ツンデレ姫の寝顔フィルムの活用法
自宅へと帰ろうとしている電車の中。
がらがらの車内に高校生ぐらいの女の子がひとり、座席のはしっこに腰かけていた。
半袖の白のスクールシャツ、学校指定の赤いリボンをくくりつけた……黒のショートヘアの彼女がうとうとしている。
ふともものうえにのせたスクールバッグに顔をうずめるような体勢の黒のショートヘアの彼女。
扉が開き。暑そうな自然の声とともに、たくさんの人間がのってきたからか。
びくんと全身をびくつかせ、黒のショートヘアの彼女が上半身だけをすばやく起こした。
めずらし……この時間帯にこんなにのってくるなんて。
黒のショートヘアの彼女がそれとなく周りを確認するように顔を左右に動かす。
小学生の集団下校かな? それとも遠足の帰りとか。
なんにしても、にぎやかすぎて眠れそうにないな……かわいいからゆるせちゃうけど。
黄色い、つばのひろい帽子をかぶった小学生ぐらいの幼い男女が車内をうめつくさんばかりに立っていたり……座席に足をぶらつかせながらちょこんと座っている。
なにかしらの気配を感じてか、黒のショートヘアの彼女が視線を真横に動かす。
自分の隣に高校生ぐらいの男の子がいつの間にか腰かけていた。
「よっ」
と高校生ぐらいの男の子が、黒のショートヘアの彼女に声をかける。
「どうも。ベビーシッターのバイト? 大変そうね」
「おれが連れてきたわけじゃねーよ」
「意外と似合っていると思うけど。精神年齢がいっしょぐらいだろうしさ」
「相変わらず口が悪いのな」
黒のショートヘアの彼女だと理解していてか高校生ぐらいの男の子は軽くききながし。
「それよりも眠らなくていいのか? 疲れているんだろう……同じ駅だし、起こしてやるよ」
「べつにいいから。そもそも疲れてないし」
「だったらいいけどさ。一応……お前も女の子なんだから」
「関係ないでしょう。わたしのことなんだからさ……ほっといて」
怒ったような口調だったが、周りにいる小学生たちに気をつかってか……黒のショートヘアの彼女の声は小さかった。
「悪かった」
簡単な謝罪の言葉を伝え、高校生ぐらいの男の子はスリムフォンをいじりはじめた。
黒のショートヘアの彼女が、なにかを伝えたそうにやわらかそうな唇を開閉させるも。
その声はかたちにならず、隣に座る高校生ぐらいの男の子のほうを見ないようにか。
黒のショートヘアの彼女は顔を動かし、まぶたをゆっくりと閉じた。
「あっ、やばっ……寝過ごして」
「まだ寝過ごしてないから安心しろよ」
慌てた様子の黒のショートヘアの彼女が面白かったのか、高校生ぐらいの男の子が笑いかけるように言葉をかけていた。
黒のショートヘアの彼女が不満そうに、じろりと高校生ぐらいの男の子をにらむも。
筋違いだとわかったからかすぐに黒のショートヘアの彼女はしおらしそうな様子に。
「た……たまたまだから」
「なにが? べつに言いわけしなきゃならないことはしてなかったと思うけど」
「わからないなら理解しなくてもいい」
はやく到着してくれないかな。
よりにもよって、こいつにもたれかかりながら眠っていたとか。
高校生ぐらいの男の子が自分のスリムフォンの画面を、隣に座る黒のショートヘアの彼女に見せ。
「な……なにしてんの!」
スリムフォンの画面にうつっている、高校生ぐらいの男の子にもたれかかりながら眠っている自分の写真を見せられ……黒のショートヘアの彼女が声を荒らげる。
「おれが撮ったわけじゃないぞ。小学生ぐらいの女の子が撮ったやつを、プレゼントしてもらっただけで」
「だったら見せないで、消去してくれれば」
「なんか……もったいないと思って」
「どういう思考回路してんのよ」
「それと、小学生からはカップルだと思われていたって伝えたかったのもある」
頭を抱えるような体勢のまま、黒のショートヘアの彼女が……高校生ぐらいの男の子を見る。
「小学生の倫理観? はよくわからないけど……カップルで彼氏だから、彼女だと勘違いされているお前の」
「わかったから。その写真、わたしにもちょうだい」
高校生ぐらいの男の子が首をかしげた。
「あんたの寝顔もうつっているんだから……取引とかにつかえるかもしれないでしょう」
「なんの取引かはわからないが。たしかにお互いに抑止力になるか」
黒のショートヘアの彼女と高校生ぐらいの男の子がお互いにぎこちなさそうにスリムフォンを操作している。
最寄り駅に到着したからか、お互いに目を合わせ。
寝ぼけて、つないでしまったのであろう握りあっている手のほうへと視線を。
「まだ眠いから……だれかにひっぱってもらわないと歩けなさそう」
「了解」
なんで、こんなにも小さくなってんのよ。
立ちあがり……かつてとちがい女の子だと気遣ってか歩くペースを合わせながら、ひっぱってくれている。
高校生ぐらいの男の子の握りしめている大きな右手を、黒のショートヘアの彼女は後ろを歩きつつ……じっと見つめていた。




