LOG.6 ― そして海へ / SEA ―
——実話。
こんな人生で、マトモは無理だった。
これは、
現実にあったかもしれないし、
無かったかもしれない。
もう一つの結末。
————
港に着いた瞬間、
潮の匂いと
魚の焼ける香りが混ざった、
独特の“海の空気”が広がっていた。
ミカ
「到着~!」
「わーい港だー!」
嬉しそうに車から降りるミカ。
初めての場所なのに、
風景のほうが
ミカに合わせて後ろへ下がっていく。
まるで、
この港の主役みたいにそこに馴染んだ。
ミカが来てから、
港の稼働が、
一気に賑やかになった気がした。
最初の牡蠣の屋台で
「お嬢ちゃん、美人だなぁ!」
「今1番 いい牡蠣サービスだ!」
ミカ
「え〜!ありがと〜♡
よかった〜!美人に生まれて〜♡」
隣の店でも
「可愛いねぇ!ビールサービス!」
ミカ
「わ〜い♡そうなんです~!
アタシ可愛いんです〜!」
おっちゃん達、
鼻の下デロデロ。
ミカは歩くだけで
“物価を下げる女”だった。
ミカ
「ここ、サービス多いね♡」
シン
「そうだね」
シンは思った。
シン
(俺サービスされてねぇよ…。)
(お前が美人すぎなんだよ…。)
牡蠣を食った瞬間、
ミカは子供みたいに無邪気になった。
ミカ
「……うまっ!」
「やっぱ最高…!」
シンは、
正直早く帰りたかった。
シン
(し、視線が……!)
ミカが目立ちすぎるのだ。
あまりに美人すぎて
男共がジロジロと眺めている。
屋台をいくつか回り、
ミカはシンの袖を
ちょこんと掴みつつ歩く。
港のざわざわが次々と、
ミカの背景になっていった。
ーーー
牡蠣も食べ終わって、
屋台をいくつか回り、
満足した空気になったところで
2人は車に戻ろうと歩き出した。
シン
「よーし、ぼちぼち帰るかぁ~」
その時だった。
ミカ
「おい!」
「約束は!?」
シン
「え?」
ミカ
「海!!!!!」
「海だよ!海!」
「何忘れてんのよ!!」
だんっ と
地面を踏むミカ。
港のざわざわした空気の中で
響き渡るほどの声量だった。
シン
「あ!」
「ごめん!そっか!」
子供がデパートで親の袖を掴むみたいに、
ミカが小さくシンの腕を引く。
ミカ
「絶対忘れてると思った…!」
「帰りたそうだし…。」
「ミカ、ホントに大事なの…海。」
「海見ると元気出るの。」
その言い方があまりに自然で、
わがままというより、
“本音が溢れた瞬間”に聞こえた。
シン
「……分かったよ。行こう。」
ミカ
「やった〜!」
そうしてシンたちは、
港から少し離れた海へ向かった。
そして海で、
ミカの本心に触れることとなる。
その時、シンは…
自分が思っていたよりも、
”深い場所”に来ていることを知る。




