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【完結】ラベンダー・キャンベルの『悪役令嬢』に挑んだ後、婚約破棄される公爵令嬢は、先に婚約破棄を申し出ます  作者: ましろゆきな


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第十六話:愛の進化と新たな共闘

 1. システムの処理と愛の決断


 ゼノスは、床に崩れ落ちたカサンドラを冷めた目で見下ろした。これまでの彼なら、システムの残骸など、無関心に打ち捨てていただろう。しかし、彼は、破壊されかけたクロエの自我を目の当たりにした直後だった。


(もし、私がカサンドラをこのまま放置すれば、クロエ嬢は「私も、システムの道具のように捨てられたのではないか」と疑念を抱くだろう。そして何より、彼女の心は、罪のない者を切り捨てることを許さない)


 ゼノスは、自身の感情ではなく、クロエの「理性と優しさ」という基準で行動を選択した。


「フン……馬鹿な真似だ」


 彼は独りごちると、自身の魔力を使い、カサンドラの身体を慎重に調べ始めた。カサンドラはシステムとしては崩壊したが、肉体は生きている。


「彼女の魂は、創造神が書き込んだ『聖女の役割』というコードから引き剥がされた状態だ。元の『人間』のカサンドラに戻る可能性がある。このままでは死ぬ。君の馬鹿げた優しさのために、手間がかかる」


 ゼノスはそう言いながらも、カサンドラの生命を維持するための安定化の魔法を刻んだ。その行為は、彼の「排除」という原則を完全に否定するものだった。


 2. 宿敵への協力を要請


 カサンドラの応急処置を終えたゼノスは、次に最も屈辱的な行動に出る必要があった。それは、最大の恋のライバルであるユーリへの協力を要請することだ。


 ゼノスは、荒廃した小屋でユーリと対峙した際、彼から追跡用の微弱な魔力を抜き取っていた。彼は、その魔力を増幅させ、テレパシーのような形でユーリに語りかけた。


「聞け、騎士殿。ゼノス・アルカディアだ」


『貴様! クロエ様に何をした!』


(クロエ「様」ねぇ。護衛騎士に戻ったつもりか……)


 ゼノスは、ユーリの激しい怒りを無視し、本題に入った。


「私は今、君の『純粋な献身』という、くだらない愛に頼らざるを得ない状況にある。カサンドラというシステムを停止させたが、彼女の命は危険だ。 そして、最も重要なことだが、クロエ嬢の魂を、世界という法則の外へ連れ出すための、君の協力が必要だ」


『何を馬鹿なことを! 私が貴様と……!』


「断るな。私一人では、クロエ嬢の魂を救い、この世界から完全に脱出することは不可能だ。君は、王都に最も近く、最も清廉な騎士として、私の計画の『表の顔』となる必要がある」


 ゼノスは、自身のエゴと支配欲を、クロエへの愛のために押し殺すという、これまでにない屈辱を味わっていた。


「私のゴールは変わった。もはや、孤独な脱出ではない。愛するクロエとともに、真の自由を得ることだ。そのために、私にとって最も目障りな存在である君の力を利用する。これが、私と君との、世界を救うための新たな契約だ。拒否すれば、カサンドラの命はない」


 ユーリは沈黙した。彼は、ゼノスが「クロエとともに」という言葉を口にしたこと、そしてカサンドラの命を取引材料にしたことに、大きな矛盾と真実を感じ取っていた。


 3. クロエとの新たな誓い


 ゼノスは通信を切ると、クロエを抱き上げ、彼女を抱きしめたまま囁いた。


「これで、君の純粋な心も満たされただろう? あの騎士と、あの聖女の命も、私の手の中にある。すべては、君の自由のためだ」


 「……」


「私のゴールは、君の自由だ。そして、君の自由は、私の隣にある時のみ、完全なものとなる。私たちは、二人でこの世界を終わらせるのだ」


 クロエは、彼の腕の中で、支配的な愛欲から、真の依存と共存へと変化した、ゼノスの愛情の重さを感じていた。この男は、もう、孤独な狂人ではない。自分とともに世界を救おうとする、狂おしいほどに一途な相棒となっていた。

次回予告:

12/31 21:00更新

『 第十七話:愛の謝罪と対等な絆 』

2025年ありがとうございました!

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