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第一章 残り七日間の命 7DAYS②

「ん……んぅ?」


 青屋は自身の左半身の痺れに気付いて、目を覚ました。しかしまだ眠いようで欠伸をしている。


「ふぁ……あー、今何時だ?」


 寝惚けたまま体をおこし、ベットの近くに置いといたデジタル時計を確かめるがどうやら電池切れのようで、秒針が動いていない。

 後で電池変えるか、と考えた青屋は腕時計を確認する。時刻は七時四十七分、確認した青屋は時間があることに安心するとベットから出て伸びをする。


「んー……学校までまだ時間があるな、飯でも作るか」


 朝食用と昼食用のラップでくるんだおにぎりを作りタッパーに詰める。つめおえたタッパーを学生カバンに入れて朝食用のおにぎりを机に置いて、リモコンでテレビをつける。


『……と言うことです、とても楽しみですね。では、次のニュースです』


 つける前の内容に気になりながらも、机に肘を付けながら青屋は塩だけ付いたシンプルなおにぎりを頬張る。


『先日、襠原(マチハラ)区、片島町で大型トラックがバイクを巻き込みコンビニエンスストアに突っ込むという事故がおき、死傷者多数です』


 頬張っていたおにぎりを机に落としテレビに釘付けになる。襠原区片島町とは青屋が住んでいる地域だ。そしてそれは、先日青屋の目の前で起こった事だった。


『原因は大型トラックの運転手の心臓が急に停止したため起きた事故となっておりますが、実はこの運転手の男性、この事故が起こる前日に健康診断を行っており診断結果は健康その物だったそうです。警察はこの原因を探っている模様です。そう言えば榊原さん、ここ最近こう言った急死が増えてますね』


 キャスターが話をふった瞬間、カメラが右に動き初老の男性が写される。テロップが入り、この男が榊原達弘だとわかる。


『んーそうですねー、確かにここ最近目立った外傷もなく、脳や心臓と言った重要な内臓が急に活動が止まって死ぬといったケースが増えているんですよね。いったい何が起きているんでしょうか? サイバーテロの実験、何て言う輩も──────』


 思わずテレビを消した。見ているだけで気持ち悪くなったからだ。あの事故は本当にたまたまだと安心したのもつかの間だった。あのコメンテーターが言ってた事は本当なのだろう、だから納得していたキャスターの画面が写ったわけだ。


「もしかして俺────そんな訳のわからないのが原因で死ぬのか?」


 自分で言葉にして、吐き気がした。見えない訳のわからない死の存在、それはまるで心霊写真とかに稀に写るとか言う死神のような存在にすら感じられた。

 食欲など等に無くなっていた青屋はおにぎりをラップにくるんで、冷蔵庫にぶちこむ。ため息を一つつき、学生服に着替える。

 この学生服、緑と白のチェック柄という珍しい学生服で、何でも校長の好きな色を学生服に取り入れたらしい。

 着替え終えた青屋は金曜日に出すごみ袋を片手に、外に出て鍵を閉める。


「おはよう、青屋君。いってらっしゃい」

「いってきます、大屋さん」


 大家(実名)と挨拶を交わすと、青屋は駆け足でごみを捨てて学校へと向かう。学校は坂道の上に建てられており、その坂道の坂が急になっていて自転車通学の生徒からは地獄坂という名称で(嫌な意味で)親しまれている。

 しかし、それは普通に通学している生徒にも地獄坂になっている。


「あー……いつもいつも、この坂道はキツいな。夏になったらもっとキツいんだろーなぁ」


坂道を登り終え、両膝に両手を置いて肩で息をしている青屋の後ろから、楽しげな笑い声が聞こえた。


「ハハハッ、もうへばってるのか? 相変わらずもやしっこだな青屋」

「うるせえ、アンタみたいな限界のない体力を持っている奴から見たら誰だってもやしっこ同然だろうが、この体力バカの村谷が」


 青屋の後ろには身長百九十センチを越えていそうなガタイのいい、例えるならアメフト選手のような男が仲良さげに話していた。

 男の名前は村谷遊。黒い短髪の爽やかな少年。異常なまでの体力と成人男性の背丈を軽く越える身長以外を除けば、ごく普通の高校生である。

 青屋は落ち着いたのか汗を拭いながら振り返る。


「つか珍しいな、アンタがこんな早く来るなんてんさ。今日は槍はでも降るのか?」

「降るかアホ」

「バカに言われたくないな」


 と冗談を交えつつも会話していると、予鈴が鳴った。


「「……え?」」


 同時に学校の時計を確かめる。八時二十五分、それを認識した途端に二人は走り出す。


「「何でこうなったああああああああッ!?」」


 彼らのクラスは三階。遅刻したのは青屋だけだった。






「酷かった……」


 時は過ぎて放課後。青屋は精神的に疲れていた。いつ自分が死ぬのか、誰が死ぬのかが気になり、周りを意識しすぎたのだ。

 運が良ければ生き残れるかもしれない、だが良くても死ぬ可能性がある。それは確かだ。


「村谷には変な目で見られるし、他の奴には厨二病扱いされたし、散々だ……はぁ」


 ため息を一つ。それで肩の荷を強制的に下ろし、帰路に着く。

 歩いていると、あの看板が目に入った。今回は『占い、やってます!』と書かれてる。青屋はそれに釣られるように歩く。


「アンタかい、こりゃ奇遇だね」

「どーだか。ま、それより婆さん、聞きたいことがある」


 ほぉ、と青屋の言葉に興味を持った老婆の口元は歪んでいた。


「何を聞きたい? 占い師として最低限は答えるよさ」

「一つ。アンタは何者だ?」

「しがない占い師をやっている婆さ」

「二つ。あの占いの根拠は?」

「ちょっと先の未来の予想。と言うよりは見えたんさ」

「三つ。俺の死に方は?」

「昨日は潰されたカエルみたいにぺしゃんこだったね。今日は教えん、つまらんからな」


 本当に最低限しか言わない、しかも最後はつまらないからという理由から教えないという他人の人生をまるでゲームのように楽しんでいる。青屋は舌打ちを心の中でする。


「四つ。俺が死ぬとされる時刻は?」

「夜。それも深夜さ」

「昼間は安心か?」


 ああ、と答えた老婆に青屋はホッとする。今日自分がした事は無駄だったのだ。自分は夜だけ警戒すればいいのだ、青屋は気分は少しだけ浮いていた。


「最後にもう一つ。俺は最近流行っている急死によって死ぬのか?」

「違うさね。アンタは殺される、人ならざる者に殺されるさね」


 そう答えた老婆は机を畳む。どうやらキャンプ等で使われるテーブルのようだ。


「なあ、その人ならざる者って────」

「さっきので最後っていったろ? それにアタシャ疲れたんだよ。帰るさね」


 青屋の言葉を切り、老婆は机を担ぎ路地裏へと消えていった。

 青屋はふと、空を見る。空はもう黒へと変わりつつあった。


「もう……こんな時間か」


 着実に、それは近づいていた。





町の名前が○○だとオリジナリティがないと思ったので、架空の区と町を作りました。

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