第十八話:ユーリとの屈辱的な協定
1. ユーリの呼び出し
ゼノスは、屈辱的な協定を結ぶために、ユーリを再び魔塔近くの小屋に呼び出した。今回は、カサンドラの護衛の目を欺くため、深夜を待った。
ユーリは、ゼノスからのテレパシーによる呼び出しに、怒りと警戒心を剥き出しにして現れた。彼の視線は、ゼノスへの憎悪と、クロエの無事への安堵の間で揺れ動いている。
「クロエ様はどこだ! 貴様、私に協力を求めておきながら、彼女を隠すつもりか!」
ユーリが怒鳴ると、ゼノスは慇懃無礼な態度で、魔術的な結界を張った。
「落ち着きたまえ、騎士殿。君は、君の愛するクロエの自由のために、私と共同作業を行う必要がある。君が求めた『純粋な献身』とやらを、私に証明する機会だ」
ゼノスはそう言うと、クロエを部屋の奥から呼び出した。
2. 真実の開示と協定の提示
クロエの顔色は依然として優れないが、その瞳には過去の狂気の影はなく、強い決意と、ゼノスへの新しい形の絆が宿っていた。
「ユーリ、話を聞いて。私たちは、この世界を支配する『物語の法則』から抜け出す必要があるの。でなければ、私たちは何度でも繰り返されるループに囚われてしまう」
クロエは、カサンドラが「神の端末」であり、「続編」の結末が自分の存在の抹消であることを、簡潔にユーリに説明した。
ユーリは混乱したが、クロエの真剣さと、彼女の隣に立つゼノスの「支配から守護へと変わった」微妙な魔力の変化を敏感に感じ取った。
「ゼノスは、カサンドラの神の端末を停止させたわ。彼女はもう『聖女』ではない。ただの一人の女性よ。そして、私たちの脱出のために、貴方の力が必要なの」
ゼノスは、ユーリの動揺を楽しみながら、協定の条件を提示した。
「君に求めるのは、王都の人間としての信頼性だ。君は、意識を失ったカサンドラを『魔塔の結界から保護した』という名目で、王都へ連れ戻す。そして、彼女が『魔力の暴走で記憶を失った』という偽りの情報を王家に流し、神の端末の崩壊を隠蔽する」
「そして、君には、我々が『世界の法則の外へ脱出する』ための最後の切っ掛けとなる素材を集めてもらう。これは、君の愛するクロエへの、最後の奉仕だ」
3. ユーリの決断
ユーリは、ゼノスへの激しい嫌悪と、クロエの切実な願い、そして、彼女が「自分を救うためにこの魔術師を必要としている」という現実の間で苦悩した。
「貴様……なぜカサンドラ嬢を救う? 貴様の邪魔をした神の端末だろう!」
ゼノスは鼻で笑った。
「それは、クロエの魂が、罪なき人間を切り捨てることを許さないからだ。それに、私は今、独り善がりな支配を終えたところだ。君の純粋な正義とやらを利用させてもらう」
ゼノスは、ユーリの目を真っ直ぐに見つめた。
「君は、クロエの自由を望むか? それとも、彼女が永遠に物語のコマとなることを望むか? 選択しろ」
ユーリは、クロエの傍らで、もはや孤独な支配者ではなく彼女の真の伴侶であろうとするゼノスの姿を認めざるを得なかった。
「……分かった。私は、クロエ様の真の自由のために協力しよう。ただし、その魔術師……二度とクロエ様を傷つけるな」
ユーリは、ゼノスへの宣戦布告と共に、協定を受け入れた。
次回予告:
1/2 21:00更新
『 第十九話:水面下の工作と最後の素材 』




