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俺の周りは変と恋ばっか!  作者: 杏 代瑞
春の章
8/18

第8話『いつもより騒がしい朝飯』




「あれ? 睦月ちゃんは?」

「うっせぇから逆さ吊りにして放置してきたわ」

「うわぁ……本当にやったんだ。ユウってば鬼畜……」


 んな簡単に信じんなよ……。これが街中なら知らねぇ場所に連れていかれてンぞ?


「冗談だ。なんでも妹と遊ぶ約束があるらしくてな。さっき帰った」

「そうなんだ。全然気がつかなかったよ」


 そりゃ奇遇だな、俺も気づかんかったわ……。戸を開ける音も聞こえなかったし、アイツのご先祖様はNINJAか何かか!?

 あの後、睦月の奴は薄くて黒い服(多分、寝間着代わりだ。というか小ぶりな胸の膨らみが丸見えなくらい薄かった)を脱いで、そこら辺に脱ぎ散らかしてあった(見たまんまの意味だ。どうみてもお嬢様のすることではないだろう)自分の服を着ると、音もなく玄関から出ていった。


「おや、睦月ちゃんはもう帰ったのかい?」


 お袋が台所から持ってきた膳をテーブルの上に置いていく。

 …………――

 はっ! あまりの自然さにスルーしちまうとこだった!


「なんで台所にいたお袋が知ってやがる!?」

「あぁ? さっき睦月ちゃんが玄関から出ていったじゃないか。裕哉、アンタも気配の一つや二つ読めないと、この先生きていけないよ?」


 あの、母上? 普通の人間は気配なんてまず読めないと思うんですがね……。つか、気配の一つや二つ読めないと生きていけない世界ってどんだけやべぇんだよ……。


「あはは……」


 ほら見ろ! 美里の奴も苦笑いしてんぞ!?


「このナレーター面白いね!」

「テレビのほうかよ!! しかもそこ苦笑いするとこじゃねぇだろっ!?」

「ん? なにかおかしい?」


 美里の奴は頭にハテナ浮かべて首をかしげてやがるし、お袋はお袋でしたり顔で笑ってやがるし! もういいや……と俺は膳に並べられた朝飯を見る。

 今日は銀シャリに味噌汁に焼き鮭に漬け物か。む……NATTOHがないだとっ!?


「お袋ー! NATTOHがないぞ!!」

「あ? 誰かさんがよく食べるから納豆は今切れてんのよ。なんなら、代わりにNATO弾を用意してやろうかい?」

「いえ、いりません……いただきます」


 ライフル弾なんか食えっか!!


「ユウは本当に納豆好きだよねー。いただきまーす♪」


 もぐもぐ……うむ、NATTOHには敵わないが焼き鮭もいい。これぞまさしくジャパニーズ・ブレックファストって奴だな。


「ん? そういや今日も親父がいないな。仕事なのか?」

「うんにゃ、今日は休み。父さんは朝早くから釣りに行ったよ。運がよければ今日の夜は魚だねぇ」

「ああ、親父は釣りが趣味だったな。一応期待しておきますか」


 てな感じに朝飯を食ってると、いかにも「寝起きです」と言わんばかりに目をこすりながら二階から雪が降りてきた。


「ふぁー……おふぁよーう……Zzz」

「おはよう、雪。立ったまま寝るんじゃないよ。ほら、ご飯出来てるからさっさと顔洗ってきな」

「ふぁーい……」


 お袋に背中を押されて洗面所に向かう雪。なんかヨタヨタしとるようだが……大丈夫か?

 と、そんな心配の必要はなかったようで、面を洗ってさっぱりした雪が自分の席に座って元気に挨拶してきた。


「おはよー裕兄さん、みさちゃん」

「おはよう、雪。髪がボサボサのまんまだぞ。薐の家に行く前に直してけよ?」

「おはよっ、雪ちゃん!」

「はいよ、朝ご飯お待ちどう。なんだい? 雪は薐ちゃんの家に行くのかい?」

「うん、お姉様が昨日の続きをしてくれるって……」


 雪よ……何故そこで顔を赤くする!? やっぱ昨日俺が帰ってくる前は百合ってたのかっ!?


「かっかっか! やっぱ若いモンはいいねぇー。食べられすぎないように気をつけなよ? 裕哉達は今日はどうするんだい?」

「そうだなぁ……」


 そういや遊ぶ約束はしてたが、なにをするかは全然決めてなかったわ……。どうすっかなー。


「うーん、今日は天気もいいし、散歩しながら街まで出ようよ」


 ナイスアイディアだ、美里!


「おう、そうだな。てなわけで俺らは街で遊ぶわ。ごっそさーん」

「ごちそうさまでした♪ それじゃー僕は仕度しに一度家に戻るね。おばさん、朝ご飯ありがとでした!」

「あいよ、お粗末様でした。またいつでもおいで!」

「はーい、それじゃお邪魔しましたーっ」


 さて、俺も歯磨いて顔洗って自分の部屋に戻りますかね――と思ったら雪とお袋がこっち見てニヤニヤ笑ってやがる。


「あんだよ?」

「いやー、みさちゃんってホントいい子だと思ってねぇ。裕哉、アンタ18になったらさっさとみさちゃんと結婚しちまいな。あんないい子、他にいないよ?」

「け、結婚って……あのなぁ」

「駄目だよ、お母さん。みさちゃんには睦月先輩や高橋先輩という強力なライバルがいるんだから。一筋縄ではいかないよー」


 ちょっと待てぇ! 睦月は分かるが俺と雅矢はそんな目で見られてるのかっ!?

 確かに奴の行動はちと行き過ぎな面もあるが、周りからそう思われてたとは……。


「けっ、言ってろ。俺は部屋戻るわ」

「はいはい。今日は一日中晴天らしいから、ゆっくり楽しんできな」


 俺の背中では雪とお袋が、声は小さくだがまだ笑ってる。

 なんとなく恥ずかしくなった俺は、さっさと歯を磨いて面洗って、わざと音を立てて階段を駆け上がって自分の部屋に戻った。

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