LOG.13 — 首輪に、棘を / THORN —
——実話。
こんな人生で、マトモは無理だった。
これは、
現実にあったかもしれないし、
無かったかもしれない。
もう一つの結末。
————
ホテルの部屋に到着して、
ミカは
すぐにベッドへダイブした。
そのまま、
クルッと仰向けになり、
手を広げた。
ミカ
「くっついて。」
「怖かった。」
「早く、くっついて。」
シンは
もうすっかり
ミカが愛おしかった。
がっついて
キスをしまくった。
そして
ワンピースに手を這わせると、
ミカ
「無理」
シン
「…ん?」
ミカ
「無理。しないよ。」
「くっつくだけ。」
シン
「…は?」
シンは
ガバッと勢いをつけて
ワンピースを脱がそうとした。
ガンッ
ミカは肘をシンの首に強く当てた。
シン
「う!」
「ゲホッ!ゲホッ!」
シンの
喉仏が破裂するところだった。
シン
「な…なんで?」
「なんで しないの…?ゲホ」
ミカ
「性欲じゃないから。」
「ミカは、くっつきたいの。」
「くっついてキスしたいの。」
「それから先は汚いからしない。」
「ミカ、服は絶対脱がないからね。」
シンには
何が起きてるか分からなかった。
でも
今この瞬間、
わかったことがある。
自分は
猛獣使いではないこと。
自分には
女性経験が足りないこと。
自分は今、
罠にハマって生け捕りにされてること。
それと…
よく見たら
ミカが心底嬉しそうなこと。
ミカは
顔を真っ赤にして
目を輝かせていた。
ミカ
「したかった?」
ワンピースを少しめくるミカ。
シン
「う、うん…!」
シンは
ゴクリと生唾を飲んだ。
ミカ
「したいなら、」
「わん って言って?」
シン
「わん」
シンは
食い気味で答えた。
すっかり、
シンのほうが猛獣であった。
ミカ
「もっと。まだ足りない。」
シン
「……わん」
「わん、わん」
シンにはもう、
情けないという感情は無かった。
ミカ
「もっと。」
ミカは
顔を真っ赤にして
自分の身体を触り始めた。
ミカ
「…っ!」
「もっ……と!」
シン
「わ、わん!」
「わん」
ミカの一挙手一投足が
シンの視界を支配していた。
シン
「……。」
シンは息が吸えなくなった。
それは、
人生で初めての経験だった。
目の前で美女が、
自分の声で、
自家発電している。
映像が刺激的すぎた。
そして、我慢の限界。
シンはミカに飛びかかった。
だが…
拒絶。
シンは
床で うずくまっていた。
ミカ
「学習しないのね…。」
右手の中指を
ウエットティッシュで拭きながら
呆れるミカ。
ミカ
「邪魔されてイけなかった。」
「気分悪いから、帰る。」
「パーキングまで送って。」
シン
「…っ!?」
「はぁ?帰る…?ゲホ」
「ここまで来といて…?」
ミカ
「バーカ」
「あの時我慢できて…」
「なんで今日は無理なのよ?」
グイッと
顔をシンに寄せるミカ。
ミカ
「アンタさぁ…」
「あの時、間違えたわね」
「あの日を逃した アンタとは、」
「一生、しないわよ。」
シンは
絶望で何も言えなかった。
息が吸えないし、吐けない。
ミカ
「早くして」
「早くアタシを…」
「元の場所に返して。」
荷物を持って
颯爽と部屋の出口へ
歩いていくミカ。
シンは…
その背中を情けなく追い、
仰せのままに、運転手となった。




