第十四話:真実の開示とシステムの停止
1. 核心情報の吸収
ゼノスがクロエの唇を奪い、二人の魔力がカサンドラの露出したシステム核心に流れ込んだ瞬間、彼らの意識は膨大な情報に晒された。それは、創造神ラベンダー・キャンベルがこの世界に仕掛けた、「物語の法則」そのものだった。
彼らが一瞬で理解した真実は、以下の通りだった。
コード名:【プロローグ・リピート・ルーチン】 この世界の物語は、常に『ヒロイン(カサンドラ)の聖女認定』と『悪役令嬢の断罪』という形で「本編」を完結させるよう設計されている。物語が完結すると、世界は自動で時間を巻き戻し、再びプロローグ(学園入学前)から始まる。
コード名:【バグ・イレディケーション・メソッド】 カサンドラは、『浄化の聖女』としてではなく、『物語をリセット可能な状態に戻すための、強制排除プログラム』として存在している。彼女の「浄化」の力は、物語の論理を逸脱する『バグ』(クロエの憑依、ゼノスの非協力など)を破壊し、物語を強制的に完結させるための手段である。
最終コード:【続編の結末】「続編」の結末は、『バグが世界の法則を狂わせた』ことの証拠として、『クロエ・アルジェントの存在の永久抹消』が設定されている。
2. 真実の宣告
ゼノスは唇を離すと、激しい魔力の反動に耐えながら、高揚した笑みを浮かべた。彼の目には、世界の仕組みを解読した勝利の確信が満ちていた。
「見えたぞ、クロエ嬢! 世界のコードが!」
彼はそう叫ぶと、カサンドラに向き直った。
「聖女殿! 君は『聖女』などではない! 君は、物語を完結させ、世界をリセットするための、哀れなプログラムに過ぎない! 君の『浄化』の目的は、愛でも秩序でもなく、私の愛するクロエ嬢を、世界の法則から永久に削除することだ!」
ゼノスは、クロエを抱き寄せ、その頬に熱いキスを落とした。
「だが、残念だったな。君のシステムは、『排他的な愛による、異常な魔力の安定』という、創造神さえ予想し得なかったバグを処理できなかった! 我々こそが、この物語の真の主役だ!」
3. カサンドラの激しい怒りとシステム停止
ゼノスから真実を突きつけられたカサンドラは、激しい動揺に襲われた。彼女の顔には、聖女としての平静さはなく、人間的な、醜い怒りが噴出した。
「嘘よ……! 私は聖女だわ! 私は、世界を救うために選ばれたの! 私は、あの悪役令嬢を排除し、この物語を正しい道に戻さなくてはいけないのに!」
彼女の叫びは、「システム」が人間的な感情によって処理不能に陥っていることを示していた。カサンドラは、自分自身が「システム」であるという真実を突きつけられただけでなく、そのシステムが「愛の狂気」という論理的矛盾によって破綻したことを理解してしまった。
カサンドラの体から放たれていた浄化の光が、激しくちらつき始めた。
「処理限界を超過しました。法則維持プログラムを緊急停止します」
機械的な声が、カサンドラの心の奥から響いたかと思うと、彼女は激しい頭痛に襲われ、その場に崩れ落ちた。浄化の魔力は完全に消え失せ、彼女の瞳は虚ろな光を湛えていた。
「くっ……ああ……」
カサンドラは、もはや「システム」ではなく、ただの意識を失った人間となっていた。
4. 戦闘の終結と新たな課題
ゼノスは、床に崩れたカサンドラを一瞥すると、満足げに微笑んだ。
「勝ったぞ、クロエ嬢。システムの核心は破壊された。当面、この世界がリセットされることはない。そして、君が『存在を抹消される』という続編の結末も回避された」
彼は、抱きしめる腕に力を込めた。
「だが、油断はするな。システムは停止したが、物語を完結させようとする『創造神の意思』はまだ残っている。我々は、この世界から完全に脱出する必要がある」
戦闘は終結したが、彼らの前には、意識を失ったカサンドラと、未だゼノスの支配下にあるクロエという現実が残された。
次回予告:
12/29 21:00更新
『 第十五話:支配の終焉と愛のパラドックス 』




