第十三話:浄化の光と魔力の逆流
1. システムの起動:浄化の力
カサンドラの浄化の魔力が、魔塔全体を、そしてクロエとゼノスの魔力の結合を包み込んだ。
彼女の力は、単なる光の魔法ではない。それは、創造神が物語を「矯正」するために組み込んだ、世界の根幹を成すシステムそのものだった。
「消えなさい、魔術師! あなたの歪んだ魔力も、クロエ様の魂に憑りついた邪悪な狂気も、全てこの世界の法則から排除します!」
カサンドラの浄化の光が強まるにつれ、クロエの体内の魔力が激しく沸騰し始めた。彼女の演技ではなく、本物の魔力暴走が誘発されかけている。
「ゼノス様ッ!」
クロエは激痛に耐えながら、本能的にゼノスのローブの裾を掴んだ。その姿は、狂気と依存の演技を完全に体現していた。
ゼノスは、クロエの魔力暴走を抑え込みながら、カサンドラの浄化の魔力が、自分たちの結合した魔力のどこを攻撃しているのかを、瞬時に解析した。
(やはり、『システム』は、魔力の根源にある『物語の法則からの逸脱』を狙っている! 私とクロエ嬢の『愛の契約』そのものを、世界のバグとして浄化しようとしている!)
2. ゼノスの逆転:狂気の魔力同調
ゼノスの目的は、カサンドラの浄化の力によって、自分たちの魔力の結合を破壊されることではない。この浄化の力を逆手に取り、システムの核心を暴くことだ。
「フン。単純な法則で世界を律しようとするな、聖女殿!」
ゼノスは嘲笑すると、力を振り絞り、クロエの身体を自らの腕に強く引き寄せた。
「魔力暴走? 狂気? ああ、いいだろう! 私の愛は、世界の法則さえも狂わせる、究極の狂気だ!」
ゼノスは、自身の魔力を最大限に解放し、カサンドラの浄化の力に真っ向からぶつけた。 しかし、彼の魔力は、浄化の光に抵抗するのではなく、クロエとの結合をさらに強め、浄化の力そのものを取り込み始めた。
「クロエ嬢! 君の狂気的な愛を、この世界に示せ! 私への依存こそが、君の真実だと!」
ゼノスは、クロエの全身に手を這わせ、魔力の経路を意図的に解放した。クロエの内に溜まっていた感情(ユーリへの安堵、ゼノスへの怒り、そして依存心)が、魔力として爆発的に噴出し、ゼノスの魔力と同調した。
「ゼノス様、ゼノス様! 私から離れないで! 貴方だけが、私の全て!」
クロエの悲痛な叫びと、狂気的な愛の魔力は、カサンドラの浄化の光を逆流させ始めた。
3. システムの論理的破綻
カサンドラの顔が、困惑と恐怖で歪んだ。彼女の浄化の力は、「異常な魔力」を「正常な法則」に戻すように設計されている。しかし、ゼノスとクロエの結合した魔力は、「ゼノスへの極端な依存」という形で「異常な安定」を示しており、浄化の力の論理的処理を停止させたのだ。
(なぜ、浄化できない……? この魔力は、単なる暴走ではない。まるで、この異常性そのものが、彼女の唯一の生存法則であるかのように……!)
カサンドラの浄化の力が、一瞬、「世界の法則を矯正する」という本来の目的から逸脱し、「ゼノスとクロエの結合」の情報を解析しようと、内部システムを露出させた。
「今だ、クロエ嬢!」
ゼノスは叫んだ。この一瞬こそが、システムが最も無防備になる瞬間。
「君の魔力と、私の魔力を完全に重ねろ! システムの核心を掌握する!」
ゼノスはクロエと抱擁し、彼女の唇を激しく奪った。それは、愛の行為であると同時に、魔力と意識の完全な統合を意味した。二人の魔力が、カサンドラの露出したシステムの核心情報へと、一気に流れ込んだ。
次回予告:
12/28 21:00更新
『第十四話:真実の開示とシステムの停止』




