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第二章 決められた死 5DAYS to 6DAYS④


 買い物を終えた二人は帰路についていた。


「なぁ」

「ん? なんだい」

「アンタは死神なのに何であんな事言ったんだ?」

「……というと?」


 呆れるようにため息をつくと、青屋は少女に指差す。


「これから死ぬかもしれないのに腐れ縁のアイツを大切にしろってところだよ」

「ああ、そこか。当たり前だろう、私達死神は名の通り死を司ると同時に生も司っているんだ」

「ふーん……」


 興味は全くありません、と言った感じの相づちをうった青屋はレジ袋を持ち直す。


「そういえば」

「ん? どしたいきなり」

「あのミカン、とてもおいしかった。また買ってはくれないか?」


 にへらっ、と嬉しそうに笑う少女。少女は顔も整っており、美形だ。何も知らない人ならすぐに惚れるだろう。しかし相手は少女が死神だと知っていて、しかもその少女から寿命を告げられた青屋だ。


「ハイハイ、今度な」


 当然、意味をなさなかった。

 残念そうにする少女の頭を、青屋は意味無く撫でる。少女はその手を不思議そうに見つめる。


「どうして死神である私を撫でるのだ?」

「はぁ……今のアンタ、どう見たって女の子だろうが。そりゃ、初めん時ゃビビったさ。でもよこの半日、過ごして分かったけど、アンタ、やっぱり普通の女の子だ。……ちょいと常識抜けてはいるがな」


 苦笑いと照れが思わず溢れた青屋はそれを隠すように少女の頭をワシャワシャと乱暴に撫でた後、歩き出す。少女は乱れた髪を戻すと、青屋を追いかける。



 家についた二人は今日使う分の食材以外はしまい、青屋は料理を始める。


「ほい、完成」

「これは?」

「豚のしょうが焼き。旨いぞ」

「うむ、いただくとしよう」


 早く早く、と急かすように青屋をみる少女。青屋は座って、手を合わせる。だが少女は不思議そうに首を傾げながら、似せるように手を合わせる。


「いただきます」

「い、いただきます?」

「アンタ本当に知識片寄ってんな」

「仕方無いであろう、外で聞いた事しか知っていないんだからな」


 そういってむくれながらしょうが焼きを次々と口に入れていく。


「あ、ちょ!? 俺の分が無くなるからやめろ!」

「モグモグモグモグ……」

「だーっ! もう玉ねぎしか残ってねえ……」

「! バクッ!」

「玉ねぎすら食いきりやがった! つかおかずだけじゃなくてお米も食べろよアンタ!」

「ごちそうさまでした。旨かったぞ」


 手を合わせる少女をチラリと見ると、お碗の中のお米すらなかった。


「そーですか……そらよかったですね……」


 泣きかけながら、お米だけ食べる青屋だった。


「お米だけではなく、おかずも食べなければダメだぞ」

「誰のせいだっ! 誰のっ!」


 泣いてもいいよな? と心の底から思った青屋はため息をつきながら、ふりかけをふりかけて黙々と食べ出す。


「ごちそうさま……」


 食べ終えた青屋は少女の分も台所に水置きすると、ふと何かを思い出したのか少女の方を見る。


「やっぱり……今日も来るのか?」

「恐らくな、過激派は狙った人物を殺すまで追い詰めるからな」


 上半身を机に突っ伏しながら答える少女に呆れた青屋は冷蔵庫から麦茶を取り出し、そのまま飲む。喉が潤った青屋は一つの疑問を呟く。


「……あの老婆には一週間以内に死ぬと言われたが……あの老婆、何で一週間後じゃなかったんだ?」


 今なら確証できる『中立派』の少女から宣告された、一週間後の自身の死の可能性。しかし老婆が言った一週間以内の死の宣告は『過激派』の死神からの刺客だった。

 状況を整理していると、机に突っ伏していた少女がいつの間にか青屋の隣におり、青屋が持っていた麦茶を飲んでいた。


「アンタいつの間に……」

「君の独り言がつい聞こえてしまってな、近づいても気づかない様子だったから黙って聞いていたよ」

「そーかよ……」


 呆れる青屋は肩をすくめていた。一方、少女は真剣な顔つきだった。


「それよりも君の独り言を聞いてて思ったのだが、その老婆……君の死を予測していたのか?」

「ああ、確かに俺が死ぬ事を宣告された。アンタとは違ってな」


 ふむ、と青屋の説明を受けた少女は何か物思いにふけっていた。


「なあ」

「なんだ? その老婆の所に連れてけってか?」

「話が早くて助かる、その通りだ。君の死を当たらずとも遠からず予想したその老婆が気になってね」

「あー……今日はもう無理だろうな、俺が死ぬ宣告された時、夜前には店をたたんでさっさと帰ったから」


 青屋の説明を受けて項垂れた少女は布団に寝転がって、ふて寝しはじめた。


「おい、どした」

「眠いから寝る……」

「……死神が来たら叩き起こすからな」


 人間らしさが出てきた少女の頼みを何となく無下にできなかった青屋は苦笑いしながら答え、それに満足して少女は眠りについた。

 頬杖をつき、時計を見る。時刻はすでに十二時を過ぎていた。


「もう深夜…………いつ来るかわからないし、起きてねぇとコイツ起こせないし……」


 頬杖をつき、時計を見ている。しかし時間はあまり進まず、退屈と苛立ちが増すばかりだった。


「…………、なんも起きないな」


 ラーメン食うか、と先ほどあまり食べてないことを思いだし、湯を沸かしに行きカップ麺に注いで三分待つ。


「この間に状況整理でもするか」


 そう呟いて、カップ麺の横に紙を置く。

 一つ、老婆の宣告は『過激派』の刺客に殺されるかもしれないという予想。そこから予想するに、あの老婆は本当に未来が見えているのかも知れない。

 二つ、彼女の宣告は死神全員が持っている、死神帳という生命の死が一週間後に迫るとそのメモ帳みたいのにその名前が載る。しかし死神帳に載るのはあくまでも可能性という事であり、死を回避した者も居るらしい。確証はないが。


「んー……あの老婆は予想するだけでどんな死に方するのかも教えないし、困ったもんだよな…………そろそろ食えるかな」


 カップ麺を食べ終わると、再び頬杖をついてのんびりしていた。

 が、結局誰一人も来ないまま、夜が明けた。


「…………起きてる意味、なかったなあ」


 そう嘆いて、青屋は意識を落とした。

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