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俺の周りは変と恋ばっか!  作者: 杏 代瑞
春の章
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第1話『新生活の朝』




「うぅーん……」


 近くで目覚ましっぽい音が鳴ってる……というか目覚ましの音だ、止めないと。

 『起きないとぶちこむぞー!』とか言ってるが目覚ましには違いない、うん。

 つか、普通『起きないとぶっ殺すぞー!』とかじゃねぇの? 『起きないとぶちこむぞー!』って何よ?

 それはいいとして、さっさと止めるか……。


「そーれ、ぽちっとな。って、ンだよ。まだこんな時間じゃねぇか……」


 今日まで春休みのはずだからな。寝よ寝よ……。

 と、俺は目覚ましを放り捨ててまた布団に潜り込もうとしたが、


『さっさと起きねぇとテメェの菊○にぶち込むぞゴラァ!!』

「んな目覚ましがあるかコラァ!!」


 いきなり態度を豹変させた目覚ましに俺の熱い拳がヒット!

 哀れにも目覚ましは爆砕、四散してしまった!


「あ……目覚まし壊しちまった。どうすっかな」


 まぁ、ただ地面に落として電池が外れちまっただけなんだが。


 今日はまだ春休み→ずっと寝ていられる→そんなに寝て大丈夫か?→大丈夫だ、問題ない


 結論――このままでも問題なし。


「ンじゃ、おやすみーっと」


 今度こそ布団に潜ろうとしたが、またしても俺の眠りを妨げるヤツの足音が。

 ソイツは俺の部屋の前に止まると、ノックを二回して部屋に入ってきた。

 入っていいかくらい聞けよ……マナーがなってないぞ。


「裕兄さんー? 起きてるー?」


 ソイツは女だった。というか、俺の知ってるヤツだった。

 そりゃそうだ。毎日顔を合わせてるからな。


「Zzz……」

「裕兄さーん? まだ寝てるかなー? 寝てるなら起こすよー?」


 さて、皆さん。ここで俺はどんな起こし方をされるでしょうか。

 甘〜い展開を期待した人も多いと思いますが、コイツはそんなヤツじゃないのです。


「えーい! 雪流ダイビングボディプレスッ!!」

「んぎゃあああああぁぁぁ!!」


 わざわざ助走をつけて俺の腹に飛び込んできた雪の手が、俺の敏感な場所にクリーンヒット!

 ダイビングボディプレスに合わせてダイビングフィストをかましてくるとは……やるな、我が妹よ。

「起きた? 裕兄さん」

「お、起きたが……息子に拳を落とすのはやめてくれ……」

「ごめんねー。でも、こうでもしないと裕兄さん起きないでしょ?」


 悪びれた様子もなく笑う我が妹。

 コイツは水無月雪みなづき すすき。俺こと水無月裕哉みなづき ゆうやの妹で年は一つ下の16歳。

 兄の俺から言うのもなんだが、年頃だというのに「おてんば」を地で行くような娘だ。

 可愛い妹ではあるが行動は破天荒そのもので、コイツを制御出来る人間は俺の知る限りではたった一人だけだ。


「て、ヲイ……なにヒトのズボンずり下げてやがる!? こら! てのひらでさするんじゃねぇ!!」

「なにって……そのままだと痛いかなーと思って。気持ちいいかな?」

「何ぬかしてやがる!?」


 ……訂正しよう。「おてんば」+「天然ボケボケ娘」だ、コイツは。


「やめんかい!!」


 パンツに手を掛けようとしていた雪の手を無理矢理掴む。

 このままコイツの思い通りにさせてたらパンツまで脱がされてしまうわ!


「えー」


 何故か心底残念そうな顔をする我が妹、雪。そんなに見たかったのか!?


「えー、じゃない! ところで雪? なんでまたこんな早い時間に起こしに来たんだ? 今日はまだ春休みのはずだろ?」


 雪の格好は学校行きの私服姿だった。

 余談だが、俺達が通っている高校は正式な式典以外は私服OKだ。

 まったく、今日は休みだってのに変なヤツだ。

 と、思っていたのだが――


「……え?」

「え?」

「真似しないでよ……。勘違いしてるみたいだけど、今日から新学期だよ?」

「なにィ!!」


 急いでカレンダーを確かめると、確かに今日から新学期だった。勘違いしてたのは俺のほうだったようだ。


「だからね? 裕兄さん、早く着替えないと朝ご飯抜きで学校行くはめになるよ?」

「おおう、それはいかん」


 朝飯は一日の活動源だ。抜いたら今日は睡眠学習のフルコースをすることになっちまう。

 今日は始業式なので授業はないのでは、とかそういうことは言ってはいけない。

 俺は急いで着替えようとしたが、雪のヤツは立ち去ろうともしないで手をわきわきさせている。


「あのさ、雪? そこにいられると着替えられないんだが?」

「ん? 着替え、手伝ってあげようかと思って」

「いいからさっさと出ていけぇ!!」

「きゃー♪」


 俺が怒鳴ったのにも関わらず、雪は嬉しそうに笑いながら階段を降りていった。

 まぁ、どうせ俺がなに言ったって聞きやしないし。

 ちょっぱやで着替えて持ち物を確かめる。といっても今日は授業もないはずなんでカバンの中に入れるのは筆記用具とノート、それに鉄板くらいだろう。


「よし、いくか!」


 全ての確認を終えた俺は、階段を降りてリビングへと向かった。

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