これからの日常〜空気令嬢と不良騎士学生の新たな日々〜
「不良騎士学生と空気と言われた令嬢」の続きです
前作を読んでいないと繋がらないかも
セイスティオ視点です
セイスティオは教室の席で突っ伏した。
空気令嬢と呼ばれる自分の婚約者を思い出し頬が緩むのを感じて机に突っ伏したまま顔が上げられない。
五年という年月離れていたが婚約者とは生まれた時から一緒だった。
いつも一緒だったのに些細な行き違いですれ違って、五年という年月がすぎた。
ある日を境に小等学園に一緒に行くのを断られ、中等学園に入学したら姿が見えず、王都にまで追いかけたら距離を置かれた。
それでも諦めきれなかった。
理由はよく分からない。たぶん小等学園に通っていた頃に理解した事が全てだと思う。
『空気』だと思った。あるのが当然で気が付きにくいけど、無ければ生きていけない。息もできない。
掴みどころもないけれど、それでもいつもそこに居てくれた。
そんな存在が愛おしくない訳がない。
理解したその日に婚約を申し込みたいと親に相談した。
だって自分は幼馴染が居ないと生きていけない。
これは絶対だ。
『大事にするし愛おしいし、何よりリシーは可愛い。
大好きな幼馴染が婚約者になるならきつい後継教育も頑張れる。』
そんな説得の末、親は婚約の申し込みを入れてくれた。
しかし返事は『娘が受けると言わない限り婚約のお話はお受けしかねる』というもの。
それならばと本人にアプローチをと思ったのに会えない。
気が付けば領地から出て王都に行っていた。
追いかけて王都で会えば、愛称で呼ぶなと言われ密かに泣いた。
八方塞がりでそのうち真面目に過ごすことを辞めた。
それでも幼馴染と同じ部活に入り、遠くからではなく近くで見ていたけれど、彼女は他人行儀な上に自分とは会話をしたがらない。
悔しくて部活をサボっていたら、先輩からの指示で彼女の方から迎えに来てくれるようになった。
余計な会話をすると来なくなるかもと思うと臆病にもなる。
何も言えず、それでも迎えに来て、時には手を引かれ移動をする。
その際に見つめる。
17になった彼女は相変わらず可愛い。可愛いから構いたいのに、その権利が自分にはない。
可愛い中に美しさがある。これはやばい。早く外堀を埋めたい。
数日前に送った婚約の申し込みの返事はいつも通り……
可愛い幼馴染に変な虫がつく……
そんな焦りだけが募る。
幸いなことに彼女は影が薄い。
地味で無表情だし平凡。と言うのが彼女の評価だ。
見る目のないやつが多い。
それが良かったのか彼女にはまだ婚約者がいない。
おそらく想い人もいないはず……居てくれるな、居たら領地に引きこもるかもしれない。
そんな日常がいきなり崩れた。とんでもなくいい方向に。
後輩が自分の気持ちをぶちまけた。
幼馴染本人に。
凄く照れくさいし、勝手にバラされた事に苛立ちはある。が、まさかの幼馴染が婚約を受けてくれた。
嬉しすぎてその日は一睡も出来なかった。
朝になり男子寮から急ぎ飛び出る。
朝食もそこそこに制服にさっさと着替え勉強道具の入っていない薄い鞄を手にして遅刻常習犯の名を返上する勢いで寮を後にした。
女子寮の前で門に背を任せ欠伸ひとつ、チラチラと見てくる知らない女生徒が面倒だと思いつつ幼馴染を待つ。
そのうち美しい空と同じスカイブルーの髪が見えた。
幼馴染を確認して自然と口角が上がる。
「よぅ、リシー」
声をかけると驚いたようにこちらを見た。
可愛い。
無表情って言うやつら本当に節穴だな。と嘲笑する。
こんなに可愛い変化が分からないのだから。
「セイちゃん、君、早起きできたんですね」
「……実は寝てねぇ。明日からは自信ねぇよ」
男子寮に女性が入る事は禁止されていない。受付に許可を取れば部屋に案内してもらえる。
それを知っているから少し期待を込めて視線を送る。
「起こして欲しいんですか、相変わらず甘えん坊ですね」
「甘えん坊…………」
「違いました?」
「っ、あーもう!甘えでも何でもいいっつーの。来んの?ダメなの?」
「交換条件なら良いですよ」
「なんか欲しいのかよ?」
「セイちゃんと打ち合いしたいですね。休日にタウンハウスでどうですか?」
いいのか??と聞きかけた。それは休日も会うって事だろ?と。
しかし、打ち合い……デートとかしたいが、会えるだけでも確定させるべきか?と考える。
まてよ、と思い直す。
休日は毎週二日ある。打ち合いとデートで一日ずつ。それなら毎日会える。
そこまで考えて愛おしい幼馴染に笑みを浮かべつつ返事をした。
「二日とも会えるならいいぞ。けど、打ち合いは一日だけな。残り一日は出かけようぜ」
その言葉に幼馴染はふむと考え込んだ。
まさか毎日は会いたくないと思われているのか。と汗が流れる。
「毎週出かけるんですか?隔週にしましょうよ。私は屋敷でのんびり過ごすのも好きなので。お互いのタウンハウスで交互に過ごすのも楽しいですよ、たぶん。あ、私の部屋にも招待しますよ?ふたりでのんびり過ごすのも久しぶりですし、いいでしょう?」
「……部屋にふたりで過ごすとかある意味苦行なんだが」
「??嫌でした?」
「嫌じゃねぇよ」
嫌じゃなくて、可愛い幼馴染の身を案じてるだけ。とは言えない。被害を与える可能性があるのは自分だし……いや、耐える。そう結論づけ返答する。
だって望む答えを返せば、ほら。可愛い。
嬉しそうに笑みが浮かんでいた。(ただし他の人には相変わらずの無表情に見える)
話を終え歩き出す。当然のように手を繋いで。
『ねぇ、セイちゃん。』そう話しかけられにやけてしまう。
可愛い幼馴染の声は可愛すぎる。
「今日は迎えに来てくれてありがとうございます」
「ん、べつに」
来てくれてと言うが実際は自分が来たかった。早く会いたかった。夢じゃなく本当にリシュエンヌが自分の元に戻ってきたのだと実感したくて。
「ふふ」
「どーした?」
「昔みたいですね。なんだか元に戻ったって思えたらちょっとだけ面映ゆいですね」
「ばーか。リシーが受け入れたらいつでも俺は元通りになるって思ってたっつーの」
繋がれていない手で痛くない程度にデコピンする。
むぅっと言いつつ額を抑えるリシュエンヌが可愛い。可愛すぎる。
「セイちゃんのばかぁ。むぅぅぅ」
「え、何それ。かわいい」
あまりの可愛さに声に出た。正直この可愛さは無理だろうと思う。うん、無理だ。
デフォルトが無表情の丁寧語のリシュエンヌが頬を染め口調を崩す。
破壊力が半端ない。
「何言ってるんですか。本当に」
「……リシーが」
「何ですか?」
「可愛いのがわりぃんじゃん」
そんな会話を繰り返しながら教室の前まで辿り着いた。
騎士クラスと一般クラスは同学年でも別の教室でリシュエンヌの隣の席に男が座っているのが見えて不機嫌になる。
ギロッと睨むと縮こまる男を横目にリシュエンヌが席に着くのを確認して自分の教室へと向かった。
席まで辿り着いて机に突っ伏した。
可愛い。なんだあれ。
あ、俺の婚約者だ。
そう思うとにやけてしまう。
そんな昨日とは違う日常。
だけど、これから続いていく日常。
セイスティオはイケメンだけど迫力のある感じです。
リシュエンヌは可愛い系ではあるけれど特別美人と言うことはないけれど平凡という程でもないが影の薄さで平凡に見えている。
好きな子は特別に見える。の典型。セイスティオには世界一可愛い女の子。って感じですね




