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俺の周りは変と恋ばっか!  作者: 杏 代瑞
春の章
7/18

第7話『THE☆不法侵入』




「ん……」


 寝起きのためか、耳元で聞こえるスズメの鳴き声と、瞼ごしに感じる日差しに俺は目を覚ました。

 結構疲れてたらしく、ぐっすりと眠れたようだ。良い夢は見れなかったが、これはこれでいいことだ。


「今、何時だ……?」


 机の上に置いてある目覚まし時計(今度はまともなヤツ)で時間を確認するために首ごと顔を左に向けると――


「すぅすぅ……」

「……なんでお前が隣で寝てやがる?」


 いつの間にきてやがったのか、美里の奴が幸せそうなツラしながら寝息を立てていた。

 そういや、寝る前に誰かの声が聞こえた気がしたっけな……まさか、あん時からもういたのか?

 つか、俺確かに鍵かけたよな……? それを考えると……美里、なんて恐ろしい子っ!!


「……ま、いいか。今に始まったことじゃねぇし」


 目覚まし時計を確認すると、後2時間は寝てても問題なさそうな時間だったので再び寝ようとした俺はあることに気づいた。

 ……なんか狭くね? なんつーか、こう……反対側にも誰かが寝てやがるような……。

 右に顔を向けて、今度こそ俺は固まった。


「んっ……いけませんわ裕哉さん。そのようなこと……ふひひ。すやすや……」


 なんつー夢見てやがる!! つーか、なんでお前がこの家にいやがるっ!?

 美里はまだいい。家が隣同士だし、ひさし伝いに行き来出来るからな。だが、睦月。てめぇは駄目だ!


「……ていっ」


 背中を持ち上げてそのまま転がしてやると、漫画の一コマのように睦月の奴は転がっていってそのままベッドから転落した。「ゴキッ」って音がした気がするが睦月のことだし多分大丈夫だろ。


「痛っ! もぅ……一体何なんですの?」


 ほらな。


「おはよう、睦月。とりあえず、なんでここにいるのか聞かせてもらおうか」


 寝起きとは思えないくらいの笑顔でいう俺。ただし、指をパキパキと鳴らしながら。


「あら、おはようございます裕哉さん。何でって言われましても……きちんと玄関からお邪魔させていただきましたわ」

「ほう? 玄関ねぇ……。鍵が掛かってたはずなんだがなあ?」

「ふ……このわたくしの七つ道具のひとつである『ぴっきんぐ・つーる』というものに掛かれば、鍵のひとつやふたつ――」

「睦月。ひとついいことを教えてやろう」

「はい?」


 不思議そうにしながらベッド端に寄ってきた睦月に俺は大声で言ってやった。


「それは不法侵入って奴だああああぁぁぁぁぁぁ!!」

「ぐええぇぇ! 裕哉さん首絞まってますわ!! ギブギブうぅー!!」

「おおっと水無月選手! ここでチョークスリーパーだぁ!! これは苦しい! 九条院選手耐えられるかぁ!?」

「なんでプロレスの実況風なんですの!? ギブ! ギブしますわー!!」

「なお、この試合はギブアップ無効となっております。あらかじめご了承ください」

「後告知なんてひどすぎますわー!!」


 なんてことをしているうちに、ようやく美里の奴が目を覚ましたようだ。


「おはよ、ユウ。……さっきの音はなーに?」


 プロレスもどきじゃなくて音のほうかよ! しかも反応おそすぎっ!!


「気にすんな。もう起きるならさっさと下いって顔でも洗ってこい」

「んぅ……起きる。あれ? なんで睦月ちゃんがここにいるの?」

「タダの不法侵入だ。後で逆さ吊りにしてやろうと思ってるんだが、美里もやるか?」

「え゛……?」

「うん、やるー。家からバナナガード持ってくるねぇ……」


 駄目だコイツ。まだ寝てやがる……早く起こしてやらんと。マジで家戻ってバナナガード持ってきかねん……。

 美里は非常に寝起きが悪い。寝惚けてる時のコイツはなにするか分からんので早めに目を覚ましてやる必要があるのだ。


「いいからさっさと顔洗ってこい」

「んにゅ……」


 俺が指さすと美里はぬぼーっとした動きでドアを開けて階段を降りていった。

 代わりに下から上がってきたお袋が顔を見せる。


「裕哉、さっきみさちゃんが上から降りて――おや、睦月ちゃんも一緒だったのかい? 二人とも相変わらずだねぇ」


 にやにや笑いのお袋。けっ! ババァがにやついてもキモいだけだっつの……――すみません、めっさ怖いんで特殊警棒取り出しながら殺気を叩き付けないでくださいマジで。


「はい、濤恵小母さま。ご無沙汰しております」


 睦月の奴は既に復活していた。相変わらず見た目に反して頑丈な奴だ。


「どうだい? 睦月ちゃんも朝ごはん食べてくかい?」

「そうしたいのは山々なのですけど……今日はこれから妹と遊ぶ約束がありますの。またの機会にお願い致しますわ」


 睦月の妹かぁ。いるのは知ってんだが会ったことどころか名前すら知らねぇんだよなあ。睦月の奴はその辺のこと話したくねぇみたいだしよ……。ま、急いで聞かなくてもそのうち話してくれるだろ。


「そうかい? それじゃあ仕方ないねぇ。裕哉、アンタも仕度してさっさと下りてきな」


 そう言ってお袋は下に降りていった。

 顔を見合わせる俺と睦月。さっきのプロレスもどきの続きでもいいんだが、ここはひとつ聞いてみることにするか。


「なぁ、睦月」

「はい、何です? 裕哉さん」

「お前……結局なにしにきたの?」

「何って……裕哉さんの隣で寝たかっただけですけど?」


 マジでそれだけかよっ!! コイツんちと俺んち、どんだけ距離があると思ってんだ!?


「そうですわねぇ。裕哉さんのご希望とあらば、ベッドの上のプロレスごっこでも――」

「やらねぇよ!!」

不法侵入は犯罪です。ダメ、絶対!

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