、ただの田舎者だよ」
俺が異世界から来たということを知ってるのはルナと俺だけだ。無用な混乱を招きたくないらしく、相談の結果俺は地方から腕を見込まれて連れてこられた農民、という設定になった。
で、何故俺が騎士団長と戦っていたのかというと――――
「決闘まではあと一ヵ月だったか?長いようで短いな」
「レオ卿の槍捌きは一ヵ月程度で乗り越えられるものではありませんが、貴方の実力なら可能かもしれませんね」
「冗談キツイ。無理だって、あれは」
昨日、様々な事情説明を受けた後、俺はレオの訓練を見学した。
その感想としては、勝てない、の一言が相応しいだろう。
実力は確かに一級だったが、もっとすごい人を見たことがあるのでそこまで驚きはなかったものの、たかが俺程度が勝てるわけがないとは思えた。
だからこそ、こうやって王国一の実力者と剣を交えてるわけである。
(まあ、どうせ勝てるんだし問題はないがな)
ルナとレオの結婚を取りやめにするかどうかの決闘は、一か月後に行われる。
元々この結婚はレオもあまり乗り気ではなかったらしく、決闘では手を抜くつもりなんだそうだ。
しかし王様やらなんやらの偉い人の前であからさまに手を抜くわけにもいかないらしく、出来る限り実力で圧してほしいと言われた。
そう言われちゃ断る理由もないので、俺はルナとレオの要請で時間を作ってくれた騎士団長と共に訓練に励むのであった。
「もう一本、行きましょうか?」
「ちょっと待ってもう少し休ませて!」
六時間くらいぶっ続けでやってたんですが!?
「そうですか……では終了時刻も遅らせましょう」
「今すぐ再開しようか!」
この人、スパルタ過ぎませんかね!?神代先輩の方がまだ優しく指導してくれたよ!