とりあえず金髪美少女出しとけば人気が出ると思うなよ
絢爛豪華な城内をルナの先導で歩くこと体感時間で約十分。
『くんれんじょう(はあと)』と書かれたプレートのぶら下がる扉の前に辿り着いた。
「……これ書いたのってさ、もしかしなくてもお前?」
「?はい、そうですが」
「……そうか」
これを書いたルナもルナだが、放置したままの奴らも大概だなあ。
昨晩、今朝と俺やら神もどきやらルナが騒いでたのに誰一人駆けつけなかった辺り、この城の警備はキノコ王国の城より緩いんじゃなかろうか。ルナが攫われて赤い帽子被ったヒゲの配管工に助けられるシーンを想像してみる、あんまり違和感なかった。違和感さん仕事してください。
「入ります」
コンコン、とノックしてからお淑やかにルナが扉を開ける――――かと思ったらそんなことはなかった。
何故なら
ガチャッ
「……姫様?こんなところで何してるんですか?」
扉が開いて向こう側から人が出てきたからだ。
短く切り揃えられた金髪、ツリ目気味の青緑の瞳。身に纏っているのは銀色に光り輝く鎧。
女騎士というイメージを具現化したら二番目に出てきそうなルックスの女性だ。つーかまた金髪か。
「とりあえず金髪美少女出しとけば人気が出ると思うなよ!」
「ユウキさんは急にどうしたんですか!?」
「どなたですこの方」
俺の突然の叫びに、同時に二者二様のリアクションを取る二人の金髪美少女×2。洗練されたその息ぴったりなリアクションはまるで、双子の姉妹のよう――――
「ゴールデンシスターズか」
「だから先程からどうしたんですか!?」
「ですから何なんですこの方」
不機嫌そうな声音で言う金髪美少女その2。どうやら俺を警戒しているようだ。
「この方は私のお客様のユウキさんです。実は私と彼は、レオ様に会いに来たのですが……」
「……そうですか。レオ卿なら中にいます。そろそろ休憩に入る頃だと思いますので、いってらっしゃいませ」
「ありがとうございます。リリィ騎士団長」
リリィという名前らしい女騎士は未だに俺をやや警戒の眼差しで見てから、ルナに頭を垂れる。
「いえ、この城に仕える者として当然の義務です。では私はこれで。姫様もお客人も、どうぞごゆっくり」
それだけ言ってリリィは俺達が来た方に歩いて行った。何というか、見事にお堅い騎士様って感じだな。
「それではユウキさん。行きましょうか」
ルナは扉を開けて、その先の部屋にあったドアを更に開き、どんどん進んでいく。
俺はそんな王女様の背中を見つめながら、だらだらとついて行くのだった。