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俺の周りは変と恋ばっか!  作者: 杏 代瑞
春の章
14/18

第14話『Oh! SAKE!? ~ 飲んで食べて飲んで呑まれて ~』




 2階の片付けと宴会の準備が終わり、そして夜になった。


『かんぱーいっ!!』


 さぁさぁ今年も始まりました、楽しき宴の刻『Oh! SAKE!!』。

 今宵は皆様がどのように乱れるのか、それは見てのお楽しみです!

 いやまぁ……俺としては乱れてほしくないんだが、去年もアレだったし無理だろうなあ……。


「このお酒美味しいね、ユウ!」


 と、ご機嫌な様子の美里が飲んでるのはスクリュードライバー、カクテルの一種だ。

 他の連中もカクテルやビールといった低アルコールのものを美味そうに飲んでいる。

 お袋に釘をさしておいたから今日この場にある酒をどれも低アルコール飲料……のはずだ。雅矢と睦月が持ってきたはずの酒は、お楽しみってことなのか、俺の目に見える範囲にはない。


「お酒だけではなく、お料理もとても美味しいですわ。どなたがお作りになったんですの?」

「あ、それは私とお母さんで作ったんですよ。睦月先輩」


 アスパラガスのベーコン巻きに舌鼓を打ちながら聞く睦月に嬉しそうに答える雪。

 そいえば雪は途中で抜けてたっけな。料理の手伝いに呼ばれてたってわけか。


「ふふ、これでしたらいつでも薐さんのお嫁さんになれますわね。雪さんは」

「え……あ……や、やだぁ睦月先輩ったら……お姉様のお嫁さんなんてまだ早いですよぉ」


 睦月のからかいに一瞬で顔を真っ赤にする雪。うむ、その様子はとても可愛いぞ、我が妹よ。


「いやあ、美味い料理に美味い酒、そして綺麗な女性。今宵の酒宴は楽しいですねぇー。はっはっは」


 先生ー! ここに親父がひとりいます!

 あれだな……クラブとかキャバクラとかで女侍らしてるどこぞの成金野郎って感じだな、今の雅矢は。

 おっと、知らねぇうちに結構なペースで飲んでたのか急に催してきやがった。

 俺は隣で鶏の唐揚げをつまんでた美里に少し席を外すと声を掛けて宴会部屋を出た。

 うー、便所便所!




 ――15分後。

「チッ、親父のせいですっかり遅くなっちまったぜ」


 たくよぉ、あのクソ親父長すぎんだよ。便所で新聞なんか読んでんじゃねぇよ!

 さて、あいつら大人しく飲んでるかな、とふすまを開けると――


「はぁー……このお酒おいひいれすわ。しゃすが我が家にあった秘蔵のお酒れすわあ」

「いいにゃあ……睦月しゃん。僕にも少しちょうらいー!」

「いいれすわよ。はぁい、どうぞぉ」

「にゃはは! 睦月しゃん、いれすぎぃ! こぼえてるよぉー♪」

「あらぁ……まぁ、いいれしょうー」

「…………どうしてこうなったっ!!」


 そこら中に広がってる強い酒のにおい――これはもしかしてブランデーか? さっきまで健全だった光景はどこにいったのか、そこはある意味地獄だった。

 睦月と美里の奴は酔っ払いながらコップになみなみと注がれたブランデーを飲んでやがるし……あーあ、ンなに飲んでリバースしても俺は知らねぇぞー?

 雅矢の奴はというと――巻き添えをくわないように少し離れた位置で熱燗を飲んでやがった。いつの間にか雪も雅矢の隣に避難してて一緒にちびちびとやってたりしてる。まぁ、賢明な判断といえよう。

 ともあれ雅矢はまだシラフのようだな。


「おい雅矢。一体なにがあったんだ?」

「ああ、裕哉君。戻りましたか。どうも、おばさんが用意してくれたお酒の中に一つだけ強いのが混じっていたようですね。で、神無月君がそれに気づかないで飲んでしまいまして……。次に九条院さんがそろそろいいでしょう、ということで自宅から持ってきたブランデーを取り出して飲み始めまして、それでこの様です。ちなみに私が持ってきたのは日本酒です。裕哉君もどうですか?」

「お、おう……」


 まだ使ってない猪口を取ると雪が徳利を傾けて酌してくれる。それを一気に飲み干すと、これは……酒に詳しくない俺でも分かる。上等な日本酒だ。


「うまいな。で、美里が間違って飲んだ酒はどれだ?」

「そこに転がってるよ、裕兄さん」


 雪が指差した空き瓶を拾って、貼ってあったラベルを確かめてみる。

 なんだこりゃ? ジュースみたいなジュース? ジュースじゃねぇのか?

 瓶の口に鼻を近づけてみると、なるほど……確かに酒のにおいがするな。ん、待てよ? このにおいは……ラム酒か!


「ラム酒をジュースで割った奴だな。ったく……ロシアンルーレットじゃねぇんだから――のわぁっ!!」


 お袋ー!! と、叫ぼうとしたが突然抱きついてきた酒くせぇ奴に邪魔されてしまった!!


「ユウ〜。しょんなとこにいないでぇ、いっしょにおしゃけ飲もうよぉ〜」


 俺の口に酒が入ったコップを近づけて無理矢理飲ませようとする酔っ払い1号。


「だぁー! マジ酒くせぇ! 離れろっ!!」

「あらぁ、裕哉しゃんいつ戻ってきたんれすのぉ? 美里しゃんなんかよりぃ、わたくしといっしょにのみましょ」


 逆サイドから抱きついてくる酔っ払い2号。つか、こいつらマジで酒くせぇ! 気のせいか息苦しくなってきたぞ……。


「らめぇ! ユウはぁ僕といっしょに飲むのぉ!!」

「裕哉しゃんはわたくしと一緒に飲むんれすのよ。美里しゃんはひいれくらさいな!!」

「むぅーっ! 睦月しゃんこしょユウからはなりぇてよぉ!!」

「い・や・で・す・わ♪」

「――ぅ!?」


 何を思ったのか、睦月は酔っ払いには見えない速さでブランデーを口に含めると、そのまま俺に唇を重ねてきた!

 開かされた口から直接流し込まれるブランデーが俺の喉を焼く。口の中のブランデーを全て流し終えても睦月は離れようとしない。

 引きはがそうとしてもタコの吸盤のようにくっついて離れない! このままだと窒息しちまうっ!


「あぁーっ!! にゃにしてるのぉ! 睦月しゃん!!」


 美里が呂律の回らない声で抗議しても睦月はまだ離れようとしない。い、息が……そろそろマジでやばくなってきた……。


「モテモテだね、裕兄さん♪ あ、高橋先輩。もう一ついかがですかっ?」

「ははは、見てる分には楽しい光景ですねぇ。おっとと、ありがとうございます。水無月さん」

「どういたしまして♪」


 仲いいなお前ら!! つか、高みの見物決めこんでねぇで助けろよ!!

 ああ……もう駄目だ……意識が…………――


「んぷはぁ……おいしかったれすわあ。あらぁ? 裕哉しゃん〜?」




 ――後日、雅矢の話ではこの後ふたりともぶっ倒れて、お袋の手で今日の寝所に放り込まれたらしい。

 チーン――。

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